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レーベ

 レーベは広大なトルテス半島有数の都市国家であり、アルムの故郷も都市国家レーベの勢力圏にある。

 アルムは幼少の頃に一度だけ父親の仕事の関係でレーベに来た事があったが、まだスキルの制御が安定しておらず、あまりの人の多さに大変な目にあった。

 アルムは16歳となり、今では他人の思考を意図的に締め出す事が可能であった。



 (しかしひどい人混みだな。前来た時より多くないか?)



 レーベの入口の門を抜けると、庶民用の市の喧騒がどこまでも続いていた。

 日は沈みかけており、白を基調とした街並みや海岸を覆い尽くす港と船が、夕日を反射して照り輝いていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 確かにアルムが指摘した通り、レーベはここ数年大きな発展を遂げている。それはひとえに魔法技術の進歩によるものである。

 ここで、レーベの歴史や社会の仕組みをかい摘んで説明しておこう。

 太古のレーベは漁港であったと言われているが、しだいに人口を増やし、商業都市に発展する。その後は何度か領域国家に組み込まれるも、自治権だけは固持し続け、現在ではトルテス半島最大の海運国家で、その海軍の規模は北方のカイデール帝国と拮抗するほどである。

 政治形態は特定の君主を持たない寡頭制をとっているが、近年の魔法技術の発展に乗じて市場を独占したメイテル家が政治の殆どを牛耳っている。

 アルムはそのメイテル家に奉公しにテーベまで来たのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 アルムは都市の中心部にある、商館が立ち並ぶ通りに来ていた。すっかり日は落ちていたが、街灯と石畳のおかげで問題なくカゼウマを走らせることが出来た。

 アルムは夜景というものを初めて目にした。背の高い石造りの建物の窓からは明かりが溢れ、馬車が忙しく行き来する。

 眠らない街はアルムの将来への期待を否応なしに刺激し、カゼウマの蹄が石畳を打つ音が心地よかった。



 やがてアルムは並び立つ商館の中でも一際大きな建物の前でカゼウマを止めた。7階はありそうな高さだか、かなり横幅もあるので、まるで城のようであった。

 大きな扉を開いて中に入ると、暖色の(あかり)で満たされた広い受け付けがあり、カウンターの裏では、真剣な目付きで書類に何かを書き込む人、通信用の魔道具に向かって怒鳴り声をあげる人、机を駆け足でまわって何やらのっぴきならぬ顔をしている人など、かなりの数の人が慌ただしく働いていた。

 アルムは顔がにやけそうになるのをおさえ、受け付けの女性に学校からあずかった手紙を渡した。推薦状である。



 5分後、高級そうな身なりの男が階上から降りてきた。




「やあ、君がアルムかい?」


「はい。今日からお世話になります」


「うん、よろしくね。いやあ、爺さんの手紙に書いてあったけど学校が始まって以来の天才なんだってねぇ。これは期待が出来そうだなあ」(16歳にしては嫌に落ち着いている)(本当に優秀なんだろう)


「僕はメイテル商会魔法技術担当次官のヘイム ギルバートという者で、君の直属の上司になります。これからびしばし鍛えていくから、頑張ってついてきてね」(この子は即戦力になりそうだ)




 アルムはギルバートさんの子供をあやす様な喋りに、はあはあと相槌をうちながら心を読んでみたところ、ギルバートさんの思考は大変論理的で整然としていることがわかった。アルムが今までに出会った人間の中で最も仕事が出来そうな人だった。

 アルムはギルバートさんの自分を評価している姿勢に好感を覚えつつ、商会の役員寮に案内してもらった。



「今日はもう遅いから色々な説明は明日やります。ゆっくり休んでね」



 アルムは適当に挨拶をして自室に入った。

 狭いがいい部屋だと思った。

 ベッドに横になると、一日の疲れがどっと出てきた。アルムにとって新しい世界が幕を開けた一日であった。



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