マリアの成分補給と恋の行方
何やらマリアさんの様子がおかしい......
速水達がルコモンドへ向かった後、グランベルクではいつもの日常風景が......。
「ねぇ、千鶴! 静香が居ないよ?」
「マリアおはよう。静香は速水君に着いて行ったよ」
「ええ⁈ そんなの聴いてないよっ! プンスカプン」
「プンスカって口で言う人初めてだよ? 私も後で聞いたのよ」
「静香成分がた・り・な・い!! ガオ-!」
「ちょっと! なんで私を噛みに来るのよ!」
そんな光景を見ながら同じテ-ブルの愛と美樹はとても楽しそうだった。
「静香さんも遂に動いたのね」 「ほんと、やっとだよねぇ」
「もう我慢できない! 私も行くよ!」
「え? 行くってどこ行くの?」
マリアはそう言った後、走り去った。残された面々は、出て行くマリアを見送りながら思った。
これはまた面白い事になるんじゃ?
◇◇◇
メルボンヌからの帰りの馬車では、お互いに顔を合わせられない速水と静香。
「な、中村さん! さ、さっきの事なんですが......」
「は、はい......えっと」
先程から同じやり取りが続いていたのだが、中々踏み出せない二人。
「ちょっと! 私の存在を忘れてませんか? わ・た・し!」
「へっ? あ、ああセラフィアもお疲れ様」
「もう! 静香さんもさっきからずっとそんな感じだしぃ」
セラフィアが居て助かった。この空気に耐えれそうもない。中高生じゃあるまいし、ちゃんとしないとな。
「と、とりあえず。ルコムンドに着いたら辺境伯と草薙さんに相談しないと」
「そ、そうね。私もどうすれば良いか分からないわ」
「うー、何かごまかされてる気がしますわ」
そんな会話をしながらもルコムンドの街が見えて来た。陽も沈み外は星が輝く時間帯だ。
「お疲れ様です。今日お帰りだったんですね」
「緊急で帰る用事が出来まして。まだ中に入れて貰えますか?」
「領主様からいつでも通行できるように言われておりますので」
門の衛兵の方はそう言って、開門してくれた。通常なら外で待たされるんだ。
辺境伯の居る砦に馬車を向けると、既に連絡が入っていた様で草薙さんが待っていた。
「おう! お疲れさん! どうしたんだ?」
「今日お会いしたセレス教との会談の事で相談したいんですよ」
「そうか。ルコムンド卿も待ってるし話を聞こうか」
夕食の時間は過ぎていたが、食堂で軽食を取りながら話をする事になった。
そう言えば晩御飯食べてなかったんだよね。ドキドキしすぎて食欲ないけど。
「それで相談とは何だね? 急いで帰って来る程の案件か?」
「ええ、それなんですが......」
ここからルシ-ル教皇との会話を話した。辺境伯も知らない事があったのか、時折頷いていた。
「話はわかった。サリファス王国を救う事に関しては、俺から言える事は無いな」
「それは賛成という事でしょうか?」
「君らの存在はこの世界では貴重だ。各国とも期待していると思う」
「しかし俺の独断では判断できないですよ。特に俺なんて何の技術もありませんし」
「サリファス王国とセレス教が求める内容にもよるのではないか?」
「そこが聞けていないんで判断が出来ないんですよ。多分王都でその話になると思うんですが」
「わ、私は反対です! 速水君が帰ってくる保障がありませんし!」
「中村?! どうした? 感情的なのは珍しいじゃないか」
「く、草薙さん。そんな事ありませんよ?」
真っ赤になる中村さん可愛すぎるだろ。もう大好きです! ......っていかん。今はそれどころじゃない! 確かに行ったはいいが帰れない可能性もあるんだよな。
「しかし7日間では、伝令を使ってもギリギリになるな」
「そうなんですよね。遅れると大問題になりそうですし」
「俺はとりあえず行ったら良いと思うぞ。相手も同盟国だろ? 変な扱いはされないだろうしな」
「そんな事分かりません! 私はあの人の事、信用できません」
珍しく中村さんが反対するなぁ。多分勘違いしてるんだよなぁ。ルシ-ル様は、アナマリア様と同類だし。
この後も話したんだけど、とりあえず伝令は飛ばして、会社の判断をギリギリまで待つ事になった。
用意して貰った部屋に向かった俺は、どうも休む気になれなかった。そう言えばテラスが在ったよな。
「ふぅ、中村さんと話をしないとな。俺の気持ちも伝えないと」
ガタッ......
「え? な、中村さん⁈ もしかして今の聞いてました?」
(コクコク)
まさか聞かれてるとは思って無かったけど、今しかないか!
「中村さん! 俺、前から貴女の事を見ていました。最初は憧れだったんですが、貴女と接して行くうちに、何時も目で追ってしまう自分に気がつきました」
中村さんも真剣に聞いてくれている。
「俺は貴女が好きです! ずっと好きでした! 俺と付き合ってもらえませんか!」
(チラッ)
あれ? 中村さん泣いちゃったよ! 俺間違えた? どうしよう?
オロオロしながら落ち着くのを待っていたんだが、時間が途轍もなく長く感じる。
俺の勘違いだったんなら、中村さんには迷惑だったのかも?
「......」
「......」
長い沈黙は次の瞬間、歓喜に変わった!
「よ、よろしくお願いします。私もずっと好きでした!」
無意識に抱き寄せてしまった。ダメだ、もう離したくない。
ひとしきり抱き合った後、顔を見合わせた俺達は唇を重ね......
(ザワザワ)
「......って、何でみんな居るんですか?!」
「なんだよ! キスしないのか?」 「若いわねぇ」 「微笑ましいな」
どうやら全部聞かれていたらしい。は、恥ずかしすぎて死にそう......。
「何だ? びっくりした顔して。あれだけ大きな声で愛の告白してたら聞こえるぞ?」
「へ? そんなに大きな声でした?!」
「まぁなぁ。それにしても、お前らまだ付き合って無かったんだな」
「まだって......みんなそんな風に思ってたんですか?」
「だってお前らいつも見つめ合ってただろ? 俺でも知ってるんだから」
うわぁぁぁぁぁぁぁ。マジか! 俺そんなに分かり易いんかぁ!!
中村さんは俺の胸に顔を埋めたままだ。うん。恥ずかしすぎて無理だよね。
こうしてやっと告白出来た俺は、遂に中村さんと付き合う事になりました。
冷やかされるのは慣れてないけど、幸せ一杯の夜。
しかし翌朝に起こる騒動で、ビックリする事になるのだが―――
う-ん。甘い話は難しい。そう思うと恋愛作家さんは凄いね。
とにかく、速水と静香は微笑ましい結果に。
しかし翌朝って......。