ラッキースケベいじめ
[五時間後]
あれから随分と時間がたった。アリシアとはあのままの姿勢でいろんなことを話した。将来のこと。この世界のこと。好きな食べ物のこと。言ってみたい場所のこと。全部全部どうでもよかった。あなたはただ話を聞いているふりをして、ひたすら手を動かしていた。『ちょこっとくらいなら触っても問題なかろう』と思ったあなたは結構がっつり揉んだ。割とラッキースケベで許されないくらい揉んだ。アリシアはなんの抵抗もしない。これラッキースケベっていうのか? もはやただのどすけべど変態だぞ! やったね!
「ねえ。あなたそろそろ」
「ああ。そうだな」
あなたは心の中の濁りが全てなくなって満足すると、ようやくアリシアから退いた。辺りは完全に暗闇に飲み込まれていた。白い昼を食い尽くした闇は、ただじっとしている。闇の天蓋の下で動く生物のことなんてちっとも気にしていない。
「さ! ラッキースケベもたっぷり堪能したし、そろそろ」
あなたが言い切る前に、
「そろそろ私の番ですね!」
女の群衆の中から、名前も知らない女性が躍り出た。
「へ?」
「彼女の番が終わったら次は私の番ですわ!」
と、別の女性。
「ずるい! 私もラッキースケベされるなり!」
「えー! 次は私の番でしょ!」
「私も〜!」
「うちもラッキーしてあげたいー!」
「私も転生者様におっぱいを握られたい!」
「私も私も〜! おっぱいしてもらうまでは帰らないんだからねっ!」
「あたしのおっぱいも触ってー!」
「私のも!」
「うちのも!」
「あたいのも!」
「わしのもじゃ!」
この世界は過剰サービス異世界。こいつら全員が俺にラッキースケベするのか? だからこいつらじーっと待機していたんだな。っていうか最後じじいいなかったか?
あなたは群がる群衆に対して、
「全員まとめて相手してやっから。おっぱい洗って待ってな!」
「きゃーやったー!」
「イエーい!」
「おっぱい! おっぱい!」
「やったわ!」
「感激!」
群衆はヒートアップ。一斉に雪崩のようにこちらに向かって飛び込んできた。
「わ! ちょまっ!」
まるでイノシシの群れの中に、ヌーの群れを放り込んで、その中にさらにバイソンの群れを突っ込んで、その三竦みの攻防の中にぶち込まれたみたいだ。まるでサバンナだ。
群衆はさらに加熱し始める。もう誰にも止められない、この回転する運命の車輪からは逃れられない。
イノシシたちは無我夢中で突っ込んでくる。もはや殺しにきている。
「ちょまっ! ちょまっ! ちょまっ!」
「早く揉んでー!」
もはやラッキースケベじゃない。
「おっぱい! おっぱい! おっぱい!」
わっしょいみたいにいうな。
「オラオラオラオラオッパーい!」
雪崩はさらに群衆を巻き込み加速する。これ俺を殺そうとしているよね?
「死ねーーーーー!」
やっぱり。
「ちょまっ! お前ら! 待って! ストープ!」
そして、バイソンたちはその身を停止させた。じーっとこちらを見る。数百、数千、数万の瞳が一斉にあなたの顔を覗き込む。うわ。こええ。俺今から、この人たちのラッキースケベするの?
「みんな一列に並んで! そしたら全員ラッキースケベしてあげるから!」
もはやラッキースケベじゃない。偶然とかたまたまぶつかっちゃったとかいう要素がないのだ。ただのすけべだ。
「私が一番最初にラッキーするのよ!」
「私が最初よ! あんたは引っ込んでいなさい!」
「あたしよ!」
「あたち!」
「まあまあ。全員まとめて相手してやるから!」
すると、ワラワラと女の子がたかってきた。一人、二人、三人、あっという間に一ダースを超えた。なに、俺海賊王?
「アチシも!」
「私も!」
「私だってー!」
「わしもじゃ!」
女の子に群がられて、たかられる。こんな気分なのか。異世界に来るとこんなにモテるんだな。っていうか最後じじいいなかったか?
そして、あなたの目の前には久遠に続く永遠の一列ができた。
「なっっっっっっっが! もう一番最後が見えないんだけど! なにこれ参勤交代でもするの?」
列の最後尾はもう地平線の彼方だ。万里の長城に行ったことないけど、万里の長城よりは絶対に長い。行ったことないけど。
「じゃあ! 転生者様、早速お願いします!」
「よ、よし! こい! 今から偶然おっぱいに触ればいいんだろ! さあこい!」




