デスループ(ギャグ)
あっけない二度目の人生だった。せっかく異世界に飛んだのに、もう死んだ。だけどあなたは最高に満足だった。もう生き返ったりしなくていいや。もう死んでいい。だって一生分のおっぱいを顔で食べたもん。顔でおっぱいを触るのは楽しかった。もういいや。まじで。もう本当に大満足。最高。もうこのまま天に召されていい。
「ちょっと起きてよ!」
誰かが俺のことを呼ぶ。きっとこの声はアリシアだ。だけどごめんなアリシア。俺はもう満足したんだ。やりたいことを全てやりきったんだ。もう楽しみ尽くしたんだ。魔王とかダンジョンとかは他の人を転生させてそいつにやらせてくれ。俺はもう自分の人生に満足したんだ。
「ちょっと! あなた! ピーー(伏せ字です)したくないの?」
「はい! しますっっっっっっ!」
あなたは、一瞬で自分の体を蘇生させ飛び起きた。光を置いてけぼりにして、音を切り落として、世界の自転が止まるほど速かった。刹那の一瞬で上体を地面から起こした。その瞬間、空気が弾けとび、空が割れた。大地に亀裂が走り、全ての生物が一瞬呼吸を止めた。それくらい激しく蘇生した。
「うっわ。びっくりした。心臓が止まるかと思った」
目の前にはアリシアがいた。膝枕で俺の死体を寝かせてくれていたみたいだ。かすかに後頭部に柔らかな太ももの感触の残滓を感じ取ることができる。っていうかさっきズボン履いていたよね? わざわざ太もも丸出しの服に着替えて膝枕してくれたの? そうだとしたら実にいい異世界だ。よくわかっている。
辺りを見渡すと、人だかりというより、イケメン有名俳優に群がる女性ファンのようだ。まるで魚群を作るゴンズイのようだ(わからない人はググってみてね!)。肉団子の中心に俺はいた。
っていうか流石に人多すぎだろ。コミケの全人口をここに転送したみたい。女の爆心地かここは!
そして、辺りをキョロキョロ見渡す俺に、
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「よかったー! 生き返って!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ライブの最前列の爆音と戦闘機のジェット音と隕石の落下の衝撃と落雷の爆音を全部一箇所にまとめて打ち込んでみたいな爆音が鼓膜に刺さった。そして、あなたは死んだ。
死因は心臓停止だった。
しばらく死んだ後に、
「ゲホっ! ごほっ!」
むせ返りつつ生き返った。
「ぐっはあ。死ぬかと思った。っていうかまじで一瞬死んだの? ねえ俺死んだの?」
「死んで、生き返ってまた死んで。また生き返ったわ!」
と、笑顔のアリシア。かわいい。
周囲をキョロキョロ見渡すと、依然として女の子の軍勢に囲まれていた。その女の子たちが一斉に息を肺に吸い込む。怪獣映画に出てくる怪獣がブレス攻撃をする時みたいだ。
「ちょっと待った! また死んじゃうから! “よかったー! 生き返って”とかのコメントはなし!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「わかったっ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
あなたは死んだ。
死因は心臓停止だった。
その後いつものように生き返った。今度は流石に学習したのか、女の子たちは何も言わないでただただ俺の顔を見つめている。全員の視線が痛いほど突き刺さる。これはこれで怖いな。
「アリシア! さっきから俺生き返っているけど、これも異世界転生の特典?」
「ううん。違うわ!」
なーんだ特典じゃねーのか。チート能力をもらってウハウハのぶっちぎりの生活したかったのに。俺の心は寂しく荒んだ。荒涼とした荒野は荒れ果てたあなたの心をよく表している。
「この世界では人工呼吸するとあなただけ生き返るのよ!」
なーんだ特典じゃねーか! あなたの心には春の野のように爽やかな花畑が広がった。色とりどりの色彩で目がくらみそうだ。
「じゃ、じゃあ。さっきも、そのまたさっきも人工呼吸してくれたのか?」
「ええ。そうよ!」
それを聞いた瞬間、あなたは地面に頭を打ち付けて、その場で自殺した。