大地の女神セレス
再びメルボンヌにやって来た速水達。ここから物語は動き始める
再びやって来たメルボンヌの街。ここはサリファス王国の片隅にある街だ。
過去に転移者が現れた事で史実に記載があるのだが、戦争により詳細は明らかにされていなかった。
ここで俺達が知った事実は、サヨコ・イトウと言う女性の人生だった。
そして様々な情報から彼女が夢を見ていたことを知る。その夢に出て来ていたというセレスと言う女神。
一体その神と言われる存在はどの様なものなんだろうか?
「速水君! ちょっと聞いてるの?」
「は、はいっ! 中村さん、おはようございます!」
「おはよう。朝から考え事?」
「ええ、ちょっとこれまでに分かった事を整理してました」
「それは分かるけど、ちゃんと話は聞いてください」
「あはは、すみません。あれ? セラフィアはまだ寝てるんですか?」
「え? ああ、彼女は朝が弱いのよ。ここまでの旅でも無理やり起こしてたんだから」
「それでトロッコ乗ると寝てたんですね。中村さんは大丈夫ですか?」
「私って意外とタフなのよ? それに旅行が好きだから」
「旅行良いですよね。俺は日本ではあまり出かけなかったんで、新鮮ですよ」
「あら? そうなの? なんか最近飛び回ってたから、そんなイメ-ジないわね」
「仕事じゃなかったら、のんびりしたいですよ」
朝のひと時を中村さんとお喋りなんて、贅沢だなぁと考えていたら......。
「ああ! 静香さんずるい! 速水さんの独り占めはいけませんよ!」
「そ、それは貴女が寝てるからじゃないの」
何やら勘違いしそうな話になってるけど、ご飯食べたらサリナさんとお出かけなんだよな。因みに朝食は、お好み焼きもどきだった。この街は小麦を使った食品がかなり多い。こんな料理もサヨコさんが広めたって言うんだから凄い人だったんだろうな。後、お米も普通に食べられているんだ。
「ごちそうさまでした。この街は日本で食べていた物に近いんで、安心しますね」
「そうねぇ。ちょっと味付けが薄いけどね。うちの岩さんの味付けに慣れちゃったし」
「でもでも、私にとっては新鮮ですよ。その『ごちそうさまでした』って好きですし」
このメルボンヌと言う街では、『いただきます』、『ごちそうさまでした』等、なじみの深い習慣があるんだ。サヨコさんの家系の人物たちが、この街の学校で教師をやっていたかららしい。
この後、各自出かける用意を済ませ、待ち合わせ場所に向かった。
◇◇◇
「皆さん、おはようございます」
「サリナさん、おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「では参りましょうか。と言ってもすぐなんですけどね」
サリナさんの言う通り、待ち合わせ場所から教会までは歩いて数分だった。
教会は街の中心地にあるので分かりやすいんだ。
「では私が声を掛けてきますので、少しお待ちくださいね」
「見た目には普通の教会ですね」
「そうね。グランベルクと変わりないわね」
「あの紋章は見たことありませんわ」
教会の建物は特に珍しい事も無かった。待つ事数分でサリナさんとシスタ-さんが出て来た。
「お待たせしました。こちらはこの教会のリべ-ルさんです」
「初めまして。私、セレス教メルボンヌ教会のリべ-ルと申します」
「信頼雑貨の速水です」 「同じく中村です」 「セラフィアと申します」
「それで何か聞きたい事があるとの事ですが」
「ええ。セレス教という物についてお話を伺いたいのです」
「そうですか。では中でお話ししましょうか」
教会の一室に案内された俺達は、テ-ブルに着き話を始めた。
「では先ず、セレス教の成り立ちからお話ししましょうか」
リべ-ルさんのお話によると、セレス様と言う女神は『大地の女神』と言われており、主に農耕の神様だった。このサリファス王国の建国前、大地は枯れ果て農作物の育たない土地だった。
そこに現れしは1人の女性。彼女は女神セレスの使徒を名乗り、枯れた大地に再び恵みをもたらした。
そして大地は蘇り、緑豊かなその一帯は多くの人々を救う。救われた人達はその土地に国を作り、サリファス王国となったんだとか。
まぁおとぎ話みたいな感じだな。この逸話があり人々はセレス様を信仰していると言う訳だ。
「お話に出て来たその女性についてお聞きしたいのですが」
「はい。女神セレスの使徒はその生涯を終えた後、生まれ変わったという逸話があります」
「生まれ変わるとはどういう事でしょうか?」
「その使徒と同じく、セレス様のお告げを受ける人物が出てきました」
という事はアナマリア様みたいな感じで、女神さまの言葉を伝える人が出たんだな。
「セレス様のお言葉を伝えると言う役割を持つ人物を、生まれ変わりと言っているのでしょうか?」
「はい、その通りです。この役割は女性のみであり、現在はセレス教本部に居られます」
そしてここから過去にお告げを受けた人物が何を成したのか? と言う話になった。概ね農業の不作を予言しただとか、水源を探り当てたとかだった。あくまでも推論だが、これ繋がって行くんじゃないか? ファリス様は豊穣でセレス様は大地。大地が蘇り穀物が育つ......でもこの繋がりがどうなるんだ?
「ちょ、ちょっと速水君! また考え事してるでしょ!」
「え? あ、すいません! 今のお話からちょっと考えることがありまして」
「どうかなさいましたか?」
「ええ。セレス様とファリス様の関係性を考えておりました」
「あら? ご存じ無いのですか? 女神セレスと女神ファリスは姉妹と言われております」
はぁ⁈ そんな事誰も教えてくれてないし! と言うかファリス様以外考えた事無かったんだけど。
少し驚く情報を得た俺達だったが、まだリべ-ルさんの話は続きがあったんだ―――
サリファス王国王国の成り立ちや女神セレス女神ファリスの関係が分かった。後は50年と言う単位が何を意味しているのか?
ここから少しファンタジ-色が出てきます。魔法などはありませんが。
新章『世界の神々編』をお楽しみ頂ければ幸いです。