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ハーレム、主人公アゲ、ラッキースケベが全部過剰サービスで逆にいじめみたいになる異世界転生

今この小説を読んでいるあなたは人生に疲れている。


あなたは一生懸命頑張った。自分の持てる力を出し切って努力した。だけどそんなあなたのことを誰も評価してくれなかった。あなたは人生に疲れている。何をやっても報われない。評価されるのはいつだってただ運がいいだけのやつ。

そいつらばかりが褒められて、いい思いをして、うまい汁をすすっている。


生まれる国も、両親も、性別も、身長も、才能も、髪の色も、目の色も選ぶことはできない。こんな運要素が強い世界で、一体何ができたのだろうか?


あなたはそれでも一生懸命に生きた。やりたくないことをやって、やってやってやり続けた。自分をだましだまし生きてきた。ずっと辛いだけの日々を過ごしてきた。

そして、それに見合った報酬がもらえることなどただの一度もなかった。


もしあなたが若者なら、大人が勝手に始めたゆとり教育を受けたはずだ。そして、あなたの教育方法を決めた大人たちがあなたを『ゆとりだ』といって馬鹿にする。

あなたはゆとり教育をしてくれと一度でも大人に頼んだのだろうか?


もしあなたが中年なら、もうやり直せない人生に絶望しているはず。周囲の人は『なんで甘えているんだ?』、『なんで頑張らない?』と無茶苦茶を言ってくる。

ブラック企業に一度入ったら、やめて無職になるか、別のブラック企業に行くしかない。

就職をしないという選択肢を取ったなら、人手の足りていないブラック企業に行くか、社会から拒絶された毎日を過ごすかしかない。


働いても地獄。働かなくても地獄。一寸先は闇、もう目の前なんて真っ暗で何も見えない。こんなに暗い社会の中でどうやって生きていけばいいのかもうわからない。

マナーを守らないやつやズルをする奴ばかりが得をする。人を騙して、嘘をついて、詐欺をして、人の優しさに漬け込むようなクズが世間では褒められる。金を持っているやつだけが必要とされる。

あなたは何か犯罪をしたことがあるだろうか? 誰かを殺したことがある? 詐欺でお年寄りから金を毟り取った? 自分よりも弱い奴をいじめて満足感を得た?

もしあなたがそんなことをしているのならこの小説は読まないでほしい。

この小説は心の優しい人のためにある小説だからだ。


あなたは今まで生きてきて、誰も傷つけなかった。だけどそんなあなたを周囲は傷つけた。

一生懸命頑張ったのに、一生懸命生きているのに、誰も認めてくれない。

誰よりも苦しんでいるのに、こんなに辛い毎日を送っているのに、周囲はあなたを『甘えている』と蔑む。

苦しんで、苦しんで、苦しみ抜いても、まだ苦しまないといけない。

人生はゴールのないマラソン。永久に走り続けるようなものだ。休む暇なんて一瞬もない。

飯を食うために生きているのか、生きるために飯を食うのかわからない。

仕事をするために生きているのか、生きるために仕事をしているのかわからない。


この小説はそんな人生に疲れたあなたのための小説です。

あなたはこれからファンタジーの世界に行ってもらいます。そこで現実では得ることができない成功体験(魔法など)や幸せな出来事を経験してもらいます。

人によってはそれを現実逃避だというかもしれません。でもあまりにも酷い現実に耐えられないこともあります。どうしても辛い時だってあります。どうしても逃げたい時だってあります。

『逃げるな』、『甘えるな』、『頑張れ』、『もっとできる』、『やればできる』

それらの言葉が呪いの言葉のようにあなたのことを苦しめる時もあります。苦しかったですよね? 辛かったですよね? 世界で一番不幸でしたよね?


ではそろそろ異世界に行ってもらいます。異世界に行きたい人だけこの小説を読み進めてください。



あなたは意を決して、この小説を読み進めることにした。すると、あなたの意識だけが小説の中に吸い込まれていく。現実世界に残されたあなたの体は抜け殻のように軽くなった。肩から力が抜けて楽になった。少しだけ前向きになれたような気がした。


あなたは時空の渦のようなものに飛び込んだ。きりもみしながら異次元空間を泳ぐ。あなたは必死で手足をばたつかせながら前に進む。


あなたは透明な壁。時の濁流の中でただじっと立ち止まっていた。そんなあなたに時は残酷にぶつかり続ける。時のカケラが砕けてあなたの体に突き刺さる。ただ立ち止まっているだけなのに、それが身を切るように痛かった。

そして、あなたのハードモードの人生は、小説の中で動き始めた。


異次元トンネルを抜けると、そこは知らない世界の上空だった。無限に広がる群青色の空は現実の空と違って美しかった。青い空を白い雲が飾り付ける。あなたは眼下に広がる無限の大地を網膜に写す。そこには、巨大なカニがいた。一つの大陸ほど大きいカニの背中には街のようなものが見える。右手には、オゾン層を超えるほどの大樹がそびえる。左手には星が流れる川がある。まるで天の川が地べたを這っているみたいだ。

あなた胸の中に再び炎が宿った。いつか忘れてしまっていた勇気が再び燃え上がる。辛い人生を生きていく中で、どこかに置いていったものが次々と胸の中に戻ってくる。

勇気、希望、幸福、愛、誠実、友情、そんなものもう無くしてしまっていたと思っていた。だけどずっとあなたの胸の中にあったのだ。あなたがそれに気づけなかっただけなのだ。


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