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英雄殺しの英雄譚  作者: セイラム
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楽観の代償

 世界を救う。

 そう決意したヨミとカルラは、その翌日に国を出て二人で街道を歩いていた。


 目的地は北に存在する『イリアス帝国』。

 少女曰く、そこにヨミとカルラを呼び寄せた原因があるのだという。


「──イリアス帝国。大陸最大の軍事国家であり、国が有する兵力は隣国であるウラノスのおよそ十倍以上。さらにその力を全て自国の防衛に使用した結果、現在は帝国自体が巨大な要塞と化している……か」


 急造で調べ上げた目的地の情報を口にしながら、ヨミは隣へと視線を向ける。

 ヨミの真横には並んで歩くカルラの姿があった。


「さすがに国落としとかは勘弁願いたいんだがなぁ、カルラはどう思う?」

「行けばわかる」

「……ああ、そうだな」



 国を出て半日が経過した。

 太陽はもうすぐ山へ隠れそうなほどに沈み、絶え間なく汗が吹き出す暑さも今では震えそうな寒さと入れ替わっている。

 このままの調子なら明日の昼には目的地へと到着するだろう。


 なんの問題もなく順調に進んでいるのだが、ヨミには早急に解決したい問題があった。


「よし、今日はここらで休むか。俺が見張りをするから、カルラは先に休んでくれ」

 ヨミの言葉にも返事はせず、ただ頷くだけのカルラ。

 近くの木陰に座り込んだヨミは、その横で瞬時に眠りについたカルラを静かに見つめている。


 カルラのことが分からない。

 それがヨミの現状最も解決したい問題だった。


 カルラは自分のことを決して話さない。

 そればかりか、自分から行動を起こすことがない。


 常に受動的。

 もちろん言われればその通りに動くし、頼まれれば引き受ける。

 嫌なことには拒否を示すし、こちらから聞けば自分の意見も口にする。


 だが自分の考えで行動したり、自分から会話をしたり。

 カルラはそういったことをヨミと出会ってから一度たりとも行っていないのだ。


 なにか重大な理由でもあるのだろうとは思うが、簡単に踏み込める領域の話でもなかった。

 自分だって過去を掘り返されるのは絶対に阻止するし拒否するだろうとヨミ自身も思っているからこそ、解決したいと思うだけで先には進めない。


「時間が解決してくれる、といいんだがなぁ」

 いつの間にか暗闇に覆われた空間で、ぼんやりと光を放つ炎を眺めながらヨミはそう呟いた。


 いつかきっとと、そうして問題を後回しにしたツケは当人の想像よりも大きく膨れ上がっている。

 そのことを、この時はまだ誰も知らなかった。

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