4・地獄のような日々(笑)
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「おい、起きやがれ!」
扉がドンドンとノックされる。
「ん〜、なんだ。まだ学校に行くのは早いぞ」
瞼を擦りながら、床に降りて扉を開ける。
「寝坊をするな! 今から訓練だ! 早く訓練場に来い!」
「ん〜、訓練?」
鎧を身につけた男を見て、俺は思い出す。
——そうだった。俺は異世界に来たのだ。
身勝手にも召喚されて。
その上、魔力ゼロだと罵られて。
でも超能力が使えることが判明して。
うーん、よく眠りすぎてつい忘れていた。
「それに寝坊? 俺は今日、起きる時間なんて聞かされてないんだがな」
「言い訳するな!」
ドン!
その男が持っていた棒みたいなもので頭を叩かれる。
「——なにしやがるんだ!」
「いいから来い!」
服を引っ張られて、部屋から出される。
見た目から判断するに、どうやら騎士団の下っ端って言ったところだろうか。
まだ朝起きて間もないのに、無理矢理歩かされて足が付いていかない。
「ってか朝ご飯は?」
「なに? そんな上等なものあるわけないだろうが!」
マジかよ。
まあヒーリングの超能力を駆使すれば、一ヶ月くらいは食べなくても生きていけるんだがな〜。
だが食べるってのは栄養補給の意味合いだけではなく、一種の楽しみにもなっているんだ。
厨房や食堂の場所が分かれば、テレポーテーションを使って移動し、朝ご飯を食べるんだがな。
「着いたぞ!」
背中を押される。
——そこは広い部屋であった。
だが朝から熱気がこもっており、大勢の兵士(?)が声を上げて、剣を素振りしている。
「ここが訓練場か」
ふむ、異世界にしてはなかなか上等な場所じゃないか。
「来たか無能」
なんて声を上げながら、近付いてきたのは——げっ、こいつ。昨日の騎士団長じゃないか。
確か名前はフーゴと言っただろうか。
「初日から寝坊とはなかなかいい度胸じゃないか」
「だから俺は時間なんて聞かされて——」
「昨日、部屋から出て行く時に時間を伝えただろう。言い訳をするな——そうだな。このままなにも罰を与えないのも他の者に示しが付かん。ちょっと来い」
相変わらず、俺からの意見は封殺されるのかよ。
ってか時計もなにもないから、時間なんてもの分かりようがない。
いや、俺は超能力を使えば時間くらいならなんとか分かるんだけどよ。
荒っぽく服を引っ張られながら、訓練場の中央まで移動する。
「これを使え」
フーゴが雑に放り投げたのは——木で出来た剣のようなものであった。
俺はそれを手に取る。
「今から模擬戦を行う。オレから一本でも取れれば、今日の訓練は免除してやろう」
ニヤッ。
フーゴの口角が吊り上がる。
舌で俺と同じ様な模擬剣を舐めた。
「見せしめってヤツか」
訓練場にいる兵士達が集まってきて、俺達を囲んで戦いを眺めている。
まるで動物園の檻の中に入れられたライオンのような気分になる。
「ゆくぞっ!」
フーゴが模擬剣を振り上げ、斬りかかってきた。
——結果だけいうと、フーゴはなかなかの剣士らしい。
動きも洗練されていて速く、騎士団長というポジションにいるのも頷ける。
だが、俺は超能力者。
少し先の未来なら予知出来る超能力を持っている俺なら、フーゴの動きなんて手に取るように分かった。
「ぐはっ!」
しかし敢えてわざとらしい声を漏らして、フーゴの攻撃を肩とか足のダメージが少なそうな位置で受ける。
正直、ここで超能力でこいつを叩きのめしてもよかった。
だがとても暴れ回るためには情報が少なかった。
なので体を硬化する超能力も使い、適当にフーゴの攻撃を受けほどよいところで、
「なんだ? もう終わりか?」
尻餅を付いた俺を見下すフーゴ。
終わりだ——飽きたからな。
適当なところで座ったのを見て、どうやら俺が力尽きたと判断したらしい。
「ふん。あまりにも弱すぎる。一発くらいならオレに攻撃を当てると思ったんだがな」
「…………」
「攻撃を出そうともしなかったではないか。この腰抜けめ」
……くっ!
我慢だ! まだ暴れ回るには早すぎる!
最低でも一ヶ月はこの異世界での情報を集めなければ!
「……はあっ、はあっ。け、剣筋が見えない……」
「当たり前だ。オレの剣技はサザラントで一番だ。明らかに貴様は素人だろう? オレに勝てるわけがないだろうが」
「じゃ、じゃあなんでこんな模擬戦を?」
「——決まっているだろう。貴様を鍛えるためだ」
そう言うと、周りから嘲笑が上がった。
無論、俺なんて鍛えるつもりはないんだろう。
「今日はこれくらいで終わりにしてやる。明日も同じように模擬戦をするぞ」
フーゴはそう言い残して、背中を俺に向けた。
今すぐにでもエネルギー弾でも放って、フーゴの背中に風穴を空けたい。
でも俺は高校生にしては大人の考えを持っているし、なにより我慢強い男だからな。
拳をギュッと握り締めて、怒りを抑えることにした。
今回は少し短め。
今度は昼頃更新です。超能力無双まではあまり時間をかけない予定です。