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蛇の子孫  作者: 豊永エド
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第三話 〜登校〜

 「行ってきまーす」

 波乱の朝ご飯を終え、歯を洗い、着替えて、俺は久しぶりの登校をしていた。昨日までの、夏休みのぐうたらぁんな生活も終わり、今日から2学期が始まる。

 青空の下、今日は給食はあるのかないのかな〜などと憂鬱にしていると、後ろから大きな声で名前を呼ばれる。


「よおリュウヤ!ひっさしぶりだな!」

「おおケンか!懐かしい………、なかなか焼けたな…」

「そ、そうか?………ん!もしかしてモテるんじゃないか俺!」

「あー、そんなことはないな!うんうん!」

「いいや、俺はモテてみせるね。2学期はリア充満喫かもな!」

「ま、まぁ頑張れよっ。アトコエオサエロ‼」


中川ケン。リュウヤと同じ高校2年生にして、絶大なバカ。まさにバカ。もはや終末のバカである。だけど人一倍真面目で正義感が強く、そのためか優しく元気で、心強い。みんなから好かれるタイプの男子だ。


「それでリュウヤよ!夏休みはどうだったんだ!?」


ケンがきらっきらした眼でリュウヤを見つめる。その目からは、自分の体験を語りたいのがひしひしと伝わる力があった。


「お、俺は至って普通だったけど………ケンは?」


「ん?聞きたいか?(いや別にどっちでもいいぞ!)聞きたいんだな?(うんそれよりチイサナコエデイテクレ‼)しっかたがないなぁ、リュウヤよ、よく聞け!(よっしゃ聞いたる、バリバリ聞いたるでぇ!)実はな…」


 登校するまではずっとケンの夏休みの思い出で話していたが、その話全てが俺の命だと言いたいばかりのケンの圧に、意外と内容は覚えていた。

 話の内容としてはヤクザと闘ったりとか、成敗したりとか、いじめてた子に謝らせたりだとか、なかなか濃い夏休みを過ごしていたらしい。ケンは他のクラスだから、きっと今はクラスの友達にこの話をしているのだろう。

 

 それにしても、


「ヤクザと闘うとか、あいつはドラマの主人公かよ………」


「誰がドラマの主人公なの?」


「うおっ!!び、びびったぁ〜。」


「もう、そんな驚くことないじゃん!」


びっくりして後ろを振り向くと、そこには委員長の牧瀬アカリが立っていた。運動、勉学ともに校内トップクラス、性格も明るく、そして何よりとっても可愛い。どことなくハムスター似の、そんな非の打ち所のない彼女は、まっすぐな目でリュウヤを見ていた。


「あぁ、隣のクラスのケンさ。あいつ夏休みヤクザと喧嘩してボコったらしいのさ。」


すると、驚いたように口元に手を当て、そして胸の前に持っていく。これが学校の可愛さの集大成か……。やるじゃないか……。


「え!…す、凄いね、ケン君。私ぜったいそんなことできないから、憧れるなぁ…。」


一部では天使とも呼ばれているらしい彼女でも、憧れさせるとは…。さすがはケンである。今度は俺も倒すかなぁ…なんて希望を抱いていると、久しぶりにチャイムが鳴った。



 クラスのみんなが席についてからまもなく、担任の鬼瓦先生が教室に入ってきた。出席をとってから、顔を上げて前を向くように言う。どうせいつもの、夏休み振り返り記録〜!みたいなものを書かされると思っていたが、どうやら違うらしい。


「今日は転校生が来るんだ。」


 その一言で、教室全体が興奮状態になってしまう。やはり転校生というのは何か特別な力が働いているのだろう。全員気になって仕方がない様子だ。


 鬼瓦先生の「入れ」の一言と連動したようにドアが開き、一人の少女が入ってくる。








綺麗だった。


可愛いとはまた別の、美しいとか、そんな次元のように感じた。

見た目は子供っぽいのに、どこか大人っぽい雰囲気が伝わってくる。


背は中の下くらいだろうか。綺麗に整った黒い髪をストレートにおろしている。眼はうっすらと紅い。肌は真っ白で、痩せていて、でも華奢にも見えない。


「滝沢あずきといいます。これからよろしくお願いします。」



透き通った声の挨拶は、体の中を水のように流れていく。

ニコッと笑った顔は、本当に綺麗で美しく、落ち着いていた。


一瞬で、心を射抜かれた気分だった。







転校生というのは本当に怖ろしいものだとつくづく思う。


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