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終わったならまた始めればいいじゃないか-推敲Ver-  作者: 朝倉新五郎
第一章 騎士
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6話 リーインカーネイション

 「ガースよ、今は何層目になる?」クリューズが訊くと

 「あの大広間から数えて7層目に当たります、そろそろ強力な敵が現れそうですね。恐らく地下部分に入ったところでしょう。」ガースは答えた。


 一同が出た広間は最初の数倍は有るだろうか。


 早速ガースが重装兵と弓兵、魔法士を数人連れて広間の四方を図りだした。


 帰ってくるとガースは伯爵に

 「やはり80メルト四方です、地下部分と考えて間違いないでしょう。」

 と報告した。


 伯爵は

 「地下か、皆気を引き締めてかかるぞ。負けはせんだろうがな」と言った。


 ダンジョンに入って既に3時間程度が過ぎていた。

 かなり遅いペースで慎重に進んでいるので仕方のないことなのだが。


 クリューズが1部隊を連れて足跡を探していた。すると

 「閣下、キャンプらしき跡がありました。火をおこしています」そう報告してきた。


 オサムが見渡すと、上り階段が2つと下り階段が3つ見えた。


 「降りる階段のすぐ近くです。おそらくはそれを降りていったかと」

 クリューズが伯爵に言った


 「ではそれを降りるか」伯爵が決めた。

 「だが、通常のダンジョンよりもかなり深いな。手強い敵を覚悟せねば」


 更に3層、かなり入り組んだ迷宮になっていた。

 出現するモンスターは徐々に強力になっている。

 主にスケルトンだが、スケルトンナイトや更に上位のスケルトンアーチャー等が出て来る。

 他にもグールやスケルトンジャイアントなどの雑魚とは言い難いモンスターも1階層降りる毎に出現する。


 さらなる問題は完全な迷宮に入ったことである。

 進んでいくと同じ場所に出ることが多くなってきたのだ。


 前衛が後衛の最後尾に出てくることも多くなり、気をつけねば同士討ちの危険がある。

 前衛は入れ替わりながら戦っているため疲労している様子はない。

 もちろん伯爵の護衛隊と後衛もほぼ歩いているだけである。

 

 更に迷いながら4層を降りるとまた広間に出た。


 その時である。

 「何かいるぞ!戦闘隊形!魔法士は全領域を照らせ!エターナルライトだ!」

 前衛隊長らしき屈強そうな騎士が巨大な斧を構えた。


 「スケルトン達が数種類20体以上、グールもいるぞ!あれは・・・リッチーとレイスだ!エナジードレインに気をつけろ!神聖魔法士、リッチーとレイスを集中攻撃!閣下に近づけるな!」

 と言った瞬間周囲で何やら詩のようなものが唱えられ光の球体や稲妻のような物がモンスター目掛けて飛んでいった。


 『すげぇすげぇすげぇすげぇ!本物のモンスターだ!』オサムはワクワクしてしまった。


 「神聖魔法連続攻撃、他は前衛が引き受ける!」

 部屋中にフラッシュが光ったかのように明滅した。


 「よし、リッチーとレイス殲滅確認、スケルトンとグールを片付けろ!」

 前衛の隊長はかなりの手練のように思えた。


 時間にして1分も無かったが、オサムにとっては長く感じられた。


 クリューズは

 「ここでレイスとリッチーが同時に出るとなると、これより下層はかなり危険です。急ぎましょう」

 緑や青、赤に光る石を集めながら

 「ガース、この広間の広さは?」クリューズが言うと

 「東西が120メルト、南北は70メルト、北側に部屋らしきものが並んでいます」

 相変わらず正確にマッピングしていた。

 

 「閣下、恐らくレイン様はここで襲われたのではないでしょうか?荷物が見当たりませんので乗り切ったと考えられますが」

 クリューズの言葉に「そうかも知れぬな、流石に今のモンスターは数が多かった。倒しきれずに降りたな?」と答えた。


 前衛の斥候が

 「閣下、この部屋にポーチが落ちています。下に降りる階段があります」と告げてきた。


 「そうか、ではその階段を下ろう」伯爵が答えると

 前衛隊長を筆頭にゆっくりと全隊が降りていった。


 今回の階段はかなり長い。たっぷりと3層分は有るのではないだろうか。


 「マズいですね、最下層に出るかもしれません」クリューズが言うと

 「この人数ならスケルトンドラゴンでも問題無い」ロレーヌが口を挟んだ。


 オサムはまだ知らないが、この世界で最強の生物はドラゴン族である。

 通常種から上位種までが存在するが、その中でもこの世界が出来ると同時に現れた5体のドラゴンは神と同等の力を持つという。

 普通のドラゴンであっても騎士と魔道士10人以上でやっと倒せると言う程度の強さはある。

 そのドラゴンの死霊体であるスケルトンドラゴンとなるとかなり厄介な相手だ。


 『ダンジョンボスが出るのか?スケルトンドラゴンとか言ってたな』オサムは口を閉じて気を引き締めた。

 階段の先を見るとかなり明るくなっている。


 前衛から斥候が伯爵に走り寄ってきた

 「レイン様発見しました!レイン様含め3名が負傷しています!」


 全隊が降りきると、そこは最初の部屋程度の広さだった。

 魔法ではなく部屋自体が明るい。


 「まだ最下層ではないな、周囲の安全を確保せよ!」クリューズが叫んだ。

 「治癒魔法士!全員で治療せよ!」クリューズが指示をすると、数人がぐったりとしている騎士らしき者に近づき一斉に治癒魔法を発した。


 「閣下!」と無事らしき魔法士と騎士が駆け寄ってきた。

 「申し訳ありません閣下、この上層でリッチーとレイスに襲われ治癒魔法士が負傷してしまい、レイン様とトマフが殿を務めこのような事態になり動けなくなってしまいました」騎士らしき者が言うと


 「良い、ご苦労であった。この部隊であれば帰りも楽であろう」伯爵が言うと

 「トラウド、一生の不覚です。レイン様に殿を務めてもらうなど・・・」


 「良いと申しておろう、お主達は生きて居った、それで良い」伯爵が安堵している様子だった。

 「はっ!」とトラウドと言う騎士が膝をつき、頭を下げた。よく見ると甲冑が傷だらけになっている、相当激しい戦闘だったのが見て取れた。


 『こんな強そうな人達でも無理って、あぶねーダンジョンだなここ』オサムは思った。

 「ある程度治癒が出来ればこのダンジョンを出る。調査は危険なため今後ということに」クリューズが言った。


 相当深くまで来たので帰りも時間がかかるだろうことはわかっていた。しかし考えていたより早く見つけられたのは幸いだ。

 「未踏のダンジョン故に足跡が残りやすかったのが捜索を楽にしたな」クリューズが安堵しているようだった。



 帰りは早かった。伯爵の弟を見つけた階層の真上が気になるが、やはり人数で押し通せるだろう。


 「すみません、クリューズ様。これで今回の任務は完了ということでしょうか?」

 オサムが尋ねると

 「クリューズ様はよして下さい、クリューズ家よりエリトール家の方が家格は上ですよ。伯爵様に連なる家柄です。それはともかく、今回は目的が達成されましたので一旦城に帰ります」


 『え!?え!?なんですとぉ!?伯爵家の分家?もうわけわかんねぇし・・・』

 オサムに与えられた物の大きさを知ったような気がした。

 「そんな大事な家を俺が継ぐんですか・・・」申し訳なさそうにオサムが言うと

 クリューズが

 「閣下が決められたことです、我々はそれを受け入れるのみです」と答えた。


 『やれやれ、もしかして舞踏会とかに出ないとイケナイとかか?やだなぁ』オサムは急に緊張した。

 『元の世界じゃ考えられねーよなあ』


 順調に登っていくと、激闘があった広間は静まり返っていた。


 その次の層もまたその次の層も、順調に何事もなく通り過ぎることが出来た。

 ガースのマッピングのお陰でスムーズに登り階段が見つかるので非常に楽だ。


 そろそろ残り5層というところになってスケルトンが現れたらしい。

 徘徊かリジェネレートだな、どうということはないだろう。オサムは考えて居ると

 あっさりと前衛が片付けてくれた。


 あの広間の戦闘を見れば安心出来て当たり前である。


 前衛が階段を登りきり、伯爵の護衛団が階段を登ったときにそれは起きた。



 オサムの斜め前、伯爵の真正面の空間が揺れてスケルトンが現れた。

 クリューぜとロレーヌが同時に「リジェネレートか!」と叫んで動いたときには遅かった。


 そのスケルトンは伯爵目掛けて弓を引き、矢を放った。

 スケルトンの中でも上位種に入るスケルトンアーチャーだ、高レベル騎士でなければ危険な相手である。


 オサムの反射神経が勝手に動き、矢と伯爵の間に入り込んだ瞬間

 その矢がオサムの左胸を貫いた。



 『あれ?』とオサムは思った『これって死ぬパターン?だよね?』

 オサムはその場に倒れ込んだ。


 薄れてゆく意識の中でクリューぜとロレーヌがそのスケルトンを叩き切っていた。

 『伯爵は?』と後ろを見ると無事だった『良かった・・・』と考えつつ意識を失った。



 しばらくしてオサムは起きた。柔らかいベッドの上で周りを見渡すと見覚えのある部屋だった。


 『ここって・・・えーと・・・』ガバッと起きて「俺の部屋だ!」と驚いた。

 「何なんだ?何が起こった?」まず矢が刺さったはずの胸を確認したが、傷はない。


 「服は、これ、あれ?」と時計を見ると、あの事故の1ヶ月前だった。


 「異世界に行った上にタイムスリップかよ~勘弁してくれ・・・俺こんな世界に用はないんだよなぁ、あっちのほうが性に合ってる。

 戻る方法って有るのかなぁ?またあの飛行機に乗るか」


 秋葉オサムは軽い男だった。


 『しかし、考えてみればあと1ヶ月有るんだったな、賭けになるけど向こうの世界で使える道具を買い集めるか』

 オサムは早速貯金を全部下ろし、いろんな道具を買い集めることにした。


 まずは防刃グッズだな、着たまま飛行機に乗れる。武器はダメだ、コンパスと双眼鏡も買っておこう。

 他には?着火装置か、ライターやマッチはダメだろう。マグネシウムのファイアスターターが良い、いくつか買って置くことにした。

 筆記用具も必要だな、ノートやメモ用紙、鉛筆はかなり要る、羊皮紙は恐らく高価だろう。

 ボールペンそれに万年筆を何本かにしよう。


 サバイバル?だよな、えーと・・・ソーラーパネルと充電池を多め、フラッシュライトくらいしか無理か?

 そうだ!本を買おう、出来るだけ実用的な、サバイバルの本と医学書だな。料理の本も必要か。


 オサムはたっぷりとある準備期間を買い物に費やした。


 飛行機の機内に持って入れた上で向こうの世界で必要となりそうなもの。

 後はこちらでは安いが向こうでは手に入らないであろう物。

 オサムは全財産をあちら側の世界で使えそうな物に費やすことにした。

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