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会社ごと異世界に転移してしまったが、うちの社員は商売上手だった件  作者: 早寝早起き
変化する国々編(アルメリア~サリファス・スレイブへ)
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岩さん一人旅

今回の主役は岩さん!

 岩さんが到着した事で、サリファス王国の食事情も変化していく。


 元々、メルボンヌはお米を食べる習慣や小麦を使った食品も多かったのだが。


「この街はわざわざ軽食販売しなくてもいいな」


「え? スレイブ王国では売ってたんじゃないんですか?」


「花崎も知ってるだろ? メルボンヌは既にお好み焼きとかピザに近い物もあるじゃねえか」


「それは分かってますけど。それじゃあ何処かへ行かれるんです?」


「ああ。この国では屋台形式にしようと思ってる」


 岩さんはそう言うと職人にある物をを持って来させた。


 アルメリアを出る前に頼んでおいたらしい。


「岩さん、これって......」


「良いだろ? 一回やって見たかったんだ。こういうスタイル」


 岩本が得意顔でいそいそ準備し始めたのは、所謂『キッチンカー』だった。


 馬車を少し小さくしたような形なのだが、この世界で馴染みのない物だ。


 勿論、馬に引かせるスタイルだ。


「花崎も中が見たいだろ? 良いぞ?」


「は、はい。気になりますからね!」


 キッチンカーの中は、使いやすい工夫がされていた。


 大柄の岩本もストレスなく動き回れるスぺ-スがある。


 調理に使う鉄板もこの為に新しく作らせたそうだ。


「アハハ! これって岩さんの趣味なんですか?」


「ああ。俺が考案して全て新しく作って貰った」


「でも火とか燃料はどうするんですか?」


「そこは考えてある。通常はカセットコンロを使うが、販売する時はこのキッチンカー自体が下へ降りる」


「下へですか? ちょっと意味が分かりません」


 岩本は一度花崎を降ろし、外から見ている様に言った。


 何やら岩本が操作すると、なんと! 本体部分が地面に降下していく!


「このキッチンカーは、現地で路面店舗として使用できるんだ。だから炭などを使って調理できる!」


「何その変なこだわり! ああ、カセットコンロも在庫が少なかったっけ」


「まぁな。流石に燃料は備蓄が無くなってきたからなぁ。まだガス燃料の見通しも立ってないし」


「確かに社屋でも炭使ってるんでしたっけ。ガスってどうやって製造してるんでしょうね」


「石油が出ないうちは、ある物で代用するしかないよなぁ。俺も詳しい事は解らん!」


 そんな話もしながら、岩本は黙々と材料を積み込んで行く。


 どうやら一人旅をしながら、サリファス国内をまわるそうだ。


「じゃあ、俺はそろそろ出るわ! 花崎も無理しないようにな!」


 岩本はそう声を掛け、隣街へ出発して行った。


 花崎はその姿を見送りながら、とても残念な気持ちになっていた。


 静香達が王都へ行ってしまい、週に1回来る定期便でしか知り合いに会えない。


 せっかく会った岩本もあっという間に出かけてしまったんだから。


「もう! 早く帰って来なさいよ! 私だって寂しいんだからぁ」




◇◇◇



 メルボンヌを出発した岩本は、鼻歌を歌いながら『キッチンカー』を進める。


 出会う人々は手を振りながら、不思議な物を見る目をしていたのだが。


「それにしても道が綺麗だな。お尻が痛くならない様にクッションも持って来たんだがなぁ」


 道路整備は岩本が想像している以上に上手く行っていた。


 多くの工事を経験しているので、整備技術も向上している様だ。


 時折、道端に生えている野草等も摘み、使用できそうな物は確保していく。


「へぇ。案外使えそうなものもあるじゃないか。実質0円てか?」


 岩本は植物に関してかなり勉強していた。


 食にかける情熱は、人一倍なのだ。


 少しの寄り道もあって、隣町であるベイパに到着する頃には日も沈んでいた。


「ふぅ。無事に到着っと。さてどうするかな?」


 ちょうど夕食の時間なので、本来であれば宿の手配を始めるんだが。


 ここで岩本はその選択を捨て、街の広場へ『キッチンカー』を進める。


「へへぇ。いっちょ始めますか♪」


 この場所の使用については、事前に領主であるベイパ男爵に申請してある。


 まさか到着してすぐに使用するとは、考えていなかっただろが。


 岩本は馬を近くの木に結び、水と野菜を与えた。


 そして住民の注目を浴びながら、『キッチンカー』を設置。


「さて、今日は焼きそばとお好みで勝負!」


 岩本が調理を始めると、辺りにソ-スの良い匂いが充満し始める。


 道行く人々は匂いに誘われ、続々と集まりだした。


「もうちょっと待っててな!」


「にいちゃん! 良い匂いじゃないか。 これ何なんだい?」


「岩本印の焼きそばとお好み焼きだ! 買って後悔させないぜ!」


 元気の良い岩本の大きな声が広場に響き渡る。


 集まって来た住民達も見た事のない料理と匂いに待ちきれない様子だった。


 そして始まった『岩本キッチン』には、大行列が出来た。


 原価が安い事もあり、銅貨1枚で販売しても黒字になる。


「こりゃあ良い商売だ。まぁ俺は大変なんだがな」


 気分よく調理を続ける岩本だったが、流石に売り切れになる頃にはクタクタだった。


「はぁ。ちょっと手加減して欲しいもんだ。しかししまったな。今日泊まれる宿まだあるか?」


 と独り言を呟いた岩本だが、実はこの『キッチンカー』には秘密がある。


「なんて言ってはみたが、このままここで寝れば良いか」


 キッチン部分にはシャッターが付いており、防犯も万全。


 広いキッチンの天井にはロフトがあり、1人なら足をのばして眠れるスぺ-スもあるのだ!


 元々国中をまわるつもりだった岩本は、野宿の際も困らない様に考えていたのだった。


 趣味と実用を兼ねたこの『キッチンカー』は、この後も長く活躍する事になる。


 翌日、岩本が起きる頃には朝から行列が出来ていたんだが......


「朝っぱらから並んでんじゃねぇ!」


 と言う叫び声が街に響きわったのは、ご愛敬だろう―――





この後も多くの街をまわる岩さん。


そこで出会う新しい食材と創作料理で『岩本キッチン』は、有名になって行くそうです。



次話は時は流れ工事も大詰め。

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