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メイドの肉座布団と水のソテー

「うん! したい!」

その瞬間眠気は宇宙の彼方に消し飛んだ。なんだよ! 王道的な展開があるじゃないか!

「そう! もしかしたら女の子と一緒にふかふかのベッドで寝たいって思っているんじゃなーい?」

「うん! おもう!」

「もしかしたら、もしかしたら、異世界でハーレムで、」

アリシアが言い切る前に、

「うん! したい!」

「そう! なら今日はハーレムの日に、」

アリシアが言い切る前に、

「うん! 僕ハーレムがいい!」

そして、あなたはメイドにバケツリレーのように運ばれてベッドの中心まできた。ベッドの大きさは大体東京都一個分くらいの大きさだ。そこの中心に寝っ転がる。あまりのスケールのぶっ飛びようにベッドが広くて嬉しいとかそういう感情はない。


そして、数千、数万、いや数億のメイドどもが一斉にベッドに転がり込んできた。もう誰が誰で何がなんだか全くわからない。あいつが俺で俺があいつだ。まるで屋外で、人類全員が同時に雑魚寝している気分だ。

「思ってたのとちがーう!」

メイドの海の中で溺死した。


[翌日]

眼が覚めると、昨日と同じようにメイドのど真ん中だった。まるで砂漠に咲くオアシスのよう。あ! メイドのこと砂漠扱いしちゃった。

「どう。よく眠れた?」

横を見るとヒロインのアリシア。いや眠れるわけねーだろ。

「いや、眠れるわけねーだろ」

「念願のハーレムじゃないの?」

「いや、こんな都道府県が丸ごと一つ入るくらいの規模だとは思っていなかったから」

「えー! せっかく読者サービスしたのに!」

「いやいや。もう過剰サービスでしょ。だってこれもう災害じゃん」

「じゃあ明日からはもうやめる?」

「いえ。やります!」

「あ、やるんだ。まあいいわ。早速異世界の朝食を食べましょう。さあ案内するわ!」

そして、あなたは遥か遠くに見えるドアを見つめた。もう遠すぎて豆にしか見えない。そして、無限に広がるメイドのパノラマ。なんだこれ?

「ほら! さっさと行くわよ!」

アリシアに手を引かれてメイドの肉密林をかき分けていく。つーかこいつらいつまで寝てんだよ。なんで一向に目を覚まさないんだよ?


そして、五時間が経過した。

「よし! あと半分ね!」

アリシアが元気一杯声を上げる。

「おい! まだ部屋どころかベッドから降りられていないぞ!」

「ええ。それが何?」

「いや、もうとぼけるな! この世界でも絶対におかしいだろ! 朝飯を食いにいくはずだがもう昼だぞ!」

「まーたく。もう文句が多いわね。ならハイ!」

アリシアがそういった瞬間に、部屋が一気に縮んだ。なんとごく普通の二百五十畳くらいの部屋になったのだ。ベッドも普通の民家の庭くらいの大きさしかないし普通だ。


『よし! これで朝飯にありつける!』と思った瞬間、急激に狭くなった部屋の中心(つまり俺)に向かってメイドがぎゅうぎゅうに収束した。まるでビッグバンを吸い込むブラックホールのようだ。あまりの重力と、メイドからの圧で圧死しそうだ。

「死ぬーーーーーー!」

メイドの海の中で溺死した(二回目)。


その後、メイドをなんとか押しのけて、朝食(夕食)の席に着いた。食堂は寝室を出て左手にあった。『万里の長城か?』ってくらい長い廊下はもはやいじめだった。

食卓は言わずもがな巨大だった。食堂も何もかも巨大だった。もういい加減このくだりも飽きただろうから、アリシアに頼んで普通のサイズにしてもらった描写は省きます。万里の長城は後で使うのでそのままです。


食卓には金と銀のナイフやフォークが並んだ。輝く宝石が散りばめられた純白のテーブルクロスは至高の一品だ。

「異世界の料理楽しみかしら?」

「楽しみだ! どうせ見たこともないような美味しいものが食べられるんだろ!」

「ええ。もちろんよ! だって普通のパンとか提供したら読者が萎えるわ!」

そして、イキのいいメイドが勢いよく皿をテーブルに置いた。皿は激しく音を立てながら、次々とテーブルに並んでいく。


あなたはその様子を見て、頭の中に激しく疑問符が覆い尽くした。脳裏の中に敷き詰められた疑問の褥で、脳内は真っ白になった。

「あの、これなんて料理ですか?」

あなたは、テーブルに置いてある皿を指差して言った。なんとその皿の中にはどう見てもただの水にしか見えない液体が載っていた。はたから見れば、皿になみなみ水道水が注がれただけにしか見えないが、これは一体なんなのだろう?

「それは食べてからのお楽しみですわ!」

メイドはそう言うと、厨房に引っ込んだ。

「おい。これなんだよ。ふざけているのか?」

あなたの目の前に置かれた皿には、一膳の箸が備え付けられていた。これで水を掬えと?

「いいから食べてみて!」


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