選挙も大事だけどやる事あるでしょ?
今回はとても難しい話。色々な意味で。
ハーメリック帝国が目指す方向は、とても険しい道になるだろう。
俺達は自分達に何が出来るのか?
確かに現代日本で政治に関しても、色々と情報はあった。
しかし俺達は、商売人なんだ。
「選挙も必要だけど、それより前にやらないとダメだと思うんだ」
「え? 速水君、どう言う事?」
「静香さん、今この国は変わろうとしています。早急に皇帝も決めなきゃいけない。ですが国が生きる事を優先して、民を蔑ろにしたら本末転倒ですよ」
「あ......確かに。帝都に来るまでに見た人達、誰も幸せそうな顔してなかったわ」
「でも速水。ほんなら俺ら何するんや?」
「篤さんも考えてっ。何か私達いつも速水さんにおんぶに抱っこだよ?」
「確かにそうかも。私も愛もやりたい事はやってたけど、1番大変なやり取りは任せっきりだったわね」
「うーん。俺達職人は、現場仕事しか出来ないからなぁ」
「来栖さん。俺も同じっすわ」
「僕も研究ならいつでも手を貸せるんですけどねぇ」
俺の発言から順番に意見が出た。
静香さん、田村、倉木さん、安田さん。
そして来栖さん、安藤さん、岡田さん。
「速水君は何か考えてるの?」
「花崎さん、実は経済を回す方法を考えてたんですよ」
俺の言った事。現代でもデフレ脱却で多数の意見を交わしていたと思う。
「正直に言うと、この国は富裕層と一般国民の差が大き過ぎるんですよね。なので」
ここからは賛否が分かれる話になる。
ハーメリック帝国は自国で通貨を発行している。だがハーメリック帝国のお金は周辺国からの信頼がない。
だが自国内で回す分には問題が無いんだ。
それなら自国通貨を増やして回さないといけない。コレを言うと国の借金が増える、なんて意見がでるのだが。
「速水君はインフレを起こす気なのね。でもそれって諸刃の剣にならない?」
「花崎さんは良くご存知ですね。ですが国の借金が増えると、国民の収入は増えるんですよ。確かにハイパーインフレになっちゃうと危ないと言われてますけどね」
まぁ今回の場合は緊急手段なんだよね。
一時的にでも国民を助けないと、多数の死者が出てしまう。そんな状態で選挙なんて誰が投票できるのだろう。
「まぁ時期皇帝になる方は、苦労するでしょうね。復興するぐらいの気持ちが必要ですから」
「速水君の意見が通るかしら? 色々な考え方の人がいるでしょう?」
「静香さん。別に俺の意見が全てじゃないですよ。あくまでも経済の話ですし、政治の話は出来ませんから」
今言った事が全てなんだ。俺の考えは、1つの意見。これからこの国が目指すのは、そう言う考えや、他の考えを総合的に話し合う場を作る事だから。
「何や難しい話は俺はわからん。でも何かしたいって言う気持ちはあるんや」
「私も篤さんと同じ。私達のやれる事を始めましょうよ」
「愛さん」「篤さん」
「はいはい。お二人さん? 急にイチャイチャしないで?」
「美樹ぃ〜」「安田さん、殺生や〜」
空気も和んだ所で、なんと第二王子がやって来た。
「信頼雑貨の皆さん、初めまして。ジュリアス・ハーメリックです」
ジュリアス王子はとても気さくな人だった。真剣にこの国を考えている事がわかる。
「先程、周辺国から援助の申し出がありました。速水殿はどう思われます?」
「勿論、受けるべきですね。ただそうなると内政に干渉される恐れもありますから。難しい判断になりますよね」
「確かに。援助は今すぐにでも欲しいです。ですが借金という形になると、その国の影響力も強くなりますから」
「少し考え方を変えて、鉱石なんかの資源で支払い出来ると、また違うと思いますが」
俺はちょっと考えていたんだ。これから俺達が新しい技術を伝えるんだけど、いずれ電力が必要になるよね?
火力発電所なら燃料が必要になるし、自国の資源だけじゃ賄えなくなるでしょ。
「そうか! そう言う考え方もありますね。早速皆と相談してみます!」
ジュリアス王子は爽やかに去って行った。
まぁ相手国の考え方もあるし、お互いに譲歩して欲しい所だ。
「そう言えば岩さんの姿が見えないんだけど?」
「速水君、岩本さんはマリアとトミーを連れて、キッチンカーで出かけたわよ」
あははは。流石岩さんだな。
マリアさんとトミー神父は、手伝いと言うか食べたいだけかも。
サリファスでも『岩本キッチン』有名になってたからなぁ。
少し難しい考えもしたけど、いつも通り俺達が出来る事を始めよう。
◇◇◇
皇帝選挙はとりあえず延期になった。
早急に経済を回す話になり、議会は多数決を用いて運営されている。
俺達はと言うと、先ずサリファスからレールを繋ぐ工事と、国境側からの道路整備から開始した。
工事に係る資金は旧皇帝の息がかかっていた、街の領主の資材を売却するそうだ。
なんでもかなり無駄な贅沢をしてたんだってさ。
俺達も国境の街、アラザールに移動し、店舗の開店準備中だ。
工事と店に多くの人を雇う予定だから、徐々にでも潤ってくれたら嬉しい。
こうしてこの国もまた1つ新たな変化が生まれていく。
単純に皇帝が変わるだけなら簡単な話だけど。
政治の難しい話はあまりしたくない。
やっぱり商売繁盛が良いよね♪