これまでとこれから 後編
マリアから話されるのは......
お互いに報告を済ませた後は、とりあえず食事を済ませた。
皆が落ち着きを取り戻した所で、気になるマリアさんの話を聞く事にした。
「では皆が落ち着いたようなので、マリアさん、どう言う事なのか教えてください」
「ああ、お腹いっぱいで動きたくない!」
「ちょっとマリア、皆待ってるんだよ?」
「うー。わかってるよ。何が聞きたかったの?」
なんでめんどくさそうなんだよ! 貴女が呼んだんだよ!
皆、心でそうは思っていたが、ぐっと我慢だ。
「先ずはここに、皆を集めた理由について教えてください」
「えっと、時が来たから?」
「それは俺達が成すべきことを成した。という事であってますか?」
「うんうん。そう言う事!」
そうか。俺達が行って来た活動は、間違って無かったという事だな。
それは良かったんだけど、それだけでは答えになってないよ?
「良かった。それで俺達を集めた理由は?」
「それはね。ジュノ-っちが、皆を呼べって言ったんだよ♪」
「ジュノ-っちって......いったん置いときましょうか。それはあの言葉を伝える為でしょうか?」
「それもあるけど、そろそろジュノ-教を広めないといけないのだ!」
「ジュノ-教ですか。でも宗教の立ち上げに俺達必要ですか?」
「それについては私が説明するわ」
ルシ-ル様がマリアさんの言いたい事を付け加えていく。
本来、主神であるジュノ-様を信仰する宗教は無かった。
その理由については、ルシ-ル様達教皇も知らされていない。
しかし今回、マリアさんの発言以降にその縛りが無くなったらしい。
そして新しい宗教を立ち上げるにあたって、ジュノ-神の使徒である俺達は必要なんだとか。
「という訳で、アナマリアもこちらに向かっているのです」
「そうそう。アナマリアお姉ちゃんも呼んだのだ! えっへん!」
何故か凄いだろ? と胸をはるマリアさん。
マリアさんは特異点と言う存在だし、ジュノ-神からのお告げもあるみたいだけどさ。
大丈夫なんだろうか?
「新しい宗教が出来ると言うのは分かりました。俺達は何をすれば良いのでしょう?」
「速水様達は今まで通り、やるべき事を進めて下さい」
「そうですか。分かりました。宗教については任せます。もう一つ気になるのはあの踊り何ですが」
「そうねぇ。速水様と同じく私も気になっておりましたの」
「え?! 皆楽しそうだったじゃん!」
「楽しかったのは、否定しませんが。あれ毎回するんですか?」
「ええ⁈ ダメなの?! お祭りだぁ-って思って!」
......うん。どうやらマリアさん独自の物だったみたいだね。
これから出来るジュノ-教が、踊る宗教になりそうな予感がするんだけど?
嫌な予感を感じながらも、とりあえず集められた意味は分かった。
直接的にやる事が無いと言うのは助かったのかな?
「ま、まぁとりあえず分かりました。詳しくはアナマリア様も来てから聞かせてもらいます」
「そうね。その方がよろしいかと。マリアちゃんも寝そうだし」
え? と思いマリアさんを見たら船を漕いでいた。
食べたら眠くなるけどさ。子供じゃ無いんだから!
「えっと。じゃあ今後の方針について話しますか。皆の意見を聞かせて下さい」
「ほんなら俺から。結構な期間、会社から離れてるんやし、一旦戻る方がええんと違うやろか?」
田村の意見も納得だ。確かに2年も皆と離れて活動してるからね。
「私はこのまま他の国にも広げる方が良いと思う」
ん? 花崎さんにしては積極的な意見だ。
「千鶴? どうしてそう思うの?」
「静香、だってせっかく帰れる手段が分かって来たのよ? アルメリアに帰る日数も考えないと」
「俺もその意見に賛成だ。レ-ルも繋がって物資の移動については、大幅に改善されつつあるしな」
「草薙さん、それやったらいったん帰るぐらいは出来まっしゃろ?」
「それだけじゃない。やっとこっちの生活水準に慣れつつあるんだ」
草薙さんが言いたい事も分かる。
アルメリアはサリファス・スレイブと違い、電力も供給されつつあり設備も充実している。
はっきり言うと便利なんだ。
その生活に戻ると、これから未開発の国に行けば精神的にまいってしまう可能性もある。
「そ、それは無いとは言えませんなぁ。でもハ-メリック方面の情報も無いでっしゃろ?」
そう。そこなんだよね。次に移動するとすれば、ハ-メリック帝国になるんだよ。
周辺国が協力して行っている、内部から崩すというやり方。
一体どうなってるんだろうか?
「その事について、私達から報告があるわ」
「ルシ-ル様とイメルダ様。お二人は何か情報をお持ちなのですか?」
「セレス教でも情報収集を行っているから。私の情報網では、そろそろ王の交代があると言う話が出て来ているわ」
「セルピナ教でも同じ情報が入っているわ。現皇帝派に内部分裂があるらしいのよね」
「それってミネルヴァ教の暗躍が関わっているんでしょうか?」
「それは間違いなさそう。詳しくはアナマリアと一緒に来る、ジャニスに聞いた方が良いけど」
ミネルヴァ教の教皇であるジャニス様は、現在アルメリアで匿われていた。
そのジャニス様が動くとなれば、その情報の信ぴょう性も高まる。
今分かっている情報でも何かが起こるのは間違いないだろうね。
「そうですか。政変が起こる可能性がある訳ですね」
「内戦は起こらないと思うけど、状況は注視した方が良いと思うわ」
「分かりました。その情報は各国も共有してるんでしょうか?」
「ええ。私達も協力しているしね。国として動くのかは分からないけど」
その後は、各社員の意見を聞きながら話は続いた。
意見は交わしたが、会社へ帰りたい社員は引き止めない事にした。
俺としても一度は帰りたかったが、今後を考えて残る事に。
帰る社員と残る社員の内訳は下記のようになった。
・帰社する社員。
高橋課長・森田・栗田・間宮研究員・草薙・セラフィア・フランソワ・レビン・ロイド
蓮見課長は既にアルメリアへ向かっている。
・残る社員
速水・中村・来栖・田村・倉木・花崎・安田・安藤・岡田研究員
その他の職人や工事に協力する人間も残る事になった。
草薙さんも残りたかったようだが、来栖さんが安藤さんを残すように決めたんだ。
一番残る事を希望したのはバルトフェルト達だったけど。
田村は倉木さんが残ると言ったら、すぐに意見を変えたんだ。
「倉木さんが残るんやったら、俺も残るに決まってるやん!」
「へぇー。今晩聞きたい事がいっぱいある。色々とな」
「は、速水? お手柔らかにお願いします」
この話の翌日、帰社組はアルメリアへ向けて出発した。
約一名、最後まで抵抗していたが。
「マリア様! どうかお元気で! 寂しゅうございますわ!」
うん。フランソワはマリアさんと離れるのは寂しいんだ。
マリアさんは笑顔で手を振ってるけどね。
レビン君とロイド君にドナドナされて行ったけど。
そんな訳でアナマリア様とジャニス様が到着するまでの間、セレス教本部でお世話になる。
果たしてハ-メリック帝国へは何時、入国できるのだろうか―――
マリアから聞いた新たな宗教。踊る宗教の予感がしますね。
帰社する社員もいる中、残った速水達にどの様な展開が待っているのか?
次話はハ-メリック帝国政変。