表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に鷹、さんだぁバード!  作者: 赤塚ハシラ
一章 無人島編
9/29

第八話 電気と雷


「見事。素晴らしい手際であった」

 

 イン子の澄んだ声が、俺の耳に心地よく響き、緊張して少し硬くなっていた体を解きほぐしてくれる。

 正直こういうのは助かるな。

 感謝の気持ちを込めつつ、グッと親指を立てる。

 確かに、自分がやったとは思えない程の手際で、ダイヤ虫を倒すことができた。

 しかも、あの反応の速さ……俺は決して運動神経は悪い方でなかったが、あのスピードはありえない。これも雷能力の仕業なのかは、今の俺にはわからない。


 焦げて死んだダイヤ虫を手に取ってみるが、やはり熱さは感じられない。

 それが自分の雷撃による熱だからなのか、わからないが恐らくそうなのだろう。

 ダイヤ虫……お前の生命、大事に活用させてもらうからな。


「いただきます」

 

 心の中で両手を合わせてから、倒したダイヤ虫の羽を口に運ぶ。

 見た目のグロさに惑わされてはいけない。

 サクッとした歯ごたえ、香ばしい珈琲のような香りが鼻を抜けるのだ。


「やっぱうめぇな」


「これ、妾にも羽をよこすのじゃ」

 イン子が勢い良く近づいてきて、俺の手のひらに残るダイヤ虫の羽を、足と嘴を器用に使いつつ美味しそうに食べはじめた。

 

そして、黒いバネのような足も公平に分け合い美味しく食べた後、残ったダイヤモンドの原石をポケットにしまう。


「確か……もう一匹、この辺りにいるって言ってたな?」

 

「先程の騒動で逃げてしまったようじゃ。少し待つがよい」

 

 イン子は上空へと華麗に舞い上がり、軽く周囲を一周した後、直接、俺の心に話しかけてきた。


【こちらじゃな、ついてまいれ】


 イン子を見失わないよう、時より上を見上げながら駆け足で付いていく。


 しかし、アイツは簡単にダイヤ虫の位置を特定できるのか。

 俺はまだ狭い範囲しか探れない。

 これも課題にしよう。


【のう、この『遠く離れていても心の中でお互い会話ができる特別な――】

【――念で話すから『念会話(ねんかいわ)』でどうだ】


 ……無駄に長い名前をつけられては、たまらんからな。

 しかし、今のは随分と速く反応できた。

 イザという時、問題なく使えるだろう。


 暫くして、イン子が合図を送ってくる。

【おったぞ……音をたてるなよ】


【加重、次は違う方法で雷撃を出してみよ。移動して雷を体中から放出するのではなく、ある程度離れた状態で雷撃を出すのじゃ】


 なるほど、要は遠距離攻撃ってことか。


【おう、やってみる前に助言はあるか?】


【指先に集中。そして『点』と『線』】


「……線?」

『念会話』ではなく、わざと声で聞く。


 返事がないのでやるしかない……まずはダイヤ虫の居場所を見つけてからだ。

 

 例の携帯電話をかける感覚を、再度使ってみることにする。

 集中……そうだ集中――! いやがった。いいぞ、今度は簡単に見つかった。


 ここから二時方向、木が生い茂った所。

 大量の落ち葉の下に潜んでいるようだ。

 普通に目だけで『ダイヤ虫』探すとなると、とても困難だろう。


 距離は目測で、二十メートル位か。

 自分の右手を見つめ、体中にある雷の力を、流れる水のように、電流のように循環させ、それを指先から少しこぼれさすイメージを持つ。

 ……そうだ、指先に集まれ。


 集中した右手の人差指からジリジリと、まるで茶柱のように雷が立つ。

 雷が行き場を求め、指先で動き出す。

 早く放出せよ、速く命令せよ。

 流れる場をよこせ、と俺に訴えている。


 後は、これを飛ばして当てるだけ……が、撃っても当たらないかもしれない。

 先程は、自分が移動して体中から雷を放ち、範囲攻撃したから当てられたのだ。


 いや、大丈夫。

 相手は気づいていない、落ち着いてやれ。


 指先の集中を保ったまま、ダイヤ虫がいるであろう場所を凝視する。

 居場所はわかっているのだ。

 後は、それを感じるだけのお仕事。

 集中……ダイヤ虫を『点』で捉えることに成功。

 そして、指先にある雷の点を、ダイヤ虫のいる点に合わせる。

 合わさると『線』になるように。


 凝縮させた一撃を放つ。



 雷の乾いた音が響くと同時――ダイヤ虫を倒したことを確信した。


 イン子もすぐにわかったのだろう。見事、と声をかけて近寄ってくる。



 今回も、二人で羽と足を分け合い食べた後、イン子がまじまじと俺を見つめた後に質問をしてきた。


「ところで御主、力を使った後、疲労みたいなものはあるか?」


「疲労? いや、別に感じないが」

 

 そう言いながら、体中の帯電した感覚を確かめるが、疲労感はまったくない。

 イン子は黙ったまま俺を見つめた後、俺に今倒した石を握ってみよ、と提案してきたので、言われたままにダイヤの原石を握る。


「その石は力を溜めることが出来ると話したであろう? そこに御主の霊力(れいりょく)と、『例の力』を混ぜるのよ、わかるか?」


 例の力ってのは、雷だと思うが。


「霊力って、要は魔力ってやつか? それに雷の力を混ぜるんだろ?」

 イン子は首を横に振り、ため息をつく。

 ……なんかむかつくぞ。


「使い手の違いじゃの。霊力とは、神やそれに親しい精霊、神獣のような存在が使う力。魔力とは、人間や亜人、魔物や低級な妖怪の類が使う力」


「雷を生み出せる御主は、霊力の持ち主。単純な威力は妾に比べたら弱いが、それは問題ではない。雷を扱える事こそが重要。……それに御主の強みは、ほぼ無尽蔵に雷能力を使える所よ」


 雷の力は使えるが、威力は弱い、か。

 弱い雷ってあるのか? 電気との違いって何だ?


 幼い頃、落雷を受けたトラウマで、俺は昔から理科や科学が苦手だった。

 言い訳はしたくないが……俺は文系だったので、雷や電気、電流と電圧の違いがイマイチわかっていないんだな、これがまた。


 イン子は知っているだろうか? 

 ダメ元で俺は聞いてみることにする。


「俺の暮らしていた時代はな、色々な『からくり』を動かす動力に、電気っていう雷の力を使ってるんだよ。その電気を電流……上手く説明できないが、それを水のように流して動かしているんだ」


 インコは黙って聞いているようだ。俺は上手く話せるか不安だが続ける。


「さっき見せた携帯電話も、電気の力で動くんだ」


「電気? 電流、ふむ。それで……雷は活用しておらんかったのじゃな?」


「雷自体を活用していたって聞いたことないからな。太陽や火、風や水や……まぁそれらで、電気を発電所って場所で生み出していたんだ」

 原子力は……これは話す必要がないだろう。


「フフ、なるほどな。妾もうまく説明できぬが、ある程度は理解できたぞ」

 イン子は何度か頷いている。


「お、なら教えてくれ」


「たわけ。説明できぬと申したぞ」

 ガックリと肩を落とす俺を見て、イン子がニヤリとしている。


「まぁ待て、妾は理屈抜きに(いかづち)を放つのじゃぞ。どうやって体を動かしているのだ? と質問するのと同じこと。説明は出来ぬが……そうじゃの」


「本質的には、御主のいう『電気』と『雷』は同じもの――まぁ親戚みたいなものじゃの。もっと簡単な例えは……」

 イン子はそこで俺をじっと見つめた後、ゆっくりと口を開く。



「御主が『電気』で、妾が『雷』じゃ」


「……う」

 これは……妙に納得しちまった。

 俺が馬鹿なだけかもしれないが、納得してしまったものは仕方ない。 


「俺が電気で、イン子が雷……」


「そうじゃ。雷とは膨大な力。空気中に彷徨う制御の出来ぬ膨大な力と光。それゆえ、人は電気とやらは操れるが、雷は溜めたり利用することができぬのではないか?」


「妾を操ることは不可能なのじゃ。ホホ」

 高笑いしているぞ。実に嬉しそうだ。


「今の話は、あながち間違いではないとは思うが、正解でないかもしれん。わかりやすく噛み砕いて話したまでの事。 詳しいことはわからんからのぅ」


「なんとなくだが、納得出来た。それに俺もイン子も学者じゃないしな」

 そうじゃそうじゃ、と頷くイン子。

 確かに……使えるものは使えるんだから仕方ないよな。


「こまけぇことはいいんだよ!」


混血(はぁふ)のくせに江戸っ子じゃのぅ」


「人や妖怪の類が使う魔力などと一緒にしてはならぬ。霊力は神秘の力の源。ゆめゆめ間違うでないぞ? 随分と話が逸れてしまったが、御主の電の力を、霊力と共に『だいあ』に溜めてみよ」


「む? 霊力だけじゃ駄目なのか?」


「霊力単体を『だいあ』に溜めることは出来ぬ。そこで『だいあ』が雷を通さぬ性質を利用する。霊力と雷の力を混ぜたもの…………仮に『雷力(らいりょく)』と呼ぼう。雷力として一度、閉じ込めれば……逆に出られなくなる」


「霊力と雷の力を混ぜた……『雷力』か」

 イン子にしては、随分短い名前を思いついたもんだ。


「天狗の姿でこの島を出るためにも『雷力』が必要なのじゃ。御主は、一度に発動できる量が少ないが回復が異様に速い。毎日『雷力』を溜めてくれればよい……霊力も雷の力も得られれば……おお、一石二鳥とは正にこの事よのう!」


 イン子が、得意げに高笑いしている。

 鳥と石だけに一石二鳥とか……お洒落なギャグの使い手だったとは!

 高笑いしているイン子を無視して、握っているダイヤの原石に集中する。


「理屈はわかった。そんでどうやんだ? 力を込めんか?」


「理屈でやらんでよい、感じよ。御主の体内にある霊力を感じよ、もう一つの力、雷の力と合わせ……それを石に流し込むのじゃ」


 まずはやってみるか。

 霊力ってのは……多分だが、遠距離攻撃をした時の力だ。


 狙いをつけるには、雷だけでは無理。

 霊力をもって、雷を自在に操る。

 霊力とはそういう力だ。


 自分の中に眠っていた能力……雷と霊力。

 今までなかった膨大で異質な存在を、体の中で認識するのはとても簡単だ。


 この霊力と雷の力……『雷力(らいりょく)』を自分の中でイメージしやすくさせる。俺は『雷力』を体で練りあげる。


「一度込めた力を自分で吸わないことじゃぞ、流すだけ。強く念じよ」


 石に力を流すイメージを持って、集中。

 奥に浸透させ、染み込ませるイメージだ。

 黄色い原石が微妙に輝きはじめる。

 その輝きが石に吸い込まれていき、面白いようにどんどん石に吸い込まれる。


「お、上手く出来てるよな?」


「しっかりと出来ておるが、御主平気か?


 心配そうに俺を見つめるイン子だが、そんな心配するほどの……と思った後に襲ってくる鈍い感覚。……これは疲労感だ。 俺は力を込めるのを一旦止める。


「平気と思ったが、後から疲労感が襲ってきた……が、一瞬だったから今は問題ない」

 俺は感じたままを告げた。


「しかし、一度でこれ程とは……これならば、半年もかからぬぞ」

 黄色に輝くダイヤモンドの原石を見つめながら、イン子が感嘆の声を上げる。


「無理はするでないぞ?」


「ああ。多少、疲労感を感じただけで、もう回復したよ。……それより、これでなんとか、島を脱出する目処がたったな」


「これから数ヶ月の間、くれぐれも頼むぞ」


「おう、まかせときな」


 この島を出るためにも頑張らねばな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ