表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
会社ごと異世界に転移してしまったが、うちの社員は商売上手だった件  作者: 早寝早起き
変化する国々編(アルメリア~サリファス・スレイブへ)
126/200

スレイブ王国の抱える問題

スレイブ王国の国王達との会談は始まった。

 王城で王達と会談する高橋と蓮見。果たして彼らから何が語られるんだろうか?


「ではこの国の問題について私、ルロイから説明致します」


「「はい。お願いします」」


「お気付きかも知れませんが、この国は山脈側とそれ以外の土地では性格が異なります」


「はい。王都へ向かう道中で色々と見聞きしてきました」


 宰相の問いに高橋が答える。


「この国の主な産業は山脈で取れる鉱石です。それに続いて綿や麻と言った繊維産業。そして酪農です」


「なるほど。鉱石が豊富なので国力はあるという事ですね。綿についてはこの国に入る際に確認しております」


「高橋殿の仰る通り、国の財源としては潤っています。しかしその鉱石も無限にある訳ではありません」


「それはそうでしょうね。無限に採掘できる訳では無いでしょう。それで国としてのお考えはどうなのでしょうか?」


「我々としましては、鉱石以外の産業の発展は勿論、後は低地の問題を改善したい」


 宰相から話された事は概ね高橋と蓮見が考えていた内容だった。正直に言うとアルメリア王国よりこの国の方が、発展する可能性は秘めているだろう。鉱脈資源と寒暖のついた土地があるのだから。


「低地の問題解決については、私が説明します」


「おお、蓮見殿だったか。是非聞かせて頂きたい」


「王都へ着くまでに川にかかる橋や、頻繁に起こる川の氾濫について話は聞きました。そこで先ずやらなければいけないのは、川の氾濫をさせないようにする事です」


「川を氾濫させない? それはどう言う事なのだろうか?」


 ここで蓮見がダムの建設について説明をした。川の源流にダムを建設する事により、水量の調節を行えるようになる事。但し大雨などでダムが溢れた場合は、避難などを徹底した上で開放しなければならない。ダムを造ったとしても急な増水があった場合は、被害も覚悟しなければならないんだ。


「うむ。興味深い話だ。問題点についても理解した。それでも今までの被害に比べると意味合いが変わるな」


「そうですね。ある程度調整しながら放水出来れば、被害の規模は抑えられるでしょう」


「であればその方法に賭けてみたい。我々では考えの付かない方法だ。やってみる価値はあると考えます」


「ルロイ。我も賛成だ。直ぐに予算など細かい打ち合わせが出来るように手配しろ」


「国王様、仰せのままに」


「では我々とこの国の職人の方々で川の源流へ向かいたいのですが」


「わかりました。王都のギルドへ声を掛けましょう」


 こうして王国の賛同も得る事が出来た。人の手配等の細かい打ち合わせもあるので、王都で何日か待機する事になった。




◇◇◇



 田村達はギャランの街で、アルメリアからの物資を待っていた。


「それにしてもただ待っているだけって、暇やなぁ」


「えっと田村君? 暇なのは貴方だけなんですが?」


「倉木さん! 今のは独り言ですがな!」


「そんな大きな声の独り言は聞いた事無いよ?」


「あはは。怒らんといてくださいね? えっと、助けて下さい安藤にいさん!」


「だ・か・ら! にいさんって言うな! 助けるって言われても悪いのはお前だ!」


「そんな殺生なぁ。何かええ話ありませんの?」


「良い話かぁ。そうだなぁ、 実はそろそろ新商品の販売も始まりそうなんだ」


「新商品⁈ また移動系でっか? まさか気球?」


「違う違う。この世界って物を保存する事が難しいだろ?」


「保存って肉とか食品の事でっか?」


「そうだ。この世界は生鮮商品が流通できない。アルメリアでも保存は穴を掘って暗室代わりに使っていたよな?」


「そうでんなぁ......ってまさか⁈」


「そのまさかなんだ。大きなサイズは無理だが、冷蔵庫が発売される予定だ」


「それがホンマやったら、革命ですやん!」


「まぁそうなんだが、当面はアルメリア国内向けだ」


「何でまた? 大儲けできそうやのに!」


「何か忘れてないか? 一番肝心な事だ」


「え⁈ ん-、あっ電気でっか?」


「その通り。今の所、電気を作り出す事が出来ているのはグランベルクだけだ。だが国内に限定すれば送電線を引けるはずなんだよ」


「そうでっか......でもあれでんなぁ。よく冷蔵庫なんて作れましたなぁ」


「田村は冷蔵庫の構造って知ってるか? それを今から説明しよう」


 日本で販売されている冷蔵庫は、エアコンにとても似た構造をしている。エアコンとの違いは、生みだされる熱を利用しないのが冷蔵庫なんだ。


 一般的に流通しているのは、圧縮式冷蔵庫と呼ばれる。この冷蔵庫の主要機器は、大きく4つ。


 ①圧縮機

 ②凝縮器

 ③膨張弁

 ④蒸発器


 上記①から④を使って冷気を作り出して、冷蔵庫内に放出するのだ。イメ-ジ的には、エアコンの冷房部分を冷蔵庫内に作り出すって事だな。


 ①冷蔵庫の冷却サイクルを簡単に説明すると、電気を動力として駆動する圧縮機で気体冷媒を圧縮する。


 ②圧縮された事で高温高圧になった冷媒ガスを、凝縮器を通す事で液化させる。


 ③液化した冷媒が膨張弁を通り抜け、圧力が急激に低下し沸点が下がる。


 ④沸点の低下した液体冷媒を蒸発器に通す事で冷媒を気化する。


 この液体が気体に変化する瞬間、大きく熱を奪う特性を利用しているのが冷蔵庫なんだ。

 

「基本的な冷蔵庫はこういう構造だ。ただし一般的な冷蔵庫の冷媒はフロンガスなんだ」


「え? フロンガスって作れるんでっか?」


「いやまぁ作れなくも無いんだが、品管が研究中なんだ。そこで今回商品化する冷蔵庫は吸収式冷蔵庫だ」


「吸収式? それってまた構造が違うんでっしゃろ?」


「そうだ簡単に説明しよう」


 吸収式冷蔵庫が圧縮式と違う部分は、圧縮機を使わない事。冷媒がアンモニア水溶液に変わる事だ。


 勿論、構造も違う。


 ①吸収器

 ②再生器

 ③分離器

 ④凝縮器

 ⑤蒸発器


 ①アンモニアガスと水が同じ密閉された空間の別配管に充填されている。


 ②吸収器によってアンモニアと水が混合し、アンモニア水溶液が出来る


 ③出来たアンモニア水溶液を、電気エネルギ-のヒ-ターを内蔵した再生器で加熱。


 ④加熱されたアンモニア水溶液は、分離器によってアンモニアガスと水に分離する


 ⑤水は吸収器に戻り、アンモニアガスは凝縮器を通り液化する。


 ⑥液化したアンモニアは蒸発器を抜けて蒸発し気化する。


 上記の行程が繰り返される事により、冷蔵庫内が冷えるんだ。


「どうだ? 理解できたか?」


「いやいや! 専門的すぎますがな!」


「何でだよ! 気化する時に生まれる冷気を循環させるんだよ!」


「ほんなら、もうそれだけの説明で宜しいやん!」


「それは説明とは言わないぞ? 結構簡単なんだがな」


 少し専門的な話になってしまったが、日本ならインタ-ネットでこれぐらいの情報は誰でも取れる。


 とにかく、冷蔵庫が間もなく登場するんだ。一般に普及するにはしばらく掛かりそうだが、また1つこの世界に革命が起きるかもしれない。


 この話の翌日、アルメリアからの商品が届いた。新たに2名の社員と共に―――


高橋たちは川の源流に向かう前打ち合わせなどで忙しくなった。


今回、ついに冷蔵庫の話が出ました。現実世界ではフロンガスがオゾン層を破壊するなんて

話もあり規制が掛かっています。その点も考え吸収式の冷蔵庫を出しました。

ちなみに吸収式は騒音が少なくホテルなどで使用されていますよ。


次話で田村サイドの話は一旦、休憩です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ