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会社ごと異世界に転移してしまったが、うちの社員は商売上手だった件  作者: 早寝早起き
変化する国々編(アルメリア~サリファス・スレイブへ)
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速水は己の考えを訴える

速水は王城へ向かった

 翌日、王城へ出向いた俺の前には、国王と宰相が居た。静香さん達には商業ギルドの登録をお願いしてある。女性陣は買い物もしたいようだしね。


「速水殿、久しぶりだな」


「国王様、お久しぶりです。本日はお時間を頂いて申し訳ありません」


「こちらもお願いをしている側だ。そういう気づかいはやめにしよう」


 挨拶も終わり、今日訪問した訳を話し始める。


「それで今日は何用かな?」


「ええ。実は今回の訪問団の中に、過去にこの国と遺恨がある人物が含まれて居まして......」


「遺恨とな? どう言う事だろうか?」


「はい。その者達は旧ロンダ-ク帝国の人間なんです」


「何だと! その者達は死亡したと報告を受けておるぞ!」


 反応は予想通りだった。アルメリアからはサリファス王国に対し、全ての人間は死亡したと報告をしている。今、俺が話したことは両国に摩擦を与える内容だ。


「驚かれるのは、私も分かっておりました。そしてお怒りになられるお気持ちも」


「では何故その話を? その内容によっては、今回のアルメリアとの事業も見直さねばならぬぞ?」


「私も最初は黙っていようかと考えました。ですが2国間の関係を深めるために、隠し事は駄目だと思ったんです」


「確かにその生存者の存在が、露見すれば問題になっているだろうな。それでこの件はアルメリア側もご存知か?」


「アルメリアでも一部の人間しか知らされていない様です。決してサリファス王国に他意がある訳ではございません」


「そう言われてもな。どういう経緯でこの様な事になったのかを聞きたい」


 ここで当時の状況、ルコモンド将軍の判断、そしてその後の彼らの事を包み隠さず話した。その上で俺は自身の考えを伝える。


「私の育った国では殺人などの重い罪を除き、罪人にも更生の権利を与えています。生き残った彼らは略奪などはしておりませんでしたが、隊長であるバルトフェルトは片腕を失いました。そしてその他の人間は国と身分も捨てた。更に誰の保護も受けられない環境で今日まで生きてきました」


「うむ。その話が真であるなら、罰を受けたと申されているのだな。だがそれをただ納得する訳にもいかぬぞ?」


「彼らは今でもその罪を忘れておりません。そして責を受ける覚悟もございます。ですがその責について、何卒寛容なご判断を頂きたいのです」


「速水殿、何故彼らに肩入れするのだ。それ程の関係性もあるとは思えないのだが?」


「関係で言うと仰る通りです。ですが借りもあります」


 ここで王都のスラム街での一件を話した。バルトフェルト達の統率力と尽力があってスラム街を無くす事ができたんだ。アルメリア王国としても彼らの評価は高い。


「成程な。だが速水殿のお願いを聞いたとして、我が国にどの様な益があるんだね?」


「彼らに今回の事業で力を発揮させます。今の状況を改善していく上で、現場の統率や労働力は欠かせないのです」


「うむ。ム-ランはどう思う?」


「国王様、我が国としてはアルメリア王国との関係は崩したくありません。確かに納得は出来ない部分もありますが、罪の内容からは国としての寛容さは見せるべきです。それに速水様のお考えも理解できなくもありません」


「ほう。ム-ランがその様な意見を申すのは珍しいな。国としての寛容さか」


「はい。それにこの件でアルメリアにも貸しが出来きます。今後の関係性においても」


 うわぁ、やっぱり国の宰相だな。タダでは転ばないか。この事はアルメリア国王にもごめんなさいって言わないといけないな。


「貸しと言われると私も困ってしまいますが。今回の件は私共の会社では纏まっていますので」


「そうか。『神の御使い』の方々は、尊い考えの持ち主の様だ」


「それでどうでしょう? サリファス王国のご判断は」


「そうだな。この件は不問にする。私とム-ランのみに留めておこう」


 正直無理だと思っていたが、何とか納得してくれたようだ。この件はルコモンド将軍が了解しているので、国同士の話は任せようと思う。


「ありがとうございます。この件にも関係しますが、その後のハ-メリック帝国の状況に変化はございましたか?」


「うむ。その件についてはム-ランから説明させよう」


 ここでム-ラン宰相から現在のハ-メリック帝国の様子を聞いた。ハ-メリック帝国は元々の成り立ちから、国内では今でも小さな小競り合いが続いているらしい。そんな事もあり今回の作戦は順調な様で、現政権への不満は高まっている。


「そうですか。まさか内乱に発展するんでしょうか?」


「いや、それはない。ミネルヴァ教の尽力で戦争行為に発展しない様に手を回している」


「良かった。国が分裂する事になれば、多くの人命が失われますから」


「この問題は周辺の国にも大きな影響を与えるからな。正直な話、我が国も今戦争になれば大きな打撃だ」


 サリファス王国も戦争はしたくないそうだ。現在の国の情勢で戦争があれば、この国の疲弊も計り知れないと言う話だった。ハーメリック帝国で内戦が起これば、周辺国に飛び火するだろう。


 俺と国王達との話はこの後も続く―――

速水は国がどの様な考えで政治を行っているのかを知る。アルメリアとの関係が崩れない事を祈るばかりだが。


次話はメルボンヌに残っている来栖たちの様子

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