表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/200

サリファス王国の王都へ 前編

親書を持って現れたのは......

 期限ぎりぎりで届いた親書。中身を確認するのだが......。



「ほな、読み上げるさかい、良く聞いといてな」


「田村......何しれっと始めようとしてるんだ?」


 そう、この親書を届けに来たのは同僚の田村と来栖さん、そして花崎さんだったんだ。


「まぁ、ええがな。速水と中村さんが行っても、対応でけへんかも知れへんやろ?」


「まぁ、そうだけどさ。田村は何しに来たんだよ?」


「あほか! 俺は販売部やぞ? 喋らしたら右に出る者はおらんがな!」


「田村、時間が無いんだ。皆を待たせてるんだから、早く読め」


 とても冷静に口を挟んだのは、来栖さんだった。今日中にはメルボンヌへ向かわないといけない。


「はいはい。ほな、読み上げるで。速水・中村両名は、田村・来栖・花崎と共にサリファス王国へ出向。信頼雑貨の代表として成果を上げる事を期待する。代表代行沢田 智紀」


「何かさっぱりした内容だな。沢田専務らしい簡潔な内容だけど」


「時間も無かったさかいな。揉めたんは、誰が同行するかだけなんや」


 このメンバ-に決まった経緯は、立候補者が多かったので責任者の推薦で決めたんだって。


「セラフィア王女殿下、国王様は何と仰っておられますか?」


「うふふ。アルメリア王国の大使として、しっかり職務をまっとうするようにと書いてありましたわ」


「ルコモンド卿、護衛の方の人選をお願いいたしますわ」


 これは意外だった。王女であるセラフィアは、てっきり帰されると思っていたんだけどな。


「それじゃあ俺は、出発前に馬車を点検させてもらおうか。長旅で何かあっても困るだろう」


 来栖さんはさっさと馬車の点検に向かう。俺達も事前に準備していた荷物を持って、出発準備を始めた。


「それで? 速水君とは進展あったの?」


「うん。ちゃんとお付き合いをする事になりました」


「そう。良かったじゃない。速水君と末永くお幸せにね」


「ちょっと千鶴! 結婚の話じゃ無いんだから!」


「あはは! 静香はすぐ本気にするんだから。でも彼はモテそうだから気を付けなさいよ」


「わかってるよ。速水君って鈍感だからね」


 


◇◇◇



 昼前に出発準備が整い、辺境伯に見送られながら出発した。着替えなども田村が持って来てくれたので助かったよ。王女が同行するので護衛の人数も15名程になり、結構な大所帯になった。


「ホンマかいな! 上手い事やりよったなぁ」


「何だよ上手い事って! ちゃんと告白して返事を貰ったんだよ!」


 田村にも中村さんとの事を報告したら、この返しだ。でも喜んでくれてるから嬉しい。


「田村も頑張れよ。倉木さんには気持ち伝えて無いんだろ?」


「そ、そりゃあ俺かて頑張るわ! でも倉木さんは忙しいさかい」


 確かに倉木さんが担当する『J-Style』は、アルメリア国内から複数の誘致があるみたいだしな。


 馬車の中は和やかな雰囲気で進んで行き、夕方にはメルボンヌが見えて来た。



◇◇◇



 到着後、先日の屋敷にそのまま向かった。到着の報告もしなければいけないからな。



「心配致しましたわ。それで? 何やら人数も増えておられるようですが?」


「ルシ-ル様、ここに居るのが同行するメンバーになります」


「初めまして。信頼雑貨の来栖 武英です。技術担当として参りました」


「同じく信頼雑貨の田村 篤と言います。速水と共に交渉を担当します」


「同じく信頼雑貨の花崎 千鶴と申します。経理の担当をしています」


 ひと通り挨拶を済ませた後、食事を振舞って頂いた。宿泊も屋敷内で部屋を用意して貰えたのは助かったよ。この食事中にルシ-ル様が、俺にしか喋りかけないから険悪だったんだけどね。


 翌朝、サリファス王都へ向けて出発するのだが、ここでもひと悶着あった。


「いけません! 何故教皇様が彼らと同じ馬車に!」


「お黙りなさい! 噂に聞くアルメリアの馬車ならば安全でしょうに」


「し、しかし我々にも体面がございます!」


 ルシ-ル様は俺達の製作した馬車に、興味津々だったんだ。この国の人なら驚くのも頷ける。


「それでは出発いたします。皆も遅れぬように」


 馬車内ではルシ-ル様とマリアさんが話していた。朝から珍しく静かだったんだけど、ルシ-ル様を見てからテンションが上がりだしたんだ。


「それでね♪ お姉ちゃんからこれを貰ったの♪」


「そうなのね。アナマリアの代理がマリアちゃんだったなんてね」


「ルシ-ル姉ちゃんも元気そうだね♪」


 俺も驚いたんだが、マリアさんはルシ-ル様と面識があったんだ。以前、クリスタさんと王都へ同行した時にたまたま知り合ったらしいんだが。


「あ、でも速水っちはあげないよ? 静香が泣くから!」


「え? どう言う事? 速水様と彼女はもうそんな関係なの?」


「もうねぇ、ラブラブってやつ? あちちのちぃ-だよ!」


「ちょ、ちょっと! マリア⁈ 勝手に何の話をしているのよ!」


 マリアさん声大きいから馬車内に響くんだよ。俺も恥ずかしいんだけど! それにそれを聞いたルシ-ル様と中村さんが目で会話してるし。周りの男連中がドン引きなんだよ!


「へぇ。貴女は中村さんでしたね。先日は何もないようでしたのに」


「そ、それは......と、とにかく私と速水君は恋人関係ですので!」


「まぁ私には、その程度の関係など問題ないのだけれど」


「は、速水君に手を出さないでくださいね! いくら貴女でも許せません!」


「おお! ルシ-ル姉ちゃんと静香って仲良しなんだね♪」


「「どこがですか!」「どこがよ?」」


 マリアさんの空気を読まない発言に、ルシ-ル様と中村さんが息のあった返しだ。意外と仲が良いのかも知れない。


「あーあ。静香さんに先を越されてしまいましたわ」


「セラフィア。仕方ないわよ、私も諦めたんだから」


「え? 千鶴さんも速水さんに?」


(コクコク)


「そ、そうなのですね。でもまだ何があるか分かりませんから」


「うーん。ちょっと複雑だけどね」


 メルボンヌを出発し、今日の宿泊予定地であるペイパの街まで大体半日程度だった。


 俺達の馬車ならもう少し短縮できそうだが、大所帯での移動には時間がかかる。


 日が暮れる時間帯に街に到着した一行は、本日宿泊するこの街の領主の館に案内された。


 王都まで後、4日―――。

賑やかなメンバ-になった速水一行。まだ王都までは時間が掛かりそうだ。


次話は王都までの道中。速水達はこの国の抱える問題を目撃する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ