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エピローグ


「ゲホッ」


 口の中に残る砂を吐き出し、ぼやけて焦点が合わない目をこすろうとするが……すぐに激痛が全身を駆け巡る。

 何だ? それにここは……砂浜……海が見える。


 既視感だ、どこかで見た光景。

 そうだ、初めてこの世界に来た時と同じ……来た時? 俺は……どういう経緯でこの世界に来た?



 ――ドクン。



「…………」


 汗でまとわりつく不快な砂を払い落とそうとするが、それは砂ではなかった。

 火傷で、皮膚の一部が剥がれていた。

 ほんの少しでも体を動かすと、全身に激痛が走る。

 生きているのが不思議な程、全身が酷い火傷だらけ。

 それでも俺は懸命に立ち上がり、島に流れる小川へ、足を引きずりながらもなんとか辿り着いた。


「服を脱がねぇと…………瓢箪?」


 ……誰に貰ったんだっけ? この宝具。

 …………宝具?



 ――ドクン。



「…………」


 まずは腰にある瓢箪を外し、ダメージを負った旅人の服(特)やズボンを脱ぎ捨て……川に入る。


「ぐあああああ!!」


 クソ! 全身がしみる……だが耐えろ。

 今は体の火傷を治す手段が、これしか思い浮かばない。

 だから、だから耐えるしかない!



 歯を食いしばりながら、川に浸かっていると何故か涙が溢れてきた。

 ……痛いからだ。

 そうだ、体が痛いから泣いている。

 そう自分に言い聞かせ、頭に思い浮かんだイン子の表情を振り払う。


 俺は……痛くて泣いているんだ。



 

 ◇◇◆◇◇




 猛烈な朝の日差しで、目が覚める。

 起きて直ぐ背伸びをした後、俺は木に印を刻む。

 木には、いくつかの『正』の文字。

 これは、ここに来てから続けている。

 カレンダーの代わりというのもあるが、勿論それだけではない。

 目の前の林に、『正』が刻まれた木々が無数に並ぶ。



 あの忌まわしい日から、十年以上が経過していた。

 火傷が瘉えるのに、自分が思っていた以上の時間がかかってしまった。

 最初の一年は殆ど動けない状態で、朝から晩まで川で体を冷やす日々。

 目も覆うほどの全身大火傷。

 あの時は何時死んでもおかしくなかった。

 恐らく、あの黒い雷の攻撃は呪いに近いのだろう。

 普通の人間ならば耐えられない攻撃でも、俺の体は霊力が超回復する特異な体。


 ……ま、えらく時間はかかっちまったが、なんとか全身の火傷も癒え、後遺症もなく最近は日々順調だ。


 その黒い雷で負った、火傷痕を見る。


 ……ああ、実に待ち遠しい……一日も早くヤツ(・・)に会いたい。


 毎朝、俺は気持ちを込めて木に線を刻む。

 雷能力を手に入れ、いつの間にか天狗(・・)になっていた俺が……見事にその鼻をへし折られた日。

 あの日から、俺は自戒の念を込めて、木にそれを刻み続けていた。

 ……だが、これも今日で終わりだ。


 これから、俺は俺の望みを叶える。

 ヤツに会うため……あの時の御礼をするためにも、この島を出る。



 海を見ると、ご承知の通り『死の海』と『死の瘴気』が待ち構えている。

 俺はイン子のように飛べない。

 俺は天狗じゃないからな。

 ならばどうする? どうやってこの島を出れば良い?

 暇さえあれば考えていた事だ。



 この十年の間に、俺はこの島にいたイエローダイヤモンドの原石……通称『ダイヤ虫』を全て見つけ、そして狩り尽くした。

 生息数は少なく、十二匹だったが。

 倒した後、周りに付いている羽や足だけでなく、原石も口にした。

 すると驚く事に、ダイヤの原石が飴玉のように口の中で溶けていったのだ。


 ダイヤ虫は、封印の影響で飛散した女天狗の力、イン子の力そのものらしい。

 ヤツが……そう言っていた。


 ダイヤを吸収することで、イン子の力を取り入れる……いや、一時力を貸してもらうことにしている。

 今は俺が吸収してしまったが……いつかイン子に会えた時は、力を返せばいい。

 返す方法はわからないが……それは女天狗様が解決してくれるだろう。


 俺は信じてるんだ。

 あのイン子が死ぬはずはないからな。


 以前は羽や足を食べただけだったが、今は石そのものを体に取り入れている。

 おかげで肉体が凄い事になっている。


 更に強くなるため、島を出る手段を見つけるために数年間、激しい特訓を繰り返した結果……若干、島の形が変わってしまった。


 あの当時の強さのまま、大陸に戻っても仕方ないからな。

 今の俺なら、ヤツに御礼が出来る。

 これは、必ず果たして見せる。

 今の俺の原動力は、イン子と再び会う事……それと……ヤツに会うことだ。


 無人島で十年……俺は今、三十四歳。

 二度目の異世界の旅だ。

 今回は自分の能力を隠さない。

 恐れるものは何もない! 俺の力を、世界中の奴等に見せてやる!


 さあ、そろそろ行くか。

 ……飛べない俺が島を出る方法は一つ。

 恐らく行けるだろう、やってみるか!



「よっしゃ! 待ってろよ、イン子!」



【完】


最後までお読み下さった方々、本当にありがとうございました。

さんだぁバード! ここで一旦、完結となります。

最後まで書き続ける、これは今回の大目標でした。いぇい。

次回作に向けて、何かしら追加の可能性がありますので、ブックマークはそのままだと嬉しいです。

何か決まりましたら、活動報告でお知らせします。

三十四歳になった、カジュウの新たな無双人生……自分でも楽しみです。

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