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終わったならまた始めればいいじゃないか-推敲Ver-  作者: 朝倉新五郎
第二章 国王と神
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4話 帰還と王国のその先

 いよいよリムルが出産という時期になってグレイスの隣国グリオン王国とレギオーラ王国、そしてグリーシア帝国にモンスターが襲来したと報告が入った。


 オサムは3人をそれぞれに派遣して自らもグレートドラゴンで飛んだ。

 使者の話ではどうやら今回はグリーシア帝都が本命のようだったのでハンビィの加勢として戦った。

 まだビーツに作らせている剣が届いてないので新しい甲冑は身につけたが、剣は以前のものだった。


 いつものように全力で片付け、ダークドラゴンとカオスキーパーも叩き斬って終わらせた。

 すぐにふた手に別れ、ハンビィはレギオーラにオサムはグリオンに飛んだ。

 グリオン王国にはやはりカオスキーパーは居らず、ダークドラゴンも居なかった。

 タキトスがほぼ片付けていたので残りを2人で片付け、レギオーラに向かった。


 2人が到着した時にはクイードとハンビィの手で全て片付けられていた。


 「3面攻撃か、タイミングもわからないし待つしか無いのは少々イラ立つな」

 オサムが言うと

 「4箇所までなら問題有りませんがそれ以上となるとゾッとしますね」

 クイードが言った。

 「そうだな、他にインペリアルセイヴァーは居ないし、まぁ対処するしか無いのが現状か」

 オサムがそう言って4人はグレイスに帰った。


 次の日になって各国からモンスター晶石が大量に届いたが換金して国庫に入れた。

 使いの者を数日ねぎらってから帰した。



その日いよいよリムルの出産のため、医師や治癒魔法士が城に呼び出された。

 魔法士や魔道士が治癒魔法を掛け続け、神聖魔法を使い精霊の力を借りて無事男児が生まれた。


 魔法で体力をすぐに回復させ、祝福の魔法を使いリムルも子も無事だった。


 オサムはずっとリムルの手を握っていたが、これだけの手を尽くしたので安産である。

 「よく頑張ったね、リムル」とオサムは声を掛けると

 

 「陛下は心配されすぎです、あれだけお慌てになられてましたがこの通り私も御子も元気ですよ」

 リムルは子を抱きながらもう座っていた。


 「いやぁ、そう言われると返す言葉が無いよ」オサムは安堵していた。

 「でも、しばらくは安静にね?わかった?」


 「はい、そのようにします。御子は私が育ててもよろしいですか?」

 リムルが何やら訊いてきたが

 「うん、それが良いと思うけど、他の方法って有るのか?」

 オサムはロレーヌに尋ねた。

 母親が育てなければ誰が育てるのだろうか、と言う疑問だ。


 「普通は王家の御子は乳母が育てます。陛下はご存じないようですが」

 ロレーヌは答えた。


 「あぁ、そういうことか。うん、育てるのはリムルに任せる、侍女も数人付けるし、好きにすればいいよ」

 オサムは納得できた。日本の歴史でもそういうことは普通に行われていた。


 「あとさ、ロレーヌ。こういう時って何か国家行事とかするのかな?わからないんだけど」

 オサムはそのあたりは全く知らなかった。


 「そうですね、全国民を上げて御子の誕生を祝う行事を行いますが、一月ほど後になります。誕生の通知は国民に知らせておき、祝いの行事の日をお決めください」

 

 「ロレーヌはよく知ってるな、さすが子爵令嬢だね。じゃあハロルドに言っておく」

 こういう時はなんでもハロルドに頼んでいる。そうすれば間違いがないとオサムは分かっていた。

 ハロルドは騎士、子爵、伯爵、公爵、国王となっていったオサムが頼りにしている者である。

 自身も家令となってからは猛勉強をして数え切れない人数を部下の力を借りて上手く仕切っている。

 そしてひとまず安心したオサムは「少しリビングで休むね」と言ってソファーに寝転んだ。


 

 そして御子のお披露目の式典の日が来た。

 生まれた子の名はグランパープルの守護者につけてもらっていた。

 ”スウェン・オルトール・グレイス”それは”神々に祝福されし者”と言う意味らしい。

 グランパープル聖国の守護者からも名以外に祝いの品も貰った。


 昼は城の庭に民衆が押し寄せ「グレイス陛下万歳」の合唱が鳴り響いた。

 夜になるとそこかしこで祝いの宴が開かれ、王都だけでなく全領土が祝賀のムードに包まれた。

 グレイス王国には職人や労働者が多い。ここぞとばかりに宴が行われていた。


 各国からも使者が訪れ、王自らやってくる国もあった。


 「迎賓館を作っててよかった」とオサムは胸を撫で下ろした。

 やはり数日の間滞在する者達が多い。

 数日間続いた祝宴が終わる頃にはオサムはへとへとになっていた。



 「それにしても各国から届けられた祝いの品がものすごい数になってるな、ありがたいことだ」

 オサムがリムルにそう言うと

 「それだけ陛下が敬われているのでしょう。陛下の恩恵を受けていない国はほとんどございませんので」

 リムルは各地でのモンスター退治の事を言っていた。


 「グレイス王国は特別な国です。この子の未来は明るいかもしれませんね。聖なる名もいただきましたし」

 とリムルは嬉しそうに微笑んでいた。


 

 その数日後クライアンから連絡があった。直接見て欲しいとのことだった。

 「陛下、研究の結果空に浮かぶ家、正確に言うと庭ですが、完成しました。

  今はまだ小さいものなのでそのうち屋敷を建てられるくらいの大きさに出来るかと。


 「それは面白いな、何の力を使った?」と訊くと

 「様々な浮遊系モンスターのレアアイテムを使いました。魔法石も」

 クライアンはオサムを外に連れ出して「あの上空に浮かぶのがそれです」と指差した。


 「素晴らしい、このまま研究を続けてくれ」と言ってオサムは城に戻った。

 クライアンの技術は機械を使わなくても色んな分野に応用出来る。オサムは楽しみだった。


 自分の部屋に入るとビーツに頼んでいた大剣が5振り届いていた。

 一振り一振り確認し、振ってみた。軽いものもあれば以前の大剣より重いものも有る。形状はほぼ同じだ。

 今度試してみるか、とオサムは台に立てかけていった。



 忙しい時期が過ぎるとオサムは安心したのかまた冒険癖が出た。

 どうしても新しい剣を試したいのだった。

 4本を剣専用のマジックバッグに入れ、1本は背中に挿してメラススの塔を目指した。

 まずはこれで。


 出来るだけ魔法は使わず剣本来の威力を見るつもりだった。

 1回目、硬いドラゴンの鱗をいとも簡単に斬る事ができた。鋭い剣である。

 2回目、付加スキルが多く、強大なモンスターも苦労せず倒せた。

 3回目、ゆらりと輝く刀身は神聖な力があるようだっった。アンデッドやカオス系のモンスターに強大なダメージを与えた。

 4回目、軽く振れ、よく切れる、付加スキルが随分と多い使いやすい剣だ。

 5回目、重い、斬ると言うより叩き割るような感じである。自分に合っている。

 全ての剣が以前の剣より強力であった。

 1日も掛からず5回200階層まで攻略出来た。以前の倍以上の攻撃力と考えればいい。

 アタックステータスも前の大剣の倍以上だった。

 

 オサムはこれらの剣を使い分けるため、ビーツに一度渡しヒルト部分の装飾を絵に書いて指示した。

 そしてクライアンには専用のマジックバッグを作るようにと申し付けた。

 それでもオサムの装備好きは止まらない。どんどんと新しい物をビーツに作らせ続けた。


 この頃になると、ビーツの鍛冶工房が王宮騎士団や黒狼騎士団の装備一切を引き受けるようになっていた。

 ビーツの弟子は100人にまで増え、オサムの作らせた工房は更に拡張され、広大な工場になっていた。



 「しかし死ねねぇな」

 オサムはもう一度日本へ帰り、書籍を書いたかった。各分野の専門書だ。

 もっと近代国家に近づけたい。製鉄所や紡績、農業欲しい知識は多い。

 しかし40万以上あるHPを0にするには相当な戦いが必要だ。


 オサムは一度城へ戻り、リムルにしばらく留守にすると言ってからそのまままた塔へと向かった。

 回復薬を全く使用せず連戦するつもりだった。しかし簡単に負けるつもりもない。

 ビーツの甲冑はHPを自動で回復する物が多い。オサムは敢えてその機能の無い装備で出ていった。


 そして5週間、350回以上の塔攻略でやっとHPが0になった。

 ほとんど睡眠を取らず、倒しては晶石を拾い、そして降りるの繰り返しだった。


 

 オサムは起きた。やはりそこは元の自分の部屋だった。

 ネットで調べて実用的な書籍に殆どの貯金を使った。

 今回は4座席分に大量の荷物を入れて戻ってきた。


 突然リターンゾーンにトランク8個とオサムが現れた。

 まずは換金所に行き、中身を見ずにグランパープルのバッグを渡し

 「半分は俺に、半分は国庫に」

 「バッグはまた他の者に取りにこさせる」と言ってトランクを両手に持ち城へ帰っていった。


 「ただいま。長く留守にしてごめんね、どうしても欲しいものがあって」

 とリムルの部屋を覗いた。

 「おかえりなさいませ、この子に父親の顔を覚えさせてあげてくださいね」

 全く心配している様子はなかった。


 「もう終わらせて来られたのでしょう?」笑顔でリムルは柔らかく抱きついてきた。

 「世界を平和にするのは簡単では無いのですね、お疲れですか?」

 リムルは何も知らないので今回のことは隠しておこうとオサムは考えた。


 「そうだね、準備は進めてるけどそう簡単じゃないみたいだね」

 「ちょっと執務室に言ってくるよ」と言ってリムルを部屋に帰した。


 執務室の本棚に今回買ってきた大量の書籍を詰め込み、翻訳係を呼びつけた。

 「まだ新しい本があるので翻訳しておくように。わからぬ部分は遠慮なく言ってくれ」

 「翻訳者が足りないのであれば俺の名前で人を募れば良いので早速かかってもらえるか?」

 と指示した。

 今回の本は専門用語が多く、オサムにも理解出来ない物が揃っている。

 全てを翻訳し終えるにはかなりの時間と人数が必要だろう。


 次に侍女にハロルドを通してクイード達3人の内の誰かに直接換金所にマジックバッグを取りに行くようにと伝えさせた。

 換金した晶石が一体いくらになるのかは分からないので、他の者には行かせられない。



 暫くするとクイードがマジックバッグを持って執務室に入ってきた。

 「陛下、この一月以上何をしたんですか?換金所で聞きましたが8億7千万枚らしいですよ?」

 クイードが驚きを隠さずに訊いてきた。

 「ダンジョンに入っていた。5週間ずっと戦い続けたな」

 オサムは軽く流したがクイードが「レベルが70を超えてますね?HPも60万に近いです」と言うと


 「そうか?今となってはそう変わらないだろ?」グレートドラゴンを凌ぐモンスターが居れば別の話だが。

 「この世界をより平和にするために欲しいものがあった」とクイードに言った。


 「陛下の見ている先ですか、我々も努力しますのでいつでも申し付けてください」

 クイードは言うが日本へ戻れるのは自分しか居ない。

 「今回のものは入手が難しくてな、自分で取ってくるしか無かったんだよ。頼みたいときは頼む」

 「ではこれらを」とクイードの目の前にトランクを出し

 「ビーツの鍛冶場に行って分解してもらってくれ。材料だ」

 そう言ってトランクを渡した。


 「わかりました、御用のときはいつでも申し付けください。」

 とクイーズは部屋を後にした。


 「ふぅ、なんとか乗り切ったな。」

 オサムは内心ヒヤヒヤしていた。

 リジェネリターンのペンダントを3つ付けていったが1つは砕けていた。

 砕けたペンダントは引き出しに入れ、自分の部屋へと戻っていった。



 1つ行事が終わると、また行事がやってくる。

 グレイス王国建国の日、つまり3人の儀式の日がやってくる。


 「今回も多くやってくるんだろうなぁ」

 息子をあやすリムルにオサムが言った。

 「そうでしょうね、あの3人も各国に相当な領地をお持ちなのでしょう?」


 「そうだね、けど1回で終わるから気が楽だ。今回は皆正室だしね」

 オサムも王子をあやしながら話した。考えても居なかったが自分の子供はやはり可愛い。


 「最高の儀式にしてさしあげないと、ね?陛下」

 今回はリムルも長く居られるだろう。スウェンがグズリ出すまでだが。


 「うん、準備は整えたから大丈夫。ロレーヌの時みたいに慌てずに済むよ」

 オサムはほぼ準備を整えさせていた。



 そして、その日がやって来た。

 ライツェン国から200名と少し、各国から300名程が集まった。

 

 城の大広間は拡張工事で優に1000名が入れる様にしている。

 この拡張でまた城の作りが複雑になってしまったが、古い部分、つまり玄関ホールからオサムの部屋までの通路は以前と変わっていない。

 しかしそれでもまだ3回に1回は迷ってしまう。



 今回はリムルもスウェンを抱いて出席していた。

 3組がそれぞれ儀式を済ませると宴が始まった。


 宴が始まるとリムルは部屋の隅で椅子に腰掛け息子を見ていた。

 オサムもその横に座って我が子を見ていたが、列席した各国の使者や王との歓談も忘れていない。


 政治や都市の近代化の話は極力避けて祝福の話題で盛り上がった。

 同時に難民の件をさり気なく聞き出し、移住に関しての問題の有無を調べていた。


 3人の花嫁はそれぞれとても幸せそうで、クイードやタキトス、ハンビィが誰かと話している時も常に傍に付いていた。

 祝宴は夜遅くまで続くが、スウェンがグズりだしたのでリムルは

 「先にお部屋に戻りますね」と言い残して会場をあとにした。


 最後にまた楽団の演奏によるダンスで当日の宴が終わる。

 これがあと2日続く。しかし今回は各国の状況を上手く聞き出す必要があるので、オサムは積極的に話を交換した。


 1日目の宴が終わったかと思った時

 家令のハロルドが素早く指示を出し、城の客間と迎賓館に割り振っていく。

 執事と執事補佐の10名以上や多くの召使いたちはその指示に従って客を部屋まで案内した。


 大広間の片付け中に3人とその花嫁がオサムの座るところまで来て

 「このような盛大な儀式と宴を感謝します」といったが

 

 「今日があるのはお前たちの努力の結果だよ」

 オサムは褒めた。そして

 「一息つくか、お前たちはともかく、ヴィオラやミーシャ、ファシリアは疲れただろう?」

 「楽な服に着替えて休憩室に来るといい」

 と言ってオサムは大広間から出て侍女を呼び用意させてあった平服を受け取って着替えを手伝わせた。


 オサムが休憩室で待っていると、6人が入ってきた。

 「インペリアルセイヴァーは疲れをほとんど感じないが、どうだ?」

 オサムが皆に尋ねると

 「疲れより喜びのほうが大きいですね」クイードが言うと全員が頷いた。


 「ひとまずこれで我が国の形が出来上がった。

  しかし、3人にはそれぞれ重要な務めがあるのでな、留守は多いだろうが理解してくれ」

 オサムが言うと

 「それは既に旦那様より言い付けられておりますので」

 とヴィオラが答えて、あとの2人もコクリと頷いた。


 「俺はこのまま止まらずに事業を進める、よろしく頼む」

 とオサムが言い、しばらく雑談が続いた後解散となった。

 


 翻訳は順調に進んでいた。まずは高炉を作るためサラマンダーをと考えたが、火の魔法士で十分だった。

 半自動化するために石炭が欲しかったので領土内各地で探させた。

 数カ所で大規模な炭鉱が見つかったため、オサムが岩盤ごと切り崩し露天掘りが出来るようにしたあと人を募り掘らせた。


 鉄鉱石はオサム自身が探しに回った。

 どうやら国内では大規模な鉱床は見つからないため、他の地域を探すことにした。


 様々な場所を探して回ったが、グリーシア帝国を越えて小国都市国家の乱立する地に有望な場所を見つけた。

 都合よく砂漠地帯と森林地帯、人が住んでおらず、どの国の領土でもない。

 しかし砂漠には城塞都市群がそこかしこに散らばっていた。交易国家である。

 ここでも支配や利権を求めて不毛な争いが続いているようだった。


 オサムはこの際だからと、砂漠の都市群を支配下に置くことにした。

 西方の国々とは違い、この周辺の都市国家は軍事力に乏しい。しかしオサムの名声は噂でしか知らない。

 多少の怪我人は出したが、一つ一つの城塞を攻略していくのはオサムにとって容易いことだった。


 オサムは砂漠周辺の都市国家を全て支配下に起き、戦乱を鎮めた。そして飛び地になるがその広大な土地全てをグレイス王国の領土とした。

 各都市国家にかなりの自治権を認めた上で、各都市の支配者にグレイス王国を見せた。


 その上で不安定な砂漠地帯の都市の安全を条件に加えると全ての国がグレイス王国に属する都市となった。

 見つけ出した巨大鉱山はいずれも露天掘りの可能なものであったため、クイード達に手伝わせ巨大なマジックボックスで鉱石を本国に持ち帰った。

 鉄だけではなく石炭、石油、銅や錫、亜鉛、アルミにニッケルや貴金属、様々な鉱山を見つけ出したが、必要な物は石炭や鉄と銅、錫や亜鉛とニッケル位なので他はしばらく放置することにした。

 

 これで大量の鉄や合金が作れるようになる。徐々に工場を拡張し年間数千万トンの鉄や青銅等を生産出来るようにまでにするのが目的だ。

 魔法の世界であっても何にせよ鉄は役に立つ。銅や錫等の合金は現在流通している鋳造製貨幣を鍛造製に置き換える材料として必要となる。

 オサムの目的はグレイス王国の金貨や青銅貨、黄銅貨、白銅貨を大陸通貨とすることだった。そのためには均質な材料が求められる。

 製法は専門書が頼りだが、まだそこまでは出来上がっていない。


 オサムが露天掘りの鉱山に固執するのは、事故の可能性を極力低くするためだ。

 坑道を掘っての採掘には事故がつきまとう。治療魔法を使えるものが居たとしても、落盤事故があればどうしようもない。

 労働者の安全を第一に考えるのは働かせる側の責任である。


 だが、入念な安全を担保出来るようになれば坑道も掘るつもりだった。

 それには地の魔法士と神聖魔法士が必要になる。2年契約で募集していた。

 契約満了まで働けばオサムの考案した、身分は騎士団と同等とする国家法術士団に入団することが出来る。

 魔法士は殆どが庶民であるため身分が低い。それを一気に上げようと作ったのがグレイス国家法術士団だった。


 農業分野も飛躍的に向上させた。品種改良も行わせ、様々な作物を各地で生産させた。

 綿花の育つ土地を探してはその地域を支配下に置き綿花栽培をさせる。

 それを紡績工場で布に出来るまでに発展させた。これからは綿の服が主流に成るだろう。


 街は今まで屋内だけがエターナルライトで照らされていたが、街灯を作り魔法士にエターナルライトを灯させている。

 砂漠の都市もまた、夜も光の絶えない犯罪の起きにくい街に変えていった。


 グレイス王国には働き口が有り余っていたため、人口の流入がさらに活発化した。

 しかしそれに伴いやはり犯罪も増えだした。

 物資や金の集まるグレイス王国は犯罪者にとって非常に魅力的な国になってしまった。


 オサムはこれに対して改革する必要に迫られた。

 今までのシステムでは膨張する人口に対応しきれない。

 警察機構に当たる兵士の数を大幅に増やし、街中に交番を作り対応することにした。


 新規獲得した領土が砂漠地帯だったためこれまでは追放刑だった者をさらに過酷な土地へと放逐するため流刑地を作った。

 犯罪者は罰金刑で済むような軽微な者以外は全て流刑とした。刑は流刑か罰金しか存在しない。死刑もなければ労働刑も肉刑も無い。

 流刑地は2箇所、永年流刑と期限付き流刑で場所が違う。

 砂漠の中心、新たに見つけた水の湧く場所に高い壁とその中に住居を作らせた。

 必要最低限の暮らしが出来るように施設も整えた。食料は毎週グリフォンかペガサスで人数分運ばれてくる。

 砂漠周辺のどの都市からも300キロメルト離れており、道路も通していない。故に誰も通らない。その上に禁足地とされた。

 期限付き流刑地も同じようなものだが扱いが違った。王都に帰ってきた時に物が作れるように職人養成施設が併設されていた。


 永年流刑は帰る事が殆ど不可能なため人生を奪われるのと同じである。このため、増えだした犯罪はほぼ無くなった。

 極めて少数戻ってくる者も居たが、流刑地での事を語るので噂が広がり流刑は恐れられた。


 冒険者が冒険しやすいように換金所の掲示板に地図や出て来るモンスターの詳細も貼った。

 また、冒険者からは1割の税を取った。

 

 その他の事業にもオサムは熱心に取り組み、グレイス王国はさらに進んだ国家になっていた。

 増え続ける人口に対処するため、外周の城壁の内側の整備を急ぐ必要に迫られたが、幸い移住者の中に技術者が多く居り、順調に街は出来上がっていく。



 外周の居住区化が進み、王都はまた広がった。歴史あるグリーシア帝国の帝都を凌ぐ大陸最大の王都である。

 王都の人口は1000万人に近くなった。他の城塞都市や町や村全てを合わせると2000万人、グリーシア帝国に次ぐ大国となった。

 しかし領土はライツェン王国の半分程度のままで、拡張は考えていない。


 新しい城塞都市を作ったり、王都以外の城塞都市の拡張で対応した。

 そして、各国から集めた孤児や困窮者達を一斉に移住させた。

 孤児は全寮制の王立学校で学習させ、未来を担う世代として積極的に援助した。

 仕事の無かった者は職人や労働者として仕事に就くことが出来た。

 また、農村や小さな町にも学校を作り、子供達に教育を施した。

 15歳以下の子供を働かせる事は禁止させ、足りない労働力は雇わせて補わせることにした。

 そもそも税率が2割なので農業に従事する者も貧困に喘ぐことはない。

 他国にあるような農奴制は無く、移動の自由や職業選択の自由を徹底させている。


 グレイス王国にはオサム達4人以外に領主は居ないため農民はかなりの自由を得ている。

 国家が持つ農地や、オサム達が持つ農地では給与を支払って農作業をさせている。これは農民ではなく労働者となる。

 この結果、全ての者が銀貨や青銅貨を使うことになり、国内の経済は活発に動いていた。



 「陛下のお考えは底が見えません、一体どうやればこのような国作りが出来ましょう?」

 夜の会食の後、クイード達3人と正室達、リムルとロレーヌが残って話をしていた。

 リムルとロレーヌは事情を知っているため終始ニコニコとしていた。


 「あのような量の鉄は見たこともありません。それに城下の街では犯罪が激減しています」

 「港の巨大な船工場を見てきましたが、帆のない鉄の船が数隻、あれは一体?」

 「新しく獲得したというグリーシアの向こうの砂漠の国家も鉱石の件の時まで我々は知りませんでした」

 「貨幣を作るためという青銅や黄銅、白銅も見ましたが、あの品質はどうやって維持するのですか?」

 「海沿いにある巨大な工場群は他国では考えられない規模です」

 様々な意見がクイードやタキトス、ハンビィから出た。


 「率直に申し上げますが、驚き、いや驚愕を通り越しています」

 3人は尊敬の眼差しでオサムを見ていた。


 男達がそういう話で盛り上がっている時にはそれぞれの妻達が席を変えて集まりリムルやロレーヌと子供についての話をしていた。

 女性たちにとってはそんな事はどうでもよく、日々の生活や自分達の夫の事、子供のことだった。


 オサムは一種の産業革命を起こしていたのだが、大規模に行うつもりはなかった。

 鉄道などはまだ早い、他国を極力刺激せずに済ませたいと考えている。

 「まぁ、俺が出来るのはこのくらいだ。あとは国境を整備するくらいだな。それと各国の難民だが国内に新しい街を作ったので移住を始めている」

 「まだまだ余裕があるので各国からどんどん連れてきてくれ、まだ俺が計画している人口には達していないんでな」

 と締めくくった。

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