これまでとこれから 前編
2ヶ国で行った改革も一定の成果が出た。再び集まった信頼雑貨の面々からその報告を聞くのだった。
セレス教本部の食堂へ移動する速水達。
マリアから告げられた3つの繋がりについても、説明を聞きたい一同。
とりあえず昼食をとる事になったのだが、そこで登場したのは......
「遅かったな。せっかく作った食事が冷めちまうじゃねぇか」
「え?! 岩さん⁈」
食事を運んで現れたのは、岩さんだった!
サリファス国内を『キッチンカー』で回っていた岩さんも、今回招集されていたらしい。
「まぁとりあえず、食事しながら今後の事とか相談しようじゃねぇか!」
「そ、そうですね。落ち着いて喋りましょうか」
俺はそう答え、皆も席についた。
マリアさんに話を聞こうと思ったんだけど、座った瞬間から猛スピ-ドで食べ始めちゃったよ!
仕方が無いのでマリアさんは後回しだ!
「じゃあ、田村達の行ったスレイブ王国の話から聞こうか」
「ん? それやったら俺が報告するわ!」
スレイブ王国に行った田村達は、国内の問題を解決するべく以下の事柄を進めた。
・衛生環境の改善
・道路整備・下水整備
・ダムの建設
・橋の架け替え
・店舗の出店
・教育改革
・農作物の転換
「まぁ大まかにこんな感じや。アルメリアで改革した事にプラスしたんやけどな」
「へぇー。ダムも作ったんだな。もう完成したのか?」
「蓮見さんが中心になってかなりの効率化を図ったらしいわ」
田村の話ではスレイブ王国の問題を解決するのに、絶対必要だったのがダム建設。
ダムが完成した事で水害を少なくし、湿地帯だった農地も徐々に作物を増やせる様だ。
そして新たに架けられた橋。商人にとっての生命線が確保された。
「なるほどな。橋を新たに架ける事で、流通の改善も促した訳だな」
「そう言う事になるな。うちの商品も国内で売れまくりや!」
「そうか。因みに店舗はどうなってるんだ?」
『スレイブ1号店』は、現地の住人を出店当初から雇い入れた。
これにより田村達が抜けても営業は継続できる。
裁縫工場も同じで、なんと子供達も活躍しているという話だった。
そして『J-Style』部門で初めての綿製品や靴・かばん等の新商品も発売されたらしい。
「綿の服も出来たんだ! それは凄いわね!」
「静香さん、私達も頑張ったんですよ!」
静香の喜びの発言に、洋子がドヤ顔で答える。
「洋子は相変わらずだねぇ。間宮さんが商品化に向けて頑張ってくれたんじゃないの!」
「恵! そ、それは分かってるわよ!」
綿の商品化については、品管の間宮が現地の生産者と共に頑張ったのだ。
勿論、裁縫部門も製作に尽力したのだが。
「俺がビックリしたんは、靴や。この世界で初めて靴底にゴムが付いたんやで!」
田村が自慢げに自身の靴を見せる。
流石に現代の商品ほどではないが、ちゃんと靴だった。
靴職人も興味津々で、今後の流行になるかも知れないとの事だ。
女神セルピナの権能である『芽吹き』。
大きな意味で色々な物が芽吹いたという認識なのだろうか?
「こっちはほんまに充実した2年やったわ。色々と」
「お疲れ様。で? 個人的にも良い事あったのか?」
「へ⁈ 何や速水?!」
明らかに動揺している田村。
ははぁ-ん。倉木さんと進展あり?
後でコッソリ教えてもらおうかな。
「こっちの話は以上や。速水達の話もはよ聞かせてぇな」
「ん? そうだな。田村の話も気になるけど、サリファスの話をしようか」
ここからサリファス王国で行った事を簡潔に説明した。
・生活習慣の改革
・インフラ整備(道路・下水等)
・農業改革
・教育改革
・産業改革
・店舗の出店
サリファスで今後盛んになる、三圃式農業。
そして新たに可能性のある絹製品。それに付随する養蚕。
後は今後の課題として海路の開拓だな。
「とまぁ大まかに説明するとこんな感じだ」
「シルクに目を付けたんかいな。元々生産地やったっけ?」
「ああ。サリファス王国は絹製品も特産物だったんだ。ヒントは静香さんからだけどな」
「はいはい。仲のよろしい事で」
「お、おほん。それは置いといて、スレイブで海の情報はどんな感じだった?」
海路の話が出た時に田村達に手紙を送ったんだ。
これからの移動を考えても、海路の確保は必須になるだろうし。
「それは俺から話をしよう」
「高橋課長、お願いします」
高橋課長から聞いた話だと、スレイブ王国も漁業は行っている。
しかしこの世界は造船技術が発達していない為、隣国への海路は確立していない。
蓮見も今後は各国と協力し、造船を計画しようと掛け合っているそうだ。
「そうですか。船で移動できれば、確実に移動日数が短縮できますよね」
「そうだな。今後の動きにも関係するだろうし、最重要課題になるだろうな」
技術面について意見を聞きたかったんだが、職人たちは食事に夢中だ。
久しぶりに岩さんの料理が食べられた事で、他の面々も話より食い気が勝ってるしね。
「速水様。今後についてのお話の前に、お伝えしたい事がございます」
「ルシ-ル様、話ですか?」
「はい。実はこちらにアナマリアも向かっておりまして」
「え? アナマリア様も来られるんですか? またどうして?」
「マリアちゃんがお食事終わったら、多分話すだろうと思うんですけどねぇ」
そう言いながらルシ-ル様はマリアさんの方を見たのだが......
ものすごい勢いで食べてますね。ああ、もう口の周り色々ついてますよ?
隣で静香さんが呆れた顔してます。
まぁその対面で、トミ-神父も負けじと食べてるんだけどね。
とりあえず俺達が2ヶ国で行った改革は成功に終わった。
今後さらに発展して行くだろう事は、疑いようのない事実。
俺は皆が落ち着くのを待って、今後の動き方について話すつもりだ―――
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多種多様な改革を行う信頼雑貨の社員達。2ヶ国で成果を出したのだが、今後の課題もまだまだ多い。