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夥しいほどのメイドの海

そして、超超巨大な東京タワーくらいある鉄扉の前にきた。もう豪華を力一杯通り過ぎて迷惑レベルの鉄扉が仁王立ちしている。

「これどうやって開けるの?」

「もち自動ドアよ」

鉄扉の前まで来るとなんの趣もなくごく普通に開いた。無機質に両側に開く扉に若干冷めた。

「もう中世っていう設定が崩壊しだしたな。ってかギャグも増えてきたしこの小説はどこに向かっているんだ? 最序盤のシリアスなのはなんだったんだよ」

「この小説? あなたなんのお話をしているの? 変な人ね」

こいつ! シラを切る気か。今更とぼけられても。


そして、俺は中世なのか近代なのかようわからん設定の大豪邸に入った。すると、その中は更にイかれている設定のオンパレードだった。

「で、で、で、で、で、で」

声にならない声が飛び出た。豪邸の中は想像の一億万倍大きかった。まるで家の中に宇宙を無理やり詰め込んだみたいだった。さっき外から見た外観を完全に無視している。豪邸の中はさっきあれだけデカイデカイ騒いでいた外観が小さいものに感じた。

絶対に入りっこないほど巨大な空間が存在しているのだ。物理法則も自然現象もへったくれも何もない。いやマジで。頭おかしいんじゃないか。

「どうしたの? 声が出ないみたいね!」

「だっておかしいだろ! さっき外から見たときは一個の城程度の大きさだったろ! なんでその建物の内部はもっと大きいんだよ!」

「なんでって?」

アリシアは不思議そうな顔をする。アリシアは、ありえないとんでも設定について深く聞くとすぐこの顔をする。

「いやいいんだ」


俺は諦めて、豪邸の中の情景描写を詳細にすることにした。

豪邸の中は広かった。というよりむしろ豪邸の中にまるで一個の異世界があるみたいだった。天井はあまりに高すぎてもう見えない。上を見上げると無限に広がる永久空間がある。絶対におかしい。外から見たときはこんなに大きくなかった。


そして、横幅も横幅でイかれていた。ドアを開けて入ったら、大海原のど真ん中に出たみたいだった。縦も横も無限に広がっている。これ家っていうのか? もはや外じゃね?

っていうかもういじめとか嫌がらせの域を軽く通り過ぎているんだが。

「あのーアリシア? もうちょっと狭くしてくれない? 流石に広すぎて意味がわかんない」

「まーったくしょうがないわね!」

そして、一瞬で家は通常サイズの豪邸になった。

その瞬間、大広間兼玄関のこのスペースにたくさんのメイドがなだれ込んできた。いやむしろ雪崩というより津波に近い。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「お帰りなさいませ! ご主人様!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「多いいよっ! なんでこんなにいるんだよ!」

大広間に無数にあるドアからメイドが出るわ。出るわ。こいつら今までずっと待機してたんか? 何考えてんだ?

軽く見積もっても数百万人はいる。その数百万人が大広間の中を埋め尽くす。まるでメイドの海の中に飛び込んだみたいだ。

大豪邸の大広間の中を夥しいメイドがひしめいている。嫌な表現だな。

メイドの顔を左端から右端まで舐めるようにして見渡した。どのメイドもこれでもかってくらい可愛い。本当に可愛い女の子以外存在しない。眼鏡っ子。ポニーテール。ショートヘアー。年上のお姉さん。年下の妹的な子。茶髪。金髪。緑髪。青髪。ピンク髪。ありとあらゆるジャンルの女の子がバーゲンセールだ。読者の好みが何であれどんな願いでも叶うようになっている!

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ご主人様! 今日はお疲れでしょうからごゆっくりお寛ぎください」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

メイドたちが一言喋るごとに、屋敷全体がぶっ壊れるくらい揺れる。あまりの声量に鼓膜がぶっ壊れそうだ。

「おい! おかしいだろ! 読者に優しい小説なんじゃないのか? 豪邸にメイドに可愛いヒロインに至れり尽くせりだけど、なんで全部過剰サービスなんだよ!」

俺のツッコミはメイドの海の中に消えた。あまりにもメイドが多すぎで誰の耳にも届かなかった。


そして、嫌がる俺をメイドたちがベッドルームに運ぶ。

巨大な廊下を雪崩のように通った。まるで参勤交代みたいだ!

そして、トチ狂ったように巨大なベッドルームにたどり着いた。そこには、無限に広がる空間よりは幾分かマシかくらい大きい空間があった。その真ん中には無限に広がるベッドよりは幾分かマシかくらい大きなベッドがあった。

「やっと眠れる」

なんか異様に疲れた気がする。もうハーレムとか異世界とかもうどうでもいいからさっさと眠りたい。そんな俺の右の袖を誰かがひく。メイドの海の中から俺に誰かがコンタクトを取ろうとしているのだ。つーかメイド多すぎだろ。もはやこれ災害だろ。

「あなた! 私よ! アリシアよ!」

すまん、右手しか見えない。

「おー! どうしたアリシア?」

「今日のお楽しみイベントがこれからあるわ! 始めてきた異世界でハーレム状態になってモッテモッテのウッハウッハな生活がしたいんじゃない?」


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