お騒がせな帰り路
聖女様を連れて会社に帰るのは大変だ。
聖女達と共に会社に帰る事になったんだが、流石にぞろぞろと歩くわけにもいかない。とりあえず王城へ状況を知らせてもらうように頼んだんだ。実務者会議が終わり次第、皆帰って来るだろうしね。
「移動はトロッコを貸し切る形でしましょう。ですが一泊は途中でする事になりますよ?」
「大丈夫ですよ。シルバの街でしたら教徒の経営する宿もございますので」
「アナマリアお姉ちゃん! 今日は皆でお泊りだ-♪」
うんうん。いつものマリアさんだね。楽しそうなのは良いんだけど。
暫くして王城から使者の方がやって来た。教皇の移動なので、トロッコの貸し切りは国が手配をしてくれるようだ。この国にやって来た各国の文官達も、会議が終った後に会社を訪問するらしい。
◇◇◇
王都の駅までは、教徒の人達が聖女を隠すように移動した。ロ-ブを被って移動してもらったので、バレなかったよ。
「速水様。このトロッコ乗って見たかったんですの」
「アナマリア様は乗られる機会はありませんよねぇ」
「街の人々のご迷惑になりますからね。楽しみですわ」
アナマリア様もそうだが、他の聖女様達も不思議そうに見てるね。
「お姉ちゃん達! ちゃんとベルト閉めるんだよ!」
「はいはい。ベルトってこれかしら?」 「何ですの?」 「思ったより広いのね」
マリアさんはノリノリで皆に教えている。マリアさんも最近初めて乗ったんだよね?
ワイワイと賑やかな雰囲気のまま、トロッコ列車は出発。初めこそ驚かれていたが、スピ-ドに慣れる頃には落ち着いてくれたよ。
「そろそろジルバへ到着します」
「あら? 本当に早いのね。まだまだ乗っていたいですわ」
「あはは。また明日も乗って頂きますので」
ジルバの街へ着いたのだが、教徒の方々が待っていたよ。先触れが出ていたんだろうか?
「それではご案内いたします」
「じゃあ俺は宿に泊まりますので、明日の朝に待ち合わせしましょう」
「速水様? 一緒に参りましょう」
「え? それは遠慮したいのですが......」
この後押し問答があったんだが、最後には折れてもらった。一緒はマズいよ!
翌朝、駅で待っていると大勢の教徒に囲まれながら、聖女様達がやって来た。楽しそうな姿を見てると普通の女性なんだけどな。
「おはようございます!」
「「「「「速水様。おはようございます」」」」」
ジルバを朝出発すれば、昼過ぎにはグランベルクだ。聖女様達も2回目でだいぶ慣れていたよ。
予定通りグランベルクに到着したら、なんと男爵の馬車が迎えに来ていた。
「速水君! とりあえず私の屋敷に案内するよ」
「ライアン男爵。どうしたんですか?」
「王都より連絡があってね。聖女様達が来られるのなら、私が出迎えねばならぬだろう」
それもそうか。男爵も領主として各国の教皇は出迎えないとね。
駅から男爵の屋敷まで移動し、聖女様達に休憩をしてもらった。この場はマリアさんと男爵に任せて、一度会社に報告に走った。
◇◇◇
「お疲れ様です! 専務達はお帰りですか?」
「あら速水君早いのね。専務は帰ってるわ。大塚係長たちは夕方になるらしいけど」
「花崎さん達も早かったんですね」
「心配しなくても静香も帰ってるわよ?」
「う......そ、そうですよね! と、とりあえず報告を先にしてきます!」
顔に出てたかな? まぁ彼女だし心配するんだけど。
とにかく報告が先だな。俺は専務の元へ急いだ。
◇◇◇
総務部の応接室~
「それで? 緊急の報告らしいが?」
専務と清水部長に来てもらった。
「はい。実は聖女様達から色々と聞くことが出来まして......」
俺はひと通り今回分かった事を説明した。
「なるほどな。速水の『導き手』と言うのも気になるが、問題は各国の問題解決だな」
「専務。これは社内会議の必要性がありますね」
「専務と部長に会議のセッティングはお願いして宜しいでしょうか?」
「ああ。清水君、社内の連絡は任せたよ」
「はい。そうなると明日、全体で行った方が良いですね。蓮見君や大塚君も夕刻になりますし」
「そうだな。その予定で動こう。店舗は閉めれないだろうから、手の空いた人間で調整もしないとな」
「じゃあ俺は聖女様達に伝えておきます。皆も直に話を聞いた方が良いと思いますし」
「わかった。聖女様達は男爵にお任せしよう」
俺は応接室を出て男爵邸に戻ろうとしたんだが......。
「あっ! 速水君帰ってたの?」
「静香さん! 少し前に帰って来たんですが、緊急で知らせないといけない事があって」
「それって聖女様と関係あるの?」
「ええ。色々と分かった事があったんです」
「ふぅ-ん。帰ってこないかと思ったわ」
「ちゃ、ちゃんと帰って来ますよ! そ、その......静香さんもいるんで」
(二人で赤面)
「速水! 何いちゃついとんねん! まだ就業時間やぞ!」
「田村......い、いちゃついてないから!」
「はいはい。どう見てもいちゃついてるがな」
しまった。田村に見られてたか。
「と、とにかく俺は男爵邸に行って来るよ」
「ん? 何かあったんか?」
「帰ったら説明するよ。今後に関わる事だからさ」
俺はその場から走って逃げた。これ以上いたら田村に何言われるか分からん!
そのまま男爵邸に向かい、明日会議を行う事を報告。今日はこのまま聖女様達は男爵邸で歓待して貰い、明日の朝に男爵が送って来る事で話はついた。何故かマリアさんも男爵邸でお泊りするそうだ。
俺が会社に帰ると会議の話は社内に回覧されていた。夕刻に蓮見さん達も帰って来たので、大まかな説明は済ませた。各国の実務者達は、明後日に来るそうだ。国が気を利かせてくれたんだろう。
さぁ明日は重要な会議になる。今後の道筋に何か良い考えが出るのだろうか?
さて聖女達もグランベルクへ到着。明日は会社の全体会議だ。
この会議で今後の動き方が左右される事になる。
次話は「俺達の進むべき道筋」
次話でこの章は終わります。