ギャランの街(田村サイド)
サイラスの街を出発し、いざスレイブ王国最初の街ギャランへ!
俺達は翌日の朝、スレイブ王国へ入国する為に出発したんや。
先ずはギャランって言う街へ向かうんやが、その道中で愛しの倉木さんが求めている物を発見した!
「ねぇ田村君! あれ見てよ!」
「倉木さん、何でっか? 急に大きな声出したら、ビックリしますがな」
「そうよ愛。どうしたの?」
馬車の窓から見えたのは、黄色い花が咲き乱れる光景だった。
「あれでっか? どう見ても綺麗な花畑やけど」
「田村君......あれが綿の花なのよ!」
「ああ、成程ね。確かにあれは綿の花だわ」
「そうなんでっか? あれが綿?」
綿は黄色い花を咲かせた後、丸い実をつけるんや。その実がはじけると中から綿が出て来るんやて。
しかも開花するのは1日のみやから、花を見れたのはめちゃめちゃ幸運なんや!
「えへへ。これはついてるわ。まさか花が見れるなんて」
「そうねぇ。幸先が良いよね」
「倉木さんも安田さんも良くご存じで。俺は花の事はよう分かりませんわ」
花を見ながら3時間程馬車を走らせると、街が見えて来た。
「さて皆様、あの見えている街がギャランですわ」
イメルダさんが説明してくれたんやが、ギャラン言う街はホンマに田舎町やった。
「今気がついたんやけど、ここまでの街道も整備されてましたなぁ」
「田村、遅いぞ? 例の式典の関係で作業を急がせたんだ。今はギャランの街中でも工事が始まっている」
「蓮見課長、そうなんでっか? てっきり何にも進んでないと思ってましたわ」
国境を越える時もイメルダさんが居たおかげでスム-ズに来れたんやが、街に入るんも顔パスやったわ。流石は教皇様ってところやわな。
「無事に街には入れましたけど、俺らはこの後どうするんでっか?」
「田村、お前ってやつは......」
「あははは......」
イメルダ様が先導する形で、ギャランの街の領主さんに会いに行く事になったわ。そらそうやわな。
領主さんの館は街の中心部にあって、結構大きな屋敷やった。この街の産業は来る時見た綿が主体なんやて。イメルダさんは何でもよう知ってはる。
◇◇◇
到着した屋敷で応接室に通されたんやけど、無駄に豪華な部屋やなこれ。
暫くすると領主さんと奥さんが入って来たんや。
「お待たせしましたな。私がこの街を治めておる、ルート・ギャランだ。『神の御使い』殿とイメルダ教皇にお会いできて光栄に思う。私の隣に居るのが妻のキャロラインだ」
「キャロライン・ギャランです。宜しくお願い致します」
まぁピカピカの服着た人やったわ。この国の貴族さんは皆こんな感じなんやろか?
「ギャラン卿、お久しぶりですわね。少しの間よろしくお願いしますわ」
「初めまして。信頼雑貨の高橋 遼です」
「同じく信頼雑貨の蓮見 健司です」
といつものように挨拶は順番にすませたんや。トミ-神父は緊張してめちゃくちゃ噛んでたけど!
それが終わって一息ついてから、高橋課長が代表してこの国について質問したんや。
「ギャラン様はこの国の問題とは何だと思いますか?」
「うむ。問題とな? そうですなぁ、やはり先ずは作物の事ですな」
この街は綿が主になっているが、川を挟んだ隣町ではほうれん草やバナナなどの果物が細々と栽培されているらしいわ。本来なら豊かな土壌になる場所なんやけど、時折起こる川の氾濫で作物に被害が出てしまうんやて。
「蓮見、やはりアレが必要になるな」
「高橋、分かってるさ。それなら一度川上を見に行かないとな」
「ん? 何かあるんだろうか?」
「ええ。その点について蓮見から説明して貰おうか」
「わかった。お話を聞く限り、多くの作物が出来ない環境ですね。その問題が解決すれば、周辺の街も含め新たに作物を増やせますよ」
「おお! そんな事が可能なのか⁉」
「ただし生態系の変化が起きる可能性もありますので、慎重に判断しないといけませんが」
「生態系とな? それはどの様な事なのだね?」
「私共が提案するのは川上にダムを造る事なんですが......」
ここから蓮見達が考えていた案を話していく。川の氾濫を防ぐためにダムを建設し、水量の調節が出来るようにする。これで湿地帯の水量も安定し、米やその他の栽培が可能になる。しかし動植物に環境変化が起きるので、田畑を増やし過ぎると生態系が悪い方向に進む恐れがあるんや。
「ふむふむ。そうなると国にも協力を仰がねばならぬな。同じような地域が救われる話だ。王国をあげての話になるだろう」
こうしてギャランさんと話を詰めて行ったんやが、高橋課長と蓮見課長はギャランさんと共に王都へ。
他の人間はこの街に残って、工事の手伝いと綿についての研究を始める事になったわ。
このギャランの街は比較的温度が高いし湿気も多いんや。アルメリアの気温になれた俺らは、ちょっと汗かくぐらいなんやで。
「うーん、お風呂が無いのが心配ね」
「そうだね。女子にとっては辛いわね」
「倉木と安田の言う事もごもっともだな。ギャラン卿、井戸ってこの辺りにありますか?」
「井戸ならこの屋敷の敷地内にあるが? 何かあるのかね?」
「それなら残る職人でこの敷地に簡易の浴場を作らせるか」
そう言った蓮見課長は、職人たちに持って来た資材を持って来させたんや。
流石は工場部門のトップは抜かりないで。ポンプと繋げられるパイプが出て来たし!
こうして最初の方向性は決まったんや。高橋課長と蓮見課長が帰ってくるまでは、地道に工事と作物の研究する事になりそうやな。
ちょっと残念やった事は、出してもらった食事や。この国も手づかみ文化やったから、冷めた食事で味気なかったんや。俺らは持って来たスプ-ンやホ-クを教えながら、楽しく食事はしたけどな。
先ずはこのギャランの街を拠点にして、衣食と環境の改善から始めましょうか♪
スレイブ王国の問題である川の氾濫。この問題解決に向けて動き出す信頼雑貨。
田村達の奮闘が始まった。
次話も田村サイド。