自由な彼女がやって来た!
来ると思ってたよ?
翌朝、中々寝付けなかった俺は、ベットから起き上がれないでいた。そりゃぁ、昨日の今日だし? 中村さんいい匂いだったし? とか気持ち悪い事考えてたら寝れない。そんな事考えながらも、そろそろ起きないといけない時間だ。
「ふぁあ、ほんとに眠いな。朝、中村さんの顔まともに見れんのかな? 俺」
「速水様、おはようございます」
この砦の侍女さんに挨拶しながら食堂へ向かったんだが、あれ? 何か聞いたことある声が......。
「静香ぁあああああ!!!!!」
「ちょ、ちょっとマリア⁈ なんでここに居るの⁈」
俺が見た時には、中村さんの胸に飛び込むマリアさんの姿。え? ここルコムンドだよね?
「静香成分の補給に来たのぉおお!!!」
「はぁ⁈ なによその成分って!」
俺には慣れた光景だったんだが、食堂内に居る人達はドン引きだ。辺境伯でさえ相手がシスタ-だけに声を掛けづらい様子。
「あはは。マリアさんお久しぶりです」
「はっやみぃ! 寂しかったでしょ?」
何時からそんな呼ばれ方になったんだ? テンションが、おかしなことになってるね。
「え? ええ。それでどうしたんです? 街を離れて良かったんですか?」
「じゃじゃじゃじゃーん♪ コレコレ!」
「ん? 何ですか?」
マリアさんは中村さんに引っ付いたまま、札を取り出して見せた。ん? ファリス教大使?
「ファリス教大使って書いてますね。それって?」
「うふふふ。私も静香達に着いて行くの! これお姉ちゃんに貰ったんだもん!」
「ええ? マリア、あの人に会いに行ったの?」
「うん! 静香成分足りないって言ったら、作ってくれたよ?」
うん。意味不明だ。それ説明になってないよね? と言うかアナマリア様は、何考えてんだろ?
「マリアさんってアナマリア様と面識あったんですね」
「ん? だってクリスタの妹だもん。私のお姉ちゃんだよ?」
「ああ。そう言う事ですか、アナマリア様がお姉さん......」
頭が痛くなって来た。言ってることは何となく理解したよ? でも何で大使なんだよ!
「お姉ちゃんが、はやみぃ心配だし、着いて行きなさいって」
「そ、そうですか。何となくアナマリア様のお考えは理解しました」
これはルシ-ル様への対策要員だ。きっと。いや、そう思いたい!
「速水君。ちょっと良いか?」
「ルコモンド卿、どうされました?」
辺境伯に手招きされたので、行ってみたんだ。
「なぁ速水君。あのシスタ-殿をどう扱って良いのか分からないんだが」
「えっと。普通に接して大丈夫です。彼女は普段からあんな感じですから」
「普通に? い、いや、だがファリス教なのだぞ?」
「大丈夫ですよ。すぐに慣れますから」
ヒソヒソと話をしていたら、草薙さんも起きてきたようだ。
「ルコモンド卿、速水、おはようございます。何かあったのか? って嬢ちゃん居るじゃねぇか!」
「おっちゃん! 久しぶりぶり♪」
「お、お前! おっちゃん言うなって言ってんだろうが」
草薙さんをおっちゃん呼ばわりするとか、マリアさん恐ろしいわ!
「ね? 気にしたらダメなんですよ。ルコモンド卿」
「あ、ああ。何となくわかった」
「えっと。マリア殿、私がこの街の領主であるルイズ・ルコモンドと申します」
「私、マリア! よろしくね! えっと、お髭のおっちゃん?」
「ちょっとマリア! そんな呼び方失礼じゃ無いの!」
「ハハハ! お髭のおっちゃんで良いですよ。面白いお方だ」
もうマリアさんは何でもありだな。でもこの馴染み方は才能だよね。挨拶も終わり和やかな雰囲気で朝食をとった後、今後について話し合った。
「速水君。それでどうするつもりだね?」
「会社の判断もあるんですが、行かないと言う選択肢もありません。念の為、期限ぎりぎりまで待たせて貰いたいと思います」
「そうか。中村君や......王女様はまだ寝ているのかな?」
「あの子は朝が弱いので。私も速水君の意見に賛成です。日本に帰る方法を調べるなら行くべきです」
「静香が行くなら着いて行くよー!」
「しかし王女は行かせる訳には行かないんじゃないか?」
「草薙さん、それは俺も思ってたんですよ。国際問題になりかねませんし」
「その件については、王都へ意見書を送った。返答次第ではグランベルクへ帰って頂く事になる」
セラフィアは着いて来ると言いそうだけど、1日で移動できるメルボンヌはまだ良い。でもサリファス王国の王都までとなると、何か起これば戦争になりかねないしな。本当なら中村さん達も連れて行くのは怖いんだ。
(チラッ)
「速水君? 私は着いて行くわよ? 1人でなんか行かせないから!」
「そ、そうですよね-。勿論、一緒に行きますよね-」
「あはは。速水君はもう尻に敷かれてるようだな」
「速水! お前がちゃんと守れよ!」
「静香は私がついてるもん!」
中村さんってこういう感じだったかな? 嬉しいけど反抗できない......。
この話し合いの後、起きて来たセラフィアに確認したんだが、本人はやはり着いて行きたいようだった。だがそうなると護衛も必要だし、色々と準備があるよね。
そして期日まで後1日と迫った日、ルコモンドに親書が届いた。国王からと会社からの2通だ。
さて判断はどうなるか―――
自由なシスタ-も加わった今回の速水一行。問題は会社の判断と王女の件だが....。