導き手と特異点
いきなり『導き手』なんて言われてもねぇ......
聖女達との話で分かった女神様の意志と帝国の話。更に俺が『導き手』だと言われたんだけど......。
「それで何故俺なのか? という点なんですが?」
「はい。私達は見ればわかるんです。速水様をひと目見た時に理解しました」
へぇ~。見たらわかるとか言われてもなぁ。
「感覚的な物なんですね。それは聖女である皆さんにしか分からないんでしょうか?」
「はい。こればかりは私達もそうとしか言えないのです」
「そ、そうですか。ちょっといきなりすぎて困惑しています」
「そうでしょうね。ですがこれも女神様がお決めになられた事ですので」
ニコニコ笑顔で言われても困るよ。う-ん。
「は、話は変わりますが、その女神様って直接夢に現れるんですか?」
「いえ。お姿を見る事は無いのですよ。何と言いますか、頭に直接お言葉が下りてくるのです」
「そうなんですか。俺はてっきり、夢に女神様が出て来られるのかと思っていました」
「うふふ。皆様そう思われていますね。私もお姿を拝見したいのですが」
なんだ。アニメみたいな女神様を想像したんだけど、そこはファンタジ-じゃ無いんだな。
「後もう一つお伝えしたい事があります」
「え? 何かまだあるんですか?」
「速水様が『導き手』であると同時に、『特異点』という存在もいます」
「『特異点』? それはどう言う意味なんでしょうか?」
「今までは存在しなかったのですが、今回の速水様達の出現に関係しています」
コンコン!
「アナマリア様。ご到着されました」
「ちょうど良いタイミングですね。入ってらっしゃいな」
「じゃあ-ん♪ アナマリアお姉ちゃん! 来たよ-!」
マリアさん? このタイミングって事は......
「速水様もご理解されましたか? このマリアこそが『特異点』です」
「はぁ。成程、色々と納得できるというか。流石と言うか」
マリアさんが特異点なら何となく納得だ。この空気の読まない所とか、誰にでも溶け込める能力は異質だよね。
「この子が『特異点』なのね。でもこの子ってもしかして......」
ルシ-ル様が何か感じたようだ。他の聖女達もマリアさんを見て何か考えている。
「アナマリア様、他の聖女様のご様子がおかしいようですが?」
「彼女たちは初めて見たから、そうなるのも仕方ないのです」
「という事はアナマリア様は何かご存じなのですね?」
「ええ。マリアからは『ジュノ-様』のお力を感じますから」
「え?! はじまりの女神様のお力ですか?!」
ちょっと待って。マリアさんって何者なんだよ!
「すべては女神様のお考えなのです。速水様がマリアと出会ったのも偶然ではありません」
「という事は今までも導かれているという事なんでしょうか?」
「はい。ですが速水様達がこの世界で行った事は、女神様のお力ではありませんよ」
「それはそうでしょうけど。一体俺達に何を求めているんでしょう?」
「今からそれを順番に説明します。まずファリス様は、この国に豊穣を求めました」
「それは生活が豊かになると言う認識で良いですか?」
「あらゆる意味での豊穣ですから間違いありません。次に」
「私、ルシ-ルから説明するわ。セレス様は大地。ファリス様と関りが深いので同列に考えて頂いて構いません。そして今回、サリファスの抱える問題はおわかりでしょう」
「じゃあ次は私、イメルダからね。セルビナ様は芽吹き。開花と言う意味も持つわ。」
「続いて私、メーガンから。エルミナ様は才能。芸術の神とも言われているのよ」
「次は私、エルファから。マ-ルス様は知恵。学問の神とも言われています」
「最後にジャニスから。ミネルヴァ様はご存知の通り戦争です」
この流れから想像できることは、各女神の権能によって求められる事が分かるんだろうか?
「質問良いですか? この流れで行くと各女神様が持つ権能に関係しますか?」
「流石は速水様ですね。その通りです。各国それぞれが抱える問題は勿論、その国を守護する女神様の権能に関係するものが求められているのです」
言ってることは分かるんだけど、それってめちゃくちゃハ-ドル高くないだろうか?
アルメリアは生活水準も文化的な発展も遅れていたから、俺達が力を貸したことで繁栄(豊穣)出来た。次のサリファスは大地。これについては国全体に交通網を広げる事で、豊かな大地に実る物を循環させ、皆に笑顔を取り戻す事でクリアできるだろうさ。それでもまだ2か国だ。後4か国の問題を解決しないと帰れないってか?
「速水様? 貴方達だけで解決するのは難しい事は分かっていますよ。私達の存在を忘れてませんか?」
「はやみぃ。お姉ちゃん達って凄いんだよ?」
そ、そうだよなぁ。自分達だけで何とかする必要は無いんだよね。
「我ら全ての聖女は、速水様と共にこの世界に安寧と繋がりを与える存在です」
そう言ったアナマリア様と他の聖女が俺に対し跪く。
「ちょ、ちょっと! やめて下さい! そう言うのは困りますって!」
「いえ、『神の御使い』であり『導き手』である速水様は私達にとっての希望。そして世界の希望でもあります」
俺は慌てて皆に立ってもらった。こう言うのは好きじゃないし、普通にしてほしい。
しかし世界から求められている事は分かった。やるべき事と各国の抱える問題については、順番に対応するより方法は無いだろう。会社の皆に話をして今後の対応を考えないとな。
「最後に聞きたいのですが、50年と言う単位についてはご存じありませんか?」
「この前お答えした通り、50年周期で災いが起こる事以外はわかりませんね」
「アナマリアとルシ-ルは忘れてるんじゃない? 私は何となくわかるわよ?」
そう言ったのはジャニス様だ。
「ジャニス様。是非教えてください」
「女神様のお力が50年しか持たないからじゃない?」
「え? 何故そう思うんですか?」
「だって私みたいな聖女も50年で入れ替わるのよ?」
はぁ⁈ そうなの? アナマリア様とルシ-ル様を見ると......え? 目が泳いでるんだけど......。
そんな単純な事だったんだろうか? そうなると50年がリミットで、その間にこの世界の問題を解決する事になっちゃうんだけど。でも流石に50年もこの世界で頑張れる自信ないし、そんなに掛かったら年長者は生きてるうちに帰れなくなるよ!
聖女様達との会談は終わったんだけど、俺が会社に帰ると言うと全員着いて来る話になった。
まぁ来てくれたら会社への説明もしやすいんだけど、道中パニックになりそうなんだが―――
やっとわかって来た帰る為にやるべき事。だがその内容は決して楽な道のりじゃ無い様だ。
マリアさんが『特異点』って納得でしょ? 自由すぎるし(笑)
次話は今後の動き方について。