そもそも信頼雑貨株式会社ってどんな会社?
今回は、会社の成り立ちの説明が入ります。
そして翌日の朝、ブラウン率いる傭兵達がやって来た。皆一様に建物の高さや奇麗さに驚いているようだった。中々入ってこないので、大塚係長が声を掛けた。
「おはようございます。お待ちしておりました」
「お、おう。ちょっと想像と違ったものでな。それにしてもこんな建物どうやって?」
「それについてもご説明致します。まずは、敷地内を案内しましょう」
ここで、会社の敷地内の説明に入る。信頼雑貨株式会社は、創業者である田中 一郎が、1代で築いた会社だ。元々は田中商店という小売店だったんだが、田中家は土地持ちだったんだ。貸していた土地には、部品を作る小さな工場が多数あって、一昔前までは毎日溶接機器や裁断機等の音が響き渡る地域だった。
しかし不況のあおりや後継者問題などで、多くの工場が閉められることになった。優秀な人材を失う事を危惧した一郎が、経営者に声を掛け職人等を引き取る事にしたんだ。そして多くの人員を抱える事になった一郎が、持っていた土地を売却し今の建屋を建て、敷地内に工場を残したんだ。
小売業を続けながらも、自社で製造を手掛ける様になった田中商店は、人脈を活かし業績を上げて行った。その時代から一郎を補佐していたのが、沢田専務だ。残った工場の運営を、元々工場の経営者だった蓮見課長とそこの職人であった来栖さんが中心になって、今の形を築いたらしい。
そうして大きな集合体となった田中商店は、信頼雑貨株式会社として生まれ変わり現在に至る。
「ここが工房エリアです。主に職人たちが働いています」
「見たことない道具を使っているんだな。何だあれ? 鉄で出来てんのか?」
「ええ、ステンレス鋼という合金なんですが、分かりませんよね?」
「合金? 全く解らん」「ギルド長は、頭悪いから」「「「うんうん」」」
「てめえら‼ やかましいわ!」
「ははは、それでは続いて敷地の外周部に参りましょう。建物の周囲は、高さ3メ-トルの外壁が囲んでいます」
「へぇ、頑丈そうじゃないか。防犯の為か?」
「いえ、本来は防音の為だったんですよ。勿論、防犯にもなりますが」
「確かに工房だったっけ? あそこの音は大きかったな」
「ですが、今の状態では簡単に乗り越えられてしまいます。後日、その対策も行いますが」
「そうだな。乗り越える事は難しくない。じゃぁ、手分けして見廻る様にしようか」
「そうですね。門に常駐の方を何名か配置して頂いて、見廻りは別でお願いします」
「早速仕事を始めるか。ジョン! 何人か選んで配置してくれ」
「わかった。5、6人連れて行くわ」
「まもなく露店の人員が出発するので、そちらの方もお願いします」
「おう。じゃあ、トム! 人数確認して割り当てろ!」
「わかりました! 10名程連れて行きます!」
「それと。うちの女性社員が、街に買い物に行きたいようなので」
「それはソフィアに任す。俺には無理だ」
「あいよ。アンタに任せる訳ないでしょ? 馬鹿なの?」
「うるせい! 早く行ってこい!」
「では、ブラウンさんは建物内へどうぞ。中も説明しておきます」
こうして護衛の配置や建物の案内だけで午前中が終了した。傭兵ギルドのメンバ-も、交代で会社の食堂を使用してもらう事になった。建物内に入る際は、ビジター用の首から掛ける名札を準備している。名前がわからないと誰が誰だか解らないんだ。
午後になって、今度は提携商会の人間がやって来た。
◇◇◇
応対するのは、花崎さんだ。
「こんにちは。お待ちしておりました」
「奇麗な建物ですね。ビックリしました」
「そう言って頂くと嬉しいです。では皆さま倉庫の方に案内します」
花崎さんに案内され商品倉庫に案内された一同は、そこでも驚いていた。
「なんと! ここまで整頓された倉庫は見たことが無い」
ここで、在庫管理の佐々木さんがやって来た。
「初めまして。ここの担当の佐々木です。倉庫内は、火気厳禁です」
「そのあたりは大丈夫だ。それにしても、これ程の商品の数は見たことが無いな」
「多種多様な商品を用意しております。各カテゴリ-毎に分かれていますので各自で見て頂きましょう」
佐々木さんの指示の元、社員5名が各商会の人間に1人つく。
「ラーグ様、こちらが金物のエリアです」
「ナタリ-様、こちらは布製品のエリアでございます」
「ロドリゴ様、食品関係はこちらです」
「ナダル様は、工房担当者とこちらへどうぞ」
「キュ-ズ様には、こちらの資材(ブロック等)を見て頂いた後、工房へ案内します」
こうして商品のピックアップ作業と工房との連携が始まって行く。市場価格の調査も並行して行い、街の活性化に向けて動き出す。会社への訪問者も増えて来るので、各部門わかる様な認識票も作成した。護衛関係は赤色。商会関係者は青色だ。基本的に門にて手続きを行ってもらい、必ず認識票を身に着けて貰う事になる。敵対者に入り込まれてるのを防ぐためだ。トラブルが起こらなければ良いのだが―――
次話は、徐々に浸透していくメイドインジャパン。