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会社ごと異世界に転移してしまったが、うちの社員は商売上手だった件  作者: 早寝早起き
変化する国々編(ハーメリック~ファインブル・グ-テモルゲン)
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迫られる決断 前編

タオカの処遇を判断しなければいけない速水。

 ミネルヴァ教で保護されていた転移者。


 ユキナリ・タオカとの出会いは、速水に衝撃を与えるものだった。


 正直な話、彼の事は良いイメージを持っていなかったんだ。限定された情報しかなく、戦争に加担した人物であったからだ。


「彼をどうするか? それを俺に委ねるのですか?」


「ミネルヴァ教と致しまして、あの人物に価値はありません。しかし速水様達にとっては、どうですか?」


「本来なら情報を得たかった。と言うのが正直な気持ちです。ですが現実的に無理ですよね」


 ロザヴィア様達も何かしら情報を得る為に、色々と調べてくれていた。


 しかしその中で出てきたものは、彼が火薬製造に力を貸した事。それ以外にも主に武器について助言した。と言う内容の文書が発見されている。


 彼の個人的な情報は無く、幽閉された理由についても憶測しかない。


 であれば、ミネルヴァ教としてこれ以上の価値は無い。国からすれば、戦犯として処分しろとの意見も出ているのだった。


「本当に申し訳無いのですが、少しお時間を下さい。彼の家が残っているらしいので、そこに行ってみます」


 速水は決断出来なかった。助けたい気持ちは勿論ある。同じ日本人なのだから。ただ彼が戦争に関わっていた事は事実であり、その罪を判断するのは当事者なのだ。


 ミネルヴァ教本部を出た後、皆の所へ向かう速水。どうなるにせよ、社員達にも今の現状は伝えなければいけないんだ。






◇◇◇





 重い足取りで、皆の待つ街に帰ってきた。


 静香さんの顔を見て、思わず抱きしめてしまったよ。



「ちょっ、ど、どうしたの速水くん」


 真っ赤な顔であたふたする静香。


「すみません。暫くこのままで」


 周りの社員から揶揄われたが、静香さん成分でかなり落ち着く事が出来た。


「落ち着いた? 一体何があったの?」


「はい。皆を集めて伝えたい事があります。少し重い話なので、それを承知で聞いてもらいたい」


 俺の様子を見た他の社員達も、何かを察しすぐに集まって来る。






◇◇◇





「それで? 何があったんだ? 速水にしては、取り乱していた様だが?」


「来栖さん、皆んな。今日俺がミネルヴァ教本部に行った事は、知っているでしょ? そこである人物に会ったんです」


「ある人物? 俺達に関係ある人物か?」


「はい。その人物はユキナリ・タオカ。文書に書いてあった人物です」


「生きてたのか! それで? 話は聞けたのか?」


 ここから事実を話して行った。彼の現状と今わかっている彼のした事。それに対し判断を委ねられていると言う事を。



「そうか。何をもってその様な状態になったのか、理解は出来ないが......」


 来栖さんはそう言って黙ってしまった。


「タオカさんが悔い改めて、反抗した結果って可能性は無いんか?」


「田村、今のところそう言う記録は残っていない。肝心の皇帝や側近は、処刑されてしまったしな」


「そ、そうなんか。そうなると助けるのは難しいんやろうなぁ」


「で、でも、同じ日本人だし。何とかならないの?」


「安田さん。俺個人としては、何とかしたい気持ちはあります。ただそれには助ける為の根拠や、後の事の話もあります」


「あ、後の事? 何があるの?」


「現状、彼は1人では何も出来ません。精神的にもかなり不安定ですし。本来なら入院が必要だと思います」


 それを聞いた安田さんは、考えこんだ。当たり前の話、見ず知らず他人の世話をするのは難しい。その事実に気が付いたのだ。


「だがこのままって訳にも行かないんだろ? 何か考えはあるのか?」


「岡田さん。何が出来るかわからないんですが、一度彼の家に行ってみようと思ってます。かなりの年数が経ってますから、手掛かりがあるか分かりませんが」


 俺もまだ結論が出ないんだ。ただ自分の目で見て、区切りはつけたい。


 やっぱり人の命は重いと思う。まさかその判断に自分が関わるなんて、思っても見なかった。


「なら私も一緒に行くわ。速水くんを1人に出来ないもの」


「俺も行くで。なんや言うても、親友やからな」


「私も篤さんと一緒に行くわ」


「はぁ。愛が行くならわたしも行くわよ。ちょっとカップルばっかりで嫌だけど」


「ふぅ。なら私も行くわ。私も自分の目で、真実が見たいからね」



 タオカ邸には、俺、静香さん、田村、倉木さん。そして安田さん、花崎さんの6名で向かう事になった。



 なんだかんだ言って心配してくれたみたいだな。仲間っていいなぁって思う。


 タオカ邸が残っているのは、少し田舎で穀物地帯の近くだと聞いている。


 俺達は出発準備を急ぎ、現地へ向かった。







◇◇◇





 現地までは3日程かかったが、順調に目的地に着いた。


 ただタオカさんの評判はあまり良く無かった。帝国の侵略の手伝いをした事で、他の転移者に比べ人気が無かったんだ。


「ほんま田舎やなぁ。周り一面、麦畑やんか」


「確かに。こんな場所に転移したんだったら、俺達どうなってたんだろうな」


 一面麦畑を歩いていると、農家の人間に出会った。


「あんたら見た事ねぇ人達だなぁ。こんな場所に何の用なんだい?」


「こんにちは。このあたりに神の御使いの家があると聞きまして」


「あぁ、観光の人かぁ。それならほれ、あそこに屋根が見えるべ」


 指差された方向を見ると、確かに瓦屋根が見えた。


「ありがとうございます。助かりました」


「最近じゃあ訪れてる人も居らんがなぁ。まぁ気をつけて行きなよ」


 お礼を言い暫く歩くと、目的の家が見えた。


 純和風の二階建てで、古くなっているが建物自体は問題無さそうだ。


「へぇ。思ったより建物の保存状態が良いな」


「きっと国が保存してたんじゃ無い? 今は違うかもしれないけどね」


 そしてタオカ邸に入る事にした。


 俺達の転移に繋がる情報は勿論、タオカさんの今後に関係する物が見つかる事を願って。


重い決断を迫られる中、速水は少しの希望にすがりつく。


仲間と共に向かったタオカ邸で何かを発見出来るのだろうか?

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