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英雄殺しの英雄譚  作者: セイラム
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真紅の脅威

 燃え盛る炎から現れたのは、一人の女だった。


 年齢はヨミより少し年上といったところ。

 女にしては長身といえる体格をしているようで、ヨミとほとんど同じ目線に立っている。


 その女は、ひたすらに紅かった。

 腰まで伸びた燃えるように紅い長髪。

 宝石のような紅い瞳。

 全身を覆い隠す紅色に染められた服装。

 両手を覆う皮の手袋までもが紅に染まっている。

 紅くないのは、僅かに見える白い肌くらいのものだった。


 端的に言って、異様な存在。

 ヨミはその姿から目が離せない。

 燃える炎に溶け込むような紅い姿は、一度目を放せば消え去ってしまいそうでもあった。


「三人か、思ったより少ないな。おや、そこの二人は見覚えがないな。察するに、他国の人間か」

 独り言のように女が呟く内容が、ヨミの頭には入ってこない。


「ならば生き残りは貴様だけか。世界に名高いイリアス帝国も、とんだ期待外れだな」

 次々と起こる出来事に、脳が追いつかない。


「下がっていろ」

 混乱するヨミたちを押しのけて、男が前へと踏み出した。

 ヨミもカルラも、ただ立ち尽くすことしかできない。


「君たちは早く逃げろ。奴を打ち倒すのは、私の役目だ」

 異能によって作り出した己の背の丈ほどの巨大な両手剣を手に、男は女へと向かい合う。


 その目に宿るのは信念と殺意。

 純粋な排除の意思が、彼の心を燃やしている。


「さて、お前はなんという名だったか」

「フィンだ。イリアス帝国軍団長にして、恐らくは帝国最後の生き残り。この最後の命、貴様の命を奪うためだけに使わせてもらおう!」


 そう叫んで、フィンは女の元へと駆け出した。

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