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抱える不安も吐き出さねばならぬ

不安の緩和も必要だ

 社内会議は、続く。やはり社員の不安要素も多々あるようだ。俺や田村は、適応が早いらしい。


「はい! 私も質問です。衣類に関して男爵様からご提供がありましたが、やはり女性はサイズのこともあるので、買い物なども行きたいと思っています。その場合、女性の護衛の人も居てくれると良いのですが」


「そのあたりについては、女性社員の意見を聞いた上でギルドに相談しましょう」


「あの~、この建屋も広いんで門だけに護衛って大丈夫なんでしょうか? 塀も乗り越えられますよね?」


「そうですね。塀の上に金網などが設置できれば良いのですが。どうですか? 蓮見課長」


「それについては、ラ-グ商会で扱っている金物を購入して対応しようと思います。その分の見積もりは、近日中に経理部門に提出します」


「犯罪ってそんなに怖い街なんですか?」


「日本の認識とは違うと思われます。窃盗などは、海外をイメ-ジしてもらった方が良いかと」


「護身用の物は、身に付けたりしないんですか?」


「適当な物があれば、身に着ける事をダメとは言いません。しかし、扱いなれていない物を持つことに抵抗を持たれる方も居ると考えますが」


「私は、剣とか怖いです。普段見慣れてないので……」


「正直、腰が痛いです。寝る場所も何とかならないんでしょうか?」


「そうですね、木材が手に入れば工房の方で作成して頂く事になりますが、来栖さん、如何でしょうか?」


「材料があれば作れるさ。但し、複数人で寝るタイプになるな。2段ベットとか」


 この様に、議題から離れた質問も多く出て来たので、護衛についての話はここで一旦終了した。後日、護衛を依頼するギルドから人を呼んで説明を聞くことになる。続いて俺の案について話し合う。


「では、次に速水君から販売する商品について提案があった。2枚目の資料を見て下さい」


「速水、説明を頼む」


「はい。ここに書いてあります通り、ブラインドの販売を提案しています。すでに、工房の方の意見も聞いてありますので、後は皆さんの意見を聞きたいと思います」


「ここに書いてある新たに作るってどうするんですか?」


「それについては、木材を扱っている商会に心当たりがありますので、そこから入手します。工房のスタッフの方に同行してもらって予算を組みたいと考えています」


「作るにしても人員が足りないんじゃないのか? 設置にも工房の人間使うんだろ?」


「ええ、それなんですが、出来ればこの街の人間を雇う形を考えたいと思っています。日本に戻れる保障が今の所ありません。であるなら、生活基盤とこの街に馴染む事を優先した方が良いんじゃないかと」


「え? 社外の人が入ってくるの? ちょっと怖いかも」


「そこは、雇う段階で面接を行って、出来るだけ真面目な方を雇用するしかありません。又、社内に入る際に、ビジタ-だとわかる物を身に着けて貰えば良いのではないでしょうか?」


「そのあたりは、これから詰めて行くしかないな。私も街の人間を雇う事には賛成だ。そこから色々な情報も得る事が出来るだろう。商売において情報は命だ」


 高橋課長も賛成な様で安心した。人を雇う件については当初から考えていた。他の商会との提携も含め商売を広げて行くには必要だと思うんだ。街が活性化したら、その分売り上げも増えるだろうし。否定的な意見もあったが、とりあえずやってみない事には正解が見えないので、一応の賛成を得た。気づけばもう露店の人間が帰ってくる時間だ。今日の成果は如何だったんだろう?



◇◇◇



 時は、露店の開店まで戻る


「ちょっと田村君! 遅刻よ! 何してたの?」


「倉木さん! す、すんまへん! ちょっとお腹の具合が……」


「田村君、言い訳はめっ! だよ! 早く準備して!」


「あー! 怒られて泣いてるの?」


「マリアはん! そないな事ありまへんがな! さぁ 商売始めまっせ!」


「ほんとかなぁ? まぁ、今日は団扇だっけ? これ涼しいのよねぇ♪」


 露店の開店と同時に、昨日買えなかった人達が来てくれた。傘が無い事に残念な顔をしていたが、マリアさんが使用している団扇を見て興味津々だ。今日は暑いので冷たく冷やしたお茶を配っている。


「いらっしゃいませ! お客様、暑いのでこちらをどうぞ♪」


「あれ? こんなに冷えてるなんて!」


 そう、この世界には、冷蔵庫もない。ギルド情報では、北部地域以外では氷も流通していない。食品の保存は、地面に穴を掘ってそこに保存する方法が取られているようだ。肉関係は、燻製にして出来るだけ早く食べているらしい。そこの改善は必要だが、流石に電力を生み出すような知識を持った社員もいない。情報を得ながらみんなで改善方法を見つけなければならない。


 冷たいお茶の反響もあり今日の販売も絶好調だった。団扇も手軽に涼めるのでとても好評だ。マリアさんは、法被に団扇をもって教会へ帰って行ったが、その姿はまるで夏祭りに行った少女だったと、帰って来た田村が笑いながら話してくれた。教会の仕事してるのか不安になって来たよ。

次話は、提携する商会と護衛ギルドのお話ですよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 急に異世界に放り込まれてすでにある程度順応している速見や田村たちが珍しい部類なんですね。まあ確かに。
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