とある日の昼下がり02
そそられた。
それは別にやましい意味合いは一切なく、単にそこに映る画面に、正確には写真に魅せられた。
写真とそこに書かれた説明を見て興味が湧いた。
真っ白い肌を持つ女性の全身写真。
彼女達は一様に椅子に座っていてドレスを纏って凛と整った顔を持つ。
『あなたの願望叶えます』
占いなんかでよくありそうなそんな見出し文字の後、説明文が続く。
『この中に一つでも気になった方はいますでしょうか? しかし残念ながらこれらの方々とお話しすることは叶いません。何故かって? それは彼女達は人形だからです!』
人形――つまりは作りもの。
意志を持たない人型の無機物。
これを読んで俺は見ることを続行した。
『それをお疑いの方もいらっしゃるでしょう。しかし本当なのです。
凄腕のスタッフ達によって作りあげられたそれはとても素晴らしくさわり心地も申し分ありません。
独自開発した特別な3Dプリンターによりとても早く、とても精巧なまさしくリアルな人形があなたの手に。
人形の中にある骨によって好きな格好にすることが可能。
肌はウレタンやシリコンの如く肌触りでぷにぷに柔らか、眉や唇はプロの手によって一つ一つ丁寧に扱われ、瞳はきれいに光る。
ケモ耳、しっぽに男の娘。人の形をしていればどんな姿でも構いません。
もちろん関節も腕や脚だけでなく、指も一つ一つしっかりと動きます』
そう書かれたその下には手、足をズームして親指から順に動かした短い時間を繰り返して動く写真が貼られている。
指だけでなく手首も足首もちゃんと動くようだ。
更には裸体も写し出されている当然だが局部には『KEEP OUT』の編集によって隠されていた。
男としては少し残念だが、別にそういうものとして見始めたわけではないので正直なところはどちらでもいい事だ。
『しかしこう聞くととてもお高そうですよね。
安心してください!!!!
本来今なら何とたったの5万円。
さぁ!!皆さんも是非この素晴らしさをその身で体験してください』
そしてその説明文の下には申し込みへのリンクが張られている。
「ふむ……」
さて、どうするかな?
普段ならばこれで終わりだが、これは今回のネタとして十二分に使えるのではないだろうか?
もちろんありきたりかもしれないが、試しに買ってみるというのも悪くない。
説明文を読む限りは人外もOKとのことだが、さすがにこういった二次元が三次元になってもな……。
フィギュアのようなものだと思えばいいものだけどまぁここは無難に普通のものでいくとしよう。
ネタにもなるしお金も十分に余裕はある。
仮に詐欺だったとしても一応大した問題はない。
知り合いに連絡してこの会社を潰してもらえばいいだけだ。
では早速頼むとしよう。
「う~ん」
希望の姿はそうだなぁ、この前暇つぶしに描いたイラストにでもしようか。
俺はマウスでカーソルを動かして『注文』をクリック。
ふむ、どうやら5万で済ませるには既に出来上がっている物から選ぶ必要があるようだ。
流石に30万はきびしいので説明文に書かれていた通りに5万で済ませるために既存のものから似ているものを配達してもらうようにする。
そしてこんな感じなものがいい。と容貌メモ欄をクリックする。
『褐色肌に茶髪。エメラルドの瞳を持ち、長いプラチナブロンドの少女……』
最後に手早く打ち込んだ要望のメールをフリーメールのアドレスを使い、その会社に送信する。
届くのは一か月後か……。
俺は腕をついて少し楽しみで口元を緩め、微笑んだ。