教えて!来栖さん!
開発が始まった帝国だが、問題があった。
アラザールの街で活動を始めた速水達。
サリファス王国を経由して、様々な資材が運び込まれていた。
「来栖さん、徐々に工事資材も増えてきましたね」
「そうだな。それでもまだ、サリファス王国を経由させる分遅いけどな」
「何とか早くならないんですか? このペースだと、またかなりの日数かかりそうで」
速水は少し悩んでいた。勿論、予算の問題もある。それとは別にアルメリア王国から離れる程、資材が中々届かないんだ。
「今、アルメリアとサリファス、スレイブの3ヶ国で、蒸気機関車を行き来させる計画があるらしい」
「え?! そうなんですか⁈ もし決まれば、かなり移動が早くなりますね」
アルメリアから技術提供を受けている、サリファスとスレイブ。
蒸気機関車についても開発は進めているが、そう簡単に作れるはずもない。
アルメリアでさえ信頼雑貨が協力し、2年近くかかっているのだから。
「列車以外の移動手段、何か無いんでしょうか?」
「そうだなぁ。先ず海路は造船に時間がかかるんだ。それ以外なら空路なんだが......」
「空は難しいですか? 気球という案も出てましたが」
「正直作るだけなら難しい事もない。ただ実際に空を飛ぶとなると、安全面の不安が大きいしな。勿論、重量物も運べない」
「そうですかぁ。陸路ならどうです?」
「短距離なら自転車、電動自転車は既に走ってるだろ? 後は......蒸気自動車と言う案もあったな」
蒸気自動車? 何か聞いた事ある様な?
イメージが湧きにくい。機関車が道路走ってる感じかなぁ?
「まぁお前のイメージする物で、大体あってると思う。アレは小型化が難しいのと、煙が出るから街中で使うのは無しだ」
「そ、そうですよね。公害垂れ流してるみたいですから」
「ああ。そこら中が真っ黒になるだろうよ。近代技術を使うのはいいが、環境を壊したら意味ないからな」
うーん。こうやって聞くと地道に頑張るしか無いんだよなぁ。でもこのペースで開発進めてたら、他の国含めて何年かかるんだろ?
俺も間も無く30代に突入するし、ほんとだったら静香さんとけ、結婚も......
「お、おい! 速水! 聞いてるのか?」
「す、すいません! ちょっと考え事してました!」
「俺達にとってラッキーだったのは、この国が鉄の加工産業に優れていた事だ」
「それって武器を作る事が盛んだったからですよね?」
ハーメリック帝国は武力を増やす方針だったから、武器を作る鉄工が盛んなんだ。
工場の数も多いし、鉱石何かの採掘場も数がある。採掘量は周辺国の倍近い数字なんだって。
「この国なら、うちの工場並の設備が作れるぞ。職人も多いから面白い事になるだろうさ」
「それなら色々と助かりますね。期待してます」
◇◇◇
その頃、ハーメリック帝国を回る1台の馬車。
「このソーセージ美味しいねっ♪」
「パンも柔らかいでごじゃるな♪」
「......お前らなぁ。それ売り物だからな。まぁ旨そうに食ってくれるのは、嬉しいんだが」
そう。キッチンカー『岩本キッチン』である。
手伝いは勿論しているが、その分食べる。
初めからそのつもりで、乗っているのだ。
「何か新メニュー考えんとな。色々回って食材チェックしてるが、真新しい物も無いしなぁ」
岩本はそう言いながら、目の前で踊りながらホットドックを食べる2人を見ていた。
「この2人のおかげで、客も増えてるから良いんだが」
「うまうま♪ うまうま♪ ほっとろドック最コォ!」
「ほっとろドック美味しいでおじゃるよ!」
マリアとトミーのせいで、この地方ではしばらく『ほっとろドック』が流行したそうな。
そんな岩本達が、偶然訪れた南部の街。
ここは年中暖かく雨量も多い地域なのだが。
「おいおい。あれってまさか?」
岩本が発見したのは、トウモロコシ。
この世界では初めて見たのだ!
「おーい! それってトウモロコシかぁ!」
「ちょっとおっちゃん! うるさいよぉ」
「びくってなったでおじゃるよ!」
近くの農民に声を掛けたのだが、岩本は見た目が厳ついので怖がられていた。
「あんたら誰だ? とうもろ? あぁ、これの事かい?」
「ん? ああ、それなんだが」
「コイツは『黄金糖』だべさ。甘くて水分たっぷりだ。美味しいぞ」
そう言って剥いてくれたトウモロコシは、輝くような色を持ち、確かに美味しそうだった。
「これって生で食べてるのか?」
「当たり前だべさ。採れたてが1番美味しいかんな。ほれ、食べてみんしゃい」
渡されたトウモロコシは、瑞々しく甘い。
かなりの糖分を含んでいた。
「あはは。最高じゃねぇか。もしかしてこの地域にかじると甘い植物もあるかい?」
「よく知ってんなぁ。「飴の木」だ」
岩本はこの発見に喜んでいた。
しかしそれを見た農民とマリア達は、震えていたのだが。
ヒソヒソ
「ねぇ。おっちゃん怖いよぉ」
「マリアが何かやったでおじゃるか?」
「あんたらあの男どうにかしてくれ」
「あ? 何かあったのか?」
「「「な、なんでもありません!」」」
この後、岩本はトウモロコシを大量に仕入れた。勿論、サトウキビもゲットした。
そして新たな新メニュー『コーンポタージュ』爆誕である。
サトウキビはそのまま食材としても使えるが、やはり黒砂糖として使う事にした。
甘い物が好きな岩本だけに、今後新たなスイーツも作られるだろう。
こうして新たな食材を探しながら、キッチンカーは旅を続ける。
食材ゲットで新たなメニューも。
さて開発の始まった帝国では、
そろそろ新たな動きが......