女神の繋がりとマリアの覚醒?!
やっとここまで来た
日本へ帰る為、自ら動き出した信頼雑貨の社員達。
速水や田村達がアルメリア王国を離れ、2年と言う月日が流れた。
この間にアルメリア王国でも蒸気機関や浄水設備、火力発電所などが整備された。
これらの物が形として出来上がった事で、旧文化は次のステ-ジに移って行く。
しかし信頼雑貨の上層部はこの事に、一抹の不安も抱えていたんだ。
「清水君。これで良かったんだろうか?」
「専務、我々が出来る範囲で行った事です。今後を考えるのはこの国の人々では無いでしょうか?」
「そうだな。我々が危惧する事は、国王達に伝えた。後はこの国の良心に任せようか」
沢田と清水が危惧しているのは、科学の発展や開発に伴う生態系の破壊だ。
まだそれが起こっているとは言えない状態なのだが。
インフラ整備の為に土地を削り、工場などの設備に関して技術提供をした。
この事で新たな雇用も生まれたし、流通も国全体に行き届いている。
そして国民の為の学校が出き、知識や技術の習得も出来るようになった。
「結局人は、便利さを求める。私達も自身の生活向上の為だったしな」
「我々は日本での生活が当たり前でしたから。同じ水準を求めているんでしょうね」
「速水は早くからデメリットも訴えていたな。あの時はそこまで考えられなかったが」
「彼は我々よりも現実を見ていたんだと思いますよ。必死にね」
とは言え、短い期間でこれだけの発展が出来た事は誰も予想できなかったはずだ。
しみじみと語る沢田と清水は、会社から見える景色をただ眺めていた。
◇◇◇
こちらはスレイブ王国。
一番の目的であったダム建設は、無事に完成を迎えていた。
「国王様、おめでとうございます!」
「ムーランよ、まさかこれ程の物が出来上がるとはな」
国王とム-ラン宰相は、ダムの完成を祝いに来ていた。
その二人を前に緊張した面持ちの蓮見と職人達。
「ではこれより放水を致します!」
ダム本体は誇れる程の完成度だったが、実際に塞き止められた水を放水するのは蓮見でも緊張するのだった。
ゴォオオオォォォ
「うん。問題ないな。水量の調整が上手くいかないと、水力発電にも影響があるし」
「蓮見殿、これで下流の土地も水害から守られるんだな?」
「国王様、大雨が続かない限りは大丈夫です。後はこちらに来てください」
蓮見は国王達をダムの橋に案内した。そこで水力発電の説明をし、電気を使ったある物を見せる。
それはこのダムが橋代わりになる、街と街を繋ぐ意味を込めて設置した物だった。
「おお! これは何とも良い物だな!」
「これが電力を使った光ですか!」
国王とム-ラン宰相が興味津々で見ているのは、橋に設置された街灯だ。
等間隔で並べられた街灯は、昼間でも輝いていた。
「ここは夜間でも使用されるので、人々の道しるべにもなるでしょうね」
少なくても半日ほどの移動時間が短縮できるダムの橋は、夜間でも安全に通る事が出来るんだ。
「それからこの電力をこの国の街へつなげる事になります」
「何やら電気製品? と言う物も使用が可能になるんだったな」
「はい。ですがしばらくは、あまり多くの物は使用できないでしょうね」
「それは何故だ? 電気を使えるのであろう?」
「水力発電だけでは、国全体で使用する電力量が足りません。他の電力設備も併用する方向で考えねばなりませんよ」
「蓮見君の言っていた、火力発電か。それもアルメリアでは完成したとか?」
「あちらからの情報ではそろそろ稼働し始めるようですね。建設についてアルメリアからも人員を派遣できると聞いてますよ」
「そうか。それで蓮見殿はこの後どうされるのだね?」
「一度アルメリアへ帰る予定です。今後の方向性が決まっていませんので」
蓮見はこのダム建設が終わった事で、一度会社へ帰る事になっていた。
橋の架け替えや道路整備も、安藤が主体でほぼ全ての工事を終えている。
その安藤も今は、田村達と一緒にサリファス王国へ向かっているらしい。
◇◇◇
その頃、サリファス王国内で活動する速水達が、セレス教の本部に集まっていた。
「それでマリアちゃん、どうしたの?」
「ルシ-ルお姉ちゃん。ちょっと待ってプリ-ズ!」
先程から何やらウンウン唸っているマリア。
「マリアさん、どうしちゃったんだろう?」
「速水君も分からないの?」
「静香さん、急に皆を集める様に言われたんで。何事でしょうね?」
皆でマリアを見つめる中、更に人が増えて行く。
「毎度ぉ-! 呼ばれて飛び出てなんちゃらや-!」
「トミ-はん! 微妙に間違ってまんがな! おもろいからええけど」
田村達スレイブ王国チ-ムも、ここに集まる為にやって来たのだった。
「ちょっとルシ-ル! 何がどうなってるの?」
「あら? イメルダも一緒に来たのね」
「だってマリアちゃんが、何かやらかすんでしょ?」
イメルダ教皇も田村達と同行した様だが、やらかす前提なんだね。
「むむむぅ。こいこい!」
マリアは相変わらず何やら唸っている。
⁈ 何だ?!
さっきまで唸っていたマリアが、突然変な踊りを始めた。
「ちょっとマリアどうしたの⁈」
「良いから! みんなも一緒に!」
「「「「「「え⁈ 踊るの?!」」」」」」
ドンドコドンドコ♪
ドンドコドンドコ♪
音など鳴るはずもないのに、変なリズムが頭の中に響いてくる。
何だか楽しくなり皆も身体を動かし始める♪
一斉に踊る謎の集団の出来上がりだ!
汗だくになって踊るマリアと俺達だったが、次の瞬間......
「き、きたぁあああああ!!!!」
突然叫んだマリアの目が銀色に光る。
「大地・芽吹き・豊穣。今ここに繋がる!」
マリアはそう言った後、倒れてしまった。
「ちょっと! マリア⁉ 大丈夫なの!」
「お腹減ったぁああ!!!」
良かった。身体に異常はないみたいだ。
いつものマリアさんだったよ。
でもさっきのマリアさん、何か神々しかったなぁ。
「良かったわね。あなた達のミッションクリアみたいよ」
「うんうん。私にも来たわ」
ルシ-ルさんとイメルダさんは笑顔でそう言った。
「ミッションクリア? どう言う事なんでしょうか?」
「速水様。今3つの国が繋がったのよ」
「そうそう。セルピナ様からもお告げがあったわ」
ん? ああ、そう言う事か。
さっきのマリアさんの言った意味が分かった。
それぞれの女神の権能を俺達が行った改革によって開花させたって事だよね。
「という事は、後3つの国が繋がれば帰れるんですね!」
「そ、そう言う事になるのかしらね」
「え、ええ。『神の御使い』の役目はそうでしょうね」
何かルシ-ルさんとイメルダさんの返答が微妙だ。
俺おかしなこと言ったかな?
「とりあえずマリアちゃんと一緒に食事にしない?」
「そうね。それが良いわ」
何か含んでいる感じがするのだが、皆は深く考えていない様だ。
素直に喜んでるし、俺が気にし過ぎなんだろうか?
背中を押される様に、皆で食堂へ移動した―――
2年と言う期間を過ごし、ようやく3つの国が繋がった。
しかしマリアのおかしな行動と告げられた言葉。
次話はこれまでの報告とマリアが語る女神。