わたしの日曜日
今日は土曜日。学校に行かなくても良い。だから早起きする必要はない。ずっと寝ていられるから良い。だけど、ちーちゃんが起こしに来ない。来てくれない。それは……ちょっとだけ残念。本当に、ちょっとだけ。だって、電話すれば話はできるし、会おうと思えば、歩いてすぐ行けるし。だから、そんなにさびしいわけじゃない、はず。……たぶん。でももし、ケータイの充電が切れてたり、外に出かけていたりしたら、どうしよう。いや、うーーん。
そんな風に考えながらベッドでゴロゴロしていたら、玄関からチャイムの音が聞こえた。続けてドアが開く音。お母さんが出たらしい。
「あら、ちえちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは」
思わずベッドから飛び起きた。ちーちゃんの声だ! ちーちゃんの方から来てくれた。でもなんで? ちーちゃんがうちに来た理由を考えていると、下(たぶん、玄関)からお母さんから呼ばれた。
「さきー、ちえちゃんが来たわよー」
「はーい!」
とにかく、まずは会いに行こう。パジャマのままだけど、どうでもいい。そのまま玄関に向かう。玄関に着くと、お母さんとちーちゃんがいた。
「おはようちーちゃん!」
「はいおはよう。もう午後だけど」
あらま。ずっと寝ていたらお昼を越していたらしい。まぁそんなことは小さいことだ。そんなことより。
「今日はどしたの?」
「うん、まぁ、そんなことだろうと思ってた」
「?」
「宿題おしえて、って言ったのはあんたでしょう、が!」
「てっ」
二日ぶりのデコピンだった。勢いあまって2、3歩下がるほどだ。
「そう、だっけ?」
「数学が意味不明だからおしえて、って」
「あー」
そういえば、昨日そんなことを言ったような?
「それじゃ、どぞどぞ」
「おじゃましまーす」
「あとで飲み物持っていくわねー」
階段をあがってわたしの部屋へ。部屋に入ると、ちーちゃんはわたしの机の方を向いて言った。
「やっぱ、机の上まで埋め尽くすのは、どうかと思うけど」
わたしの机の上はぬいぐるみであふれている。あふれてかえっている。すきまなく無駄なく置けるように考えて並べているから、それはそれはカワイイことになっている。ふふん。
「カワイイでしょー」
「いっこいっこはカワイイんだけど、ここまでたくさんあると、さすがになー」
わたしの部屋には机の上にとどまらず、そこら中にぬいぐるみがある。全部あわせて、えっと……100こくらい?
「古いの捨てたりとかしないの?」
「とんでもない!」
こんなにカワイイものを捨てるとか、ありえない! 考えたこともない!
「でも、もう置くところないでしょ?」
「ふっふっふ。実は見えないところにもあるんだよ。タンスとか押し入れの中とか」
「うわぁ……」
「あと、隣の部屋にもまだ置けるし」
「……隣の部屋って、物置に使ってるとこ?」
「そうそう」
「…………はぁ」
ちーちゃんが疲れた顔でため息をついた。来たばかりでなんで疲れてるんだろう? こんなにカワイイものにあふれてるのに。
「もう、分かった。ほら、宿題やるよ!」
「えー」
「えーじゃ、ない!」
「たっ」
おでこが痛い。今回のはけっこー強めのやつだった。
それからわたしは、ちーちゃんに教えてもらいながら宿題をした。学校で先生が話していたときには意味不明だったものが、ちーちゃんの声で聞くと、すんなり頭に入ってきた。話す相手の違い? まぁ、だけどやっぱり、下向いて勉強するよりも、顔を上げてちーちゃんの顔を見てる方がいいなー、とは思った。
「? 何見てんの?」
「なんでもなーい」