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終わったならまた始めればいいじゃないか-推敲Ver-  作者: 朝倉新五郎
第二章 国王と神
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8話 最強国家

 グレイス王国建国初期から、オサムの子爵時代の従者5名をクイード達が鍛えていた。

 ロードナイトにするためだ。


 通常インペリアルセイヴァーに成れるものなど居ない。

 ロードナイトですら通常の騎士では無理である。

 クイード達はオサムの装備を使い、オサムに鍛えられたため成れたに過ぎない。

 3人はそれを理解しており、自分達の使っていた装備や、新たにビーツが作った装備を与えていた。


 本来クイードやハンビィ、タキトスがオサムの直属の従者を鍛える必要はないのだが、

 必要に迫られてロードナイトを目指させていた。そしてその先も。


 クラウド・トールセン

 アンカール・デルモア

 ギルビィ・スマイス

 レオン・グラハム

 ジン・レトワーズ

 この5人はオサムの事は当然、タキトス、クイード、ハンビィの強さに憧れていた。

 伝説の黒騎士の家臣として忠誠心もクイード達に劣らず非常に高い。

 しかも国家騎士団最高戦力である黒狼騎士団を束ねる者達でもある。

 他の者の甲冑や楯には団章が浮彫りされているが、この5名の甲冑はオサムが以前使っていたものが多いため装飾はなく形も違う。


 3人が付いて行けない時は5人でメラススの塔の浅い階層で鍛錬を積んでいた。

 一度だけオサムがクイード達と5人を連れてメラススの塔の最下層まで連れて行った事があった。


 戦いはオサムだけで行い、クイード達は5人の守りに徹していた。

 「分かるか、俺達やお前達が憧れる陛下の強さが。」

 ハンビィに言われても瞬きもせずオサムの戦いを見ていた。


 そしてもはや強さの証であるとも言える漆黒の黒騎士装備を与えられ5人は王国の騎士として戦い続けた。


 建国2年が過ぎ、クイード達の儀式の時にはもうすぐ騎士レベル99というところまでになっていた。

 更に戦い続け、5人はロレーヌの懐妊がわかった頃にはロードナイトとなっていた。

 しかし、それで褒めてもらえるほどグレイス王国の騎士は甘くない。


 自由になる日を殆ど戦いに費やし、アレシャルの塔まで遠征しロードナイトのレベルを上げていった。

 かなり強くなったと感じてもクイード達には遠く及ばない。

 5人はタキトスやハンビィ、クイードにリジェネリターンの魔石を3個ずつ貰っていた。

 「しかし、死ぬような戦い方は許さんぞ、グレイスの騎士は常勝であらねばならん」

 と言われていたので無理はしなかった。



 そして、ついに「その時」がやって来た。


 5人はクイード達に連れられ、オサムの前に姿を見せた。

 「陛下、こいつらもやり遂げました」とタキトスが言うと。

 オサムは5人をじっと見て「ロードナイトの99か、よく頑張ったな」

 と、一人ずつオサムが直接褒めていった。


 5人は緊張していたが、やっと自分達が王国の騎士と成れたと感じていた。

 「では、俺が直接儀式に着いて行こう、クイード達も来い」とオサムは言って換金所へ連れて行った。


 「神々の声を聞いてこい」と一人ずつ儀式を行わせた。

 最後の一人が部屋から出てくると「よくぞここまで鍛錬した。お前達に王国伯爵位を与える」オサムは言い

 「それと、クイード、タキトス、ハンビィ。お前達は帝国から公爵の領地を与える」

 帝国と王国という言葉の違いにクラウド達は不思議な顔をしたが、そのうち教えれば良い。

 「では、戻るぞ」と言い9人は城や屋敷に戻っていった。


 翌週、大広間で8人に爵位を与える儀式が行われた。

 そして城の敷地に新たに伯爵の屋敷が2つ、公爵の屋敷が3つ作られた。

 元々広い王都の丘は王都拡張時に合わせて広げられた敷地は8つの大きな屋敷にも十分な広さを持つ。


 新たなインペリアルセイヴァーの誕生。しかもグレイス王国で5人

 その知らせは各国に伝わった。

 もはやグレイス王国に刃向かえる国は皆無だった。


 オサムは最強の騎士8人を従える最高位の聖騎士となった。


 「アレシャルの塔に行ってグレートドラゴンの呼び笛を取って来い」

 5人はクイードにそう言われ、更に戦い続けた。

 そしてインペリアルセイヴァーのレベル20を超える騎士となっていた。



 「もうカオスキーパーが来ようと恐れることはなくなったな。9箇所で発生しても全て排除できる」

 オサムはクイード、タキトス、ハンビィに言った。

 「そうですね、我々が不在でも安心出来ます」ハンビィが答えた。

 

 「しかし、ここからが大陸の平和を作り出す本番だ、気を抜かずにやっていくぞ」

 オサムは頭の中に描いていた地図が着実に出来上がる事を予期していた。



 オサムはクイード、タキトス、ハンビィに加えクラウド、アンカール、ギルビィ、レオン、ジンを呼んだ。

 執務室なので少し手狭になるが、机と椅子が用意された。


 まず最初にオサムが

 「この世界から戦を無くすにはどうすれば良いと思う?」と尋ねた。


 クイードは

 「以前、陛下が言われていた、大帝国を作り国境を無くすことでしょうか?」

 オサムは

 「他に方法は無いか?大帝国になれば戦が無くなると思うか?」と更に尋ねた


 「例えば、このグレイス王国でお前達8人が一斉に反乱を起こすとどうなる?俺一人で鎮圧は出来るが甚大な被害が出るだろう」

 オサムは1つの可能性を示しただけだったが


 「我々が反乱など起こすことはありませぬ、この命既に陛下に捧げております!」

 タキトスがそう言い

 「例え妻子を殺されようと、私は陛下のなさること全てを受け入れます」

 ハンビィも言った。

 「大恩ある陛下に対しそのようなこと考えることも出来ません」

 クラウドも言った。

 「この命を差し出せを言われれば私は喜んで差し出しましょう」

 レオンも言った。

 そしてそれに激しく全員が頷いていた。


 「いや、そうではなく俺が言いたいのは、例えこの大陸を統一しようと戦は無くならないということだ」

 オサムは予想以上の反応に驚いていた。


 「皆の気持ちはありがたく思う。」

 一旦話を元に戻そうとした。


 「クラウド達は知らぬかも知れぬが、俺はこのグレイス王国以外にもグリーシアの東側に広大な領土を持つ」

 「東の帝国シャングールをグレイス帝国とし、砂漠のオアシス都市群、その北の森林地帯全てを持っている」

 「これはグリーシア帝国の10倍以上の領土となるであろう」

 オサムが言うと


 「そんなにですか?」とクイードですら驚いた。


 「うむ、誇張はしていない。その領土の殆どに今のところ価値は無いがな」

 オサムは慎重に話した。


 「しかし今開発を進めているので、将来莫大な富を生み出すことになる」

 「大規模な鉄鉱石の産地や石炭の産地も見つけて掘らせている。他にも様々な資源がある」

 と言うと

 「それで開発を進めていたのですか」とタキトスが言った。


 「その通り、我が国は大陸のどの国家に対しても比類の無い規模を誇る。

 「そして、王国や帝国はともかく大陸中にある俺やクイード達3人の領地も安全だ」


 まだ全てではないが、分かるであろうことをオサムは説明した。

 旧シャングールの改革、北方の平原から森林地帯の開発、帝国西部を大穀倉地帯に変えていること。

 領土内全てに道路を通し街や村を全て繋いでいること。税はかなり抑えていること。他にも様々な計画を話した。


 

 オサムは続けて、

 「大陸の東側の領土はほぼ戦も内乱も起きぬだろう。問題はこのグレイス王国の周辺だ。このままでは収まらぬ」


 クイードが

 「何か手はあるのでしょうか?」とオサムに問うた。


 オサムは

 「国境を固定しようかと考えているが。以前グリーシア帝国と約束を交わしてきた」

 「しかし、我が国だから出来たことで、他の国には出来まい」

 「大きな戦は無いだろうが各地で小競り合いが続いている」

 「この原因は主に2つ、王位継承権の争奪と資源の採れる領土の奪い合いだ」


 そしてオサムは

 「当分放って置こうと考えている。勝手にやらせておく」

 「資源に関しても、我が国の膨大な石炭や鉄を放出しても変わらんだろうし、それはしない」


 「それでは戦が無くならぬのでは?」ハンビィが言うと。


 「戦の虚しさをいずれ知るようになると考えている。手本は我が国だ」

 オサムが語った。

 「民の事を考えぬ国はいずれ滅びる」

 「クイード、タキトス、ハンビィ、お前達が各国に持つ領地の税はいくらだ?」


 クイードは

 「我等全て2割としております」と答えた。

 オサムは

 「では蓄えは?」と訊くと

 「大まかに言うと5年分はあります、穀物も」タキトスが答えた。


 オサムは

 「民や兵が反乱を起こすと思うか?戦に巻き込まれず税は低く、治安は良い。蓄えもあるので飢えることはない」


 「反乱どころか領地外から貧しい者達が今でもやって来ますね。かなりの数をこの本国へ移住させましたが」

 ハンビィがオサムの真意に気付いたかのように言う。

 「そう言われれば、グレイス王国も今そういう状態にあります」とハンビィは続けた。

 グレイス王国へも移住希望者が殺到していた。主に西方諸国からだが戦乱から逃げてきているようだった。


 オサムは

 「これを他国が倣えば戦に割く人も財も不要となる。目指すのはそこだ」

 「我が国土は広くなった。グレイス本国で受け入れられない者は東方のグレイス帝国で受け入れることも可能だ。労働力はまだまだ欲しい」

 「これが続けば優良な民が各国国内から居なくなってしまうだろうな」

 とりあえずだが、と考えてそう言った。


 「つまり、今のところは他国には何もせず東側を固める。そういうことですか?」

 ハンビィが結論を述べたので


 「よくわかったな、あと5年は様子を見る」

 と言ってオサムは会議を終わらせた。

 そして

 「皆意見は有るか?」と訊いたが


 誰も何も言わずその代わりに

 「陛下の深慮遠謀、先を読む力にはかないません」

 とクイーズが皆を代表して言った。


 9人ものインペリアルセイヴァーが考えを1つにすればそれは世界の意志に匹敵する。

 オサムのこの会議はそれを確認するためであった。


 意図せずに8人の忠誠心を知ることが出来たのは幸いだったが。


 そして

 「これは命令ではないがヴァレスの革を可能な限り集めたい、協力してもらえると助かる」

 オサムがそう言うと

 「ヴァレスの革など造作もありませぬ、我等8人で取り尽くして見せましょう」

 クイードがそう言って

 「ではまず私から、順に」

 オサムはそれを聞いて

 「ありがたく思う」と言って会議を終わらせた。



 「リムル、俺は本当に幸せな国王だと思う。皆が俺を好いてくれている」

 自室の居間でリムルにポツリと呟いた。


 「私は知っていましたよ、陛下」とリムルは笑った。


 「グレイス帝国のロウは俺を神か何かと考えているみたいだし」

 オサムは以前の世界での自分と比べて自分自身何ら変わらないと考えていたが、自分を見る目の変化に気がついた。


 「陛下、また難しい顔をなさってますよ」

 リムルに言われ

 「そうか、少し考えてたんだ」と深く考えないようにした。


 適当で怠惰な部分は変わっていない。リムルやロレーヌに甘えるところも。

 それでも良いのならそれでいいとオサムは思った。



 オサムはもう一度グリーシア帝国に飛んだ。

 互いに交わした国境の事項を完全に締結するためだ。


 東側のグレイス帝国はロウが尽力し、ほぼ固まりつつ有る。

 やはり国を憂いていただけあり、その手腕と清廉潔白な性格も国を任せるに値する人物だった。

 

 広大な領土に有る都市全てを舗装した道路で繋ぎ合わせた。

 その結果交易がより盛んになり、確認の意味を込めてグリーシア皇帝と話を付ける。

 そのつもりだった。


 オサムは皇帝の部屋に直接通された。

 「グレイス皇帝陛下、ようこそ。東側は安定しておりますな、南方は国が乱立しておりますが、

  旧シャングールから我が帝国まで交易商が安全に往来出来るようになりました」

 グリーシア皇帝は謝意を述べた。

 「しかし我が国との国境近くにある城塞都市は巨大らしいですな、各国の王都に匹敵するとか」

 オサムはその真意をごまかすこと無く

 「我が帝国の最終泊地、つまり多くの交易商人が集まる場所であるためです。ある程度の広さが必要だと考えてのことです」

 グリーシア皇帝は笑って

 「グレイス皇帝陛下は全く規模の違う考え方をなされますな。ある程度の広さがあの広さとは」

 「とは言え、そこから我が領土まで半日、交易は活発になっております」


 「それは何よりです、グリーシア皇帝陛下。安全な交易こそ国家の土台となりますゆえ」

 オサムは答えて

 「本日うかがった理由は以前皇帝陛下と交わした約定の件ですが」

 本題に斬り込んだ。


 「互いの国境保持の件ですな?我が帝国はグレイス王国及びグレイス帝国には一切手出ししませぬ。と、申しましても、貴国に手出しすれば我が帝国は1週間も保ちますまい?」

 「9人のインペリアルセイヴァー、その気になれば1日で我が国土を粉砕出来ましょう」

 グリーシア皇帝にはわかっていた。今の帝国はグレイス皇帝の気分次第で消滅することを。


 オサムは

 「私はそのようなこと考えたこともありませぬ。今後も貴国の繁栄を祈って居ります」

 飾らない気持ちを言葉にした。


 グリーシア皇帝も

 「皇帝陛下のお陰で国境の軍を大分縮小出来、争いごとも殆ど無くなりましたしな、

  軍事に掛ける財を他の事に回せるようになり、民も幸せに暮らしております」

 と、率直に答えた。


 「民を幸福にすることこそが王や皇帝としての務めと私も考えております。グリーシア帝国に何か異変が起きればまた私か他の者が駆けつけますのでご安心を」

 オサムはグランチューナーの役目も忘れてはいなかった。


 「感謝します、グレイス皇帝陛下」

 オサムとグリーシア皇帝は握手で互いの尊敬を確認した。

 そして正式に条文を交わし、相互不可侵条約と同盟の条約を完全に締結した。


 「少しの時間でしたが、有意義な話ができました。ありがとうございます、皇帝陛下」

 オサムはそう言い残して帰っていった。


 その頃、クイード達によって大量のヴァレスの革が集まってきていた。

 バッグ数万個は作れるであろう量だが、まだオサムが考えている数には届いていない。

 自分でも地図を持って大陸各地のヴァレスを狩っていた。



 忙しくはないが、暇でも無い時間が過ぎていった。


 数度モンスターの大群がカオスキーパーにより発生したが、

 クイード達ではなくクラウドやアンカール、ギルビィ、レオン、ジン達で片付けさせた。

 オサムは空から戦いの様子を眺めていただけだったが、もう十分に任せられると判断した。



 大きな変化が有ったのはグレイス王国であった。

 グリオン王国とエスカニア王国が使者を送って来たのである。


 内容は、グレイス帝国への編入属国化についてであった。


 オサムは直接グリオンとエスカニアに飛び、王に確かめた。

 エスカニアの東側はグレイス帝国領の北と接し、西と南はグリーシアとグリオンに接している。

 一方グリオンはグレイス、エスカニア、ライツェン、レギオーラ、グリーシアと接している。


 グレイス帝国とグリーシア帝国が同盟条約を締結させたことを知ったのだろう。

 帝国への編入を打診してきた。


 これはオサムにとっては喜ばしいことで、東のグレイス帝国と本国のグレイス王国が完全に繋がることを意味する。


 それぞれの王と数日掛けて話を行い、真意を問いただし、純粋に内政に集中したいとの答えを得た。

 オサムには断る理由は一切無いので、グリオンとエスカニアを併合し、属国とした。


 ただし、オサムの方からの提案で内政には一切干渉せず、大使館を両国王都に置いただけである。

 そして両国王の許可を取り付けグリオンとエスカニアに道路網を張り巡らせた。


 この事業にはやはり多額の予算を必要としたが全てグレイスの負担として多くの者達に職を与える事になった。

 元々戦争に消極的になっていたグリオン王国やエスカニア王国は国内も整っていたが、今回の大整備で更に近代化した。

 また、グレイスの莫大な資金力を背景に両国は潤い、職にあぶれるものは居なくなっていた。この結果国内が安定した。



 ここに来てグレイス王国は東から西に繋がったので西側の国々に対してもグレイス帝国と公表した。


 各国はその国土の広大さに驚いたが、皇帝であるオサム自身が戦を望まぬ事を知っていたので混乱は無かった。

 もしオサム以外であったなら各国は恐怖していただろう。旧シャングールや北方遊牧民族を束ね、更にエスカニアとグリオンも手に入れている。

 総兵力は500万に登るだろう。そしてそれを効果的に使えるだけの財力や穀物も持っている。

 しかしそうではなかった。むしろこの事態を喜んでいるようだった。


 グリーシア帝国が西側から切り離された形になったが、商人や一般人等の往来自由は保証してあるので問題は無い。

 より安全が確保され、交易はますます盛んとなった。


 そしてグリーシア帝国も北方を気にせず南東方面だけに集中出来るようになったため、軍事費をより抑えられた。

 

 オサムは、エスカニアとグリオンに持つ領地に更に穀物を蓄えさせた。

 万が一に備えてのことだが、エスカニア南方、グリーシアと接する帝国領土は大穀倉地帯となっており、東の端の旧シャングールも豊かな土地である。

 帝国内で穀物は有り余っていた。



 大仕事をやり終えた時にはヴァレスの革はもう十分な量に達していた。

 8人の働きは素晴らしく、考えていた以上の革が蓄えられていた。


 オサムは8人を執務室に呼んだ。

 「ご苦労だった。あれだけの量を集めるのは大変だっただろう?」

 と訊いたが、8人は

 「程よい運動になりました。他に必要なものがあるならまた取ってきます」

 以前のオサムのように簡単に答えた。


 「そうだな、連絡網を整備したいのでペガサスやグリフォンの呼び笛が欲しいな、また300程。黒狼騎士全員に持たせたい」

 「他は今のところは無いな、新しくグリオンとエスカニアのダンジョンを調査してくれると助かるが」

 「他のモンスターの呼び笛が手に入るかもしれん、しかし命令あるまで各自自由に過ごすように」

 とだけ伝えた。


 クイードたちは新しいダンジョンを調査してスレイプニルの呼び笛を手に入れたのでとりあえず10個程入手した。

 その後はペガサスやグリフォンを狩り、しばらくのんびりと過ごしていたがやはりメラススの塔で競争を続けるようだった。


 オサムはリムルやロレーヌ、スウェン、ミシュルと穏やかな日々を楽しんでいた。

 ロレーヌはグリフォンやペガサスに乗れるので海辺や山等に5人で出かけたりもした。


 オサムはクライアンに詳細を説明して膨大な量のヴァレスの革を渡した。

 ビーツにも次々と新しいデザインの甲冑や剣、斧を作らせた。


 オサムがデザインした装備は門外不出とし、使用しない物は全て城の倉庫にあるマジックボックスで厳重に封印した。

 これはあまりにも強力なため、悪用されないようにだ。


 ビーツにもオサムかクイード達3人以外からの発注は受けさせないようにしていた。

 そして今までに渡した不要なデザイン画を全て回収した。


 同じようにクライアンにもオサムが注文した特殊な物は全て城に納めさせ、他には売ることの無いよう命じていた。

 代わりに2人に領地を持たない形式上の相続の出来ない帝国騎士位を授け、事実上の家臣とした。



 数ヶ月もするとクイードがやって来て、集めた呼び笛を全て差し出した。

 「流石に早いな、お前達ばかりに苦労をかけて申し訳ないと思っている」

 オサムが笛の山を見ながら言うと。

 「陛下がお望みなのであれば我々は出来る限りのことを致します。それが務めです」

 クイードは

 「見たことのないボスモンスターは多いですがグレートドラゴンほどではありません、腕慣らしにもなりません」

 と言って笑った。

 

 オサムは

 「そうか、しかし無理はしなくて良いぞ?」と言って笛を受け取った。



 オサムはオサムで数日アレシャルやメラススの塔に通っては朝に帰ってくる。

 8人も同じようにしていたので国庫の金額が銀貨200億枚に達しようとしていた。


 オサムはその豊富な資金を使い、帝国全土を開発していった。

 既に巨大炭鉱が20以上、鉄鉱石の大産地も10程見つけ、掘らせていた。

 当初予定していた数千万トンの鉄のインゴットはヴァレスの革を内張りしたコンテナに全て収納していた。

 同じく石炭や鉄鉱石も巨大なマジックバッグやマジックボックス数百に入れて城の外に作った巨大な倉庫に保管していた。


 全ての都市に帝国直属の黒狼騎士を置き、ペガサスやグリフォンを与えていたが偵察以外に使われることは無かった。

 オサムは帝都を西側に置き、副都を東とした。

 月に1回副都から使者がやって来てロウの手紙を送ってくる。

 西と東の書記官と翻訳官が辞書を作ってオサムにも読めるようにしているが、

 重要なことはロウが直接来るか、オサムが行くかして数ヶ月に一度様子を確かめた。


 東側の城塞都市群は拡張され、新規にも作られた。各都市は城を中心に整備させ直した。

 分厚く頑丈な壁とレアアイテムで強化された鋼鉄の門により10万の軍隊でも落とすのは不可能になった。

 各都市にはそれぞれ5年分の穀物が備蓄され、帝都と同様のシステムが導入されている。

 砂漠の夜にも街灯が明るく照らし、陸地の灯台の様になっていた。



 オサムは東から納められてくる資源を相当量蓄えていたが、鉄に関しては作り続けさせ、

 工場も拡張に次ぐ拡張を行い年間生産量5千万トンまで引き上げた。


 帝都は更に広げられ、城壁は3重となり、この城壁と城壁の間の数キロにも人が住めるようにした。

 結果的に3000万人が暮らせる程の規模になり、城やその敷地も更に大きく広げている。

 運河や水路、道路や橋は今まで以上に整備され、さながら古代ローマの様相を呈していた。

 

 計画の第一歩として鉄筋コンクリートや鉄骨の建物を少数作らせた。

 これは王都の最外周があまりにも広く、効率的に建築物を建てるためだ。

 広大な帝国の資材を使えば良いのだが、オサムは敢えて出来るだけ他国との交易で資材を入手した。

 これはグレイスのコインを大陸通貨にするための計画の一部だった。

 頑強な城の敷地や城塞の門に次々と巨大建造物を建てていった。


 金や銀、プラチナや銅等の鉱山も開発し、帝都には無尽蔵かと思われる程の資源が流入している。

 マジックバッグやマジックボックスがあるため問題はないが、世界の資源の9割以上を保有していた。

 オサムには興味がなかったが宝石等も大量に集まってくる。


 文化面ではオサムの世界の近世に近づいていた。

 しかし一方で軍の制度は殆ど変えず、国家直属の騎士やクイード達の騎士はそのままに強さを増している。


 帝国の騎士は30万騎を超え、クイード、タキトス、ハンビィも2000名の騎士を各地に持っていた。

 クラウド達でさえ500名の騎士を従えていた。

 

 戦争の心配はほぼあり得ないが、各国に通常の国家と思わせなければいけない。

 国家規模相応の軍備に拡充していった。


 他国と違うのは領地を持つのが皇帝であるオサムとクイード達3名の公爵

 クラウド達5人の伯爵、それに副都を任せてあるロウに大公の位を授けて広大な領地を与えていただけだ。

 諸侯と呼ばれるものはこれら9人のみである。

 他には国家騎士団団長と言えども領地を持つものは居ない。グリオンやエスカニアの王国領土は別である。

 郡県制に近い統治方法だったが、連邦制でもある。


 魔法団も皇帝直轄の魔法士に対し騎士と並ぶ地位”法術士”を作り与え20万名程が国土全体に派遣されていた。

 法術士は庶民出身が殆どだが、騎士と同等の扱いを受けることが出来るため、他国から優秀な魔術士がグレイスへやって来た。

 徴兵制は東西共に無くして志願兵だけの正規軍を雇う形態に変えた。



 「大体の形は出来上がって来たよ」

 リムルやロレーヌと話をしながらオサムは言った。


 「私たちは何の心配もしておりません、陛下は民に優しく戦を嫌い平和を望んでらっしゃいますので」

 ロレーヌはミシュルを抱きながら話した。

 「この子達が争いのない世界で育てばそれでかまいません」

 リムルもスウェンを抱きながら話した。


 「そうだな、この国はクイード達の力も有り平和が保たれている」

 オサムはいつもの様に長椅子に転んで話しだした。

 「ただ、西や南はまだまだ争いは絶えないね、口出しできないから放っといてるけど」

 そう言うと


 「陛下のお力でなら戦を無くすことが出来るのでは?」

 ロレーヌが訊いてきたが

 「それは内政干渉になるからね、グリオンやエスカニアの様には行かないよ」

 そう答えて

 「しばらくは様子を見てる。皆がこの国をしっかりと理解してくれるまでね」

 と続けた。

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