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37・みんなでお風呂に入りましょう

「とうとう俺もここまで来たか……」


 ソファーに座り、部屋にある高級そうな壺や絵画を眺めながらそう呟いた。

 領主になった、ということはこの屋敷も手に入ったということだ。

 部屋の数は多く、何人住まわせても余裕がある程であった。


「マスター凄い」

「マ、マママママコトさん! 一体なにが」

「やれやれ。とうとう領主になるなんて。凄いを通り越して呆れるよ」


 そして——俺の前にはメイド服を着た三人の美少女だ。

 右からマリーズ、エコー、フランである。

 別にメイド服を着させる必要はない。家事については元々この屋敷で雇われていたメイドや執事に任せている。


 ちなみに——洗脳が解除されてから、比較的少ないお金で買収には成功した。

 元々カルヴィンはお金に関してドケチで、雇われていた人達は少なからず不満を抱いていたらしい。


「領主様……いや元領主のカルヴィンはどうするつもりなんだい?」


 フランが尋ねてくる。

 フランは生足を黒タイツで覆っており、それがまたあでやかであった。

 メイドのスカートは短く、時折気にするようにフランは裾を引っ張っていった。

 その羞恥で赤くなっている顔を見ていると抱きしめたくなる。


「……あいつには近々裁判にかけるつもりだ」

「裁判?」

「ああ。あいつの財務状況を調べたら、税金の無駄遣いが激しかったようだからな。なんかそういう感じの適当な罪にしておいて、牢屋にでも入れておこうかと」

「それは——残酷じゃないかね。税金の無駄遣いは本当だったからもしれないけど……」

「残酷? なにを言ってるんだ。こんなに優しい領主は他にいないだろう」

「…………」

「殺さないんだし」

「……はあ」


 おいおい、フランよ。どうして溜息なんか吐くんだ。

 まあそれについてはどうにでもなるんだろう。

 なんてたって俺の超能力は万能だ。

 ギルドマスター、そして裏社会においても《ネドトロス》という鍵を得ている俺にとっては、市民を扇動することは最早容易い。


「まあそれについては明日考えるとして……よいしょ」


 ソファーから立ち上がる。


「よし、三人とも行くぞ」

「マスターの行くところならどこでも付いていく」

「どこに行くんですか?」

「なにか嫌な予感がするのはボクだけ……?」


 三人が疑問や不安を口にする。


 ——もう一日も終わろうとしているからな。

 俺はニヤリと口角を上げ、三人に対してこう告げた。



「お風呂だ」


  ■


 この世界において、お風呂というものは貴族くらいしか入れないものらしい。

 俺は今まで桶にお湯を溜めて、それで石鹸せっけんで体も髪を一緒くたにして洗っていた。

 あくまで最小限のお湯だ。元々極度のキレイ好きじゃなかったので、それでもなんとか耐えられていた。

 でもそれじゃあ疲れは取れない。


 お風呂の存在は前にエコーから聞いていた。


『お風呂ですかぁ、私も憧れているんですけどね。でもまずお湯を溜める場所も必要になりますし、大量の水にそれを沸かす魔石も必要になってきます。一日くらいならなんとかなっても、毎日となると私みたいな平民が実現出来るものなんかじゃないです』


 ということである。


 しかし——ここは金遣いが荒かったカルヴィンの屋敷である。

 当然のごとく、お湯を溜める湯船もあったので予めメイド達にお風呂を貯めてもらっていた。



「おおっ! 丁度いい湯加減だな」



 湯船に張られたお湯に手を付ける。

 屋敷の浴場は想像以上に広い場所であった。

 元の世界に例えるなら銭湯くらいの余裕はあるだろうか。


「おい、三人も来いよ」


 俺は後ろを振り返って、そう声を発する。



「うわあ、生きている内にお風呂に入れるなんて感激ですっ!」

「騎士学校でもお風呂にはなかなか入れなかった」

「ほ、本当にいいのっ? 本当にお風呂なんて入っていいのっ?」



 ——美少女三人が並んで、浴場を興味深げに眺める。

 エコー、マリーズ、フランの三人である。


「ほお……」


 これはなかなかの絶景だな。

 三人ともバスタオルを巻いているが、いつも見ている姿とは違うので心拍数が上がってしまう。

 三人の女性らしい曲線がバスタオル越しに分かり、絶景を形取っているのである。


「取りえずお風呂に入ろうぜ」

「「「はーい!」」」


 元気な返事が聞こえ、三人と一緒に湯船に浸かった。

 浴場の湯船はとても広いので、俺を含め四人が一緒に入ってもまだまだ余裕である。

 でもどうせなら狭いところで密着してもよかったんだけどな。


「ふう……お風呂なんて久しぶりだから体がとろけちゃいそうだよ」

「フランは入ったことがあるのか?」

「そりゃあ、一応ギルドマスターだからね。王都に出掛けた時に大枚を払って入ったことがあるよ。もっとも、あの時はこんなに広くなかったけどね」


 フランのテンションが少し上がっているように感じる。

 フランの胸がぷかぷかと湯船の表面まで浮き上がっている。

 バスタオルで隠しきれない暴力的な巨乳。

 なにかの拍子でタオルが取れたりしないだろうか。


「マリーズも入ったことがあるのか?」

「うん。騎士学校では一年に一回の『学年選抜大会』で好成績を収めるとお風呂に入らせてもらえていた。マリーズはいつも一位だったから」

「成る程な」

「でもそっちの牛女と同じく、こんな広いお風呂には入ったことがない」

「う、牛女ってボクのことかいっ?」


 マリーズの体は胸は小さいものの、健康的でこの中で誰よりも太ももがエロく見えた。


「ふえぇ、やっぱりマコトさん凄いですぅ……」


 エコーは目を瞑って、お湯に体を任せている。

 エコーの胸も——フラン程じゃないが——十分大きいので、見ているだけで目が洗濯されていくようであった。


「さて……体でも洗おうか。おい、フラン。背中を流してくれよ」

「どうしてボクがっ?」

「え? だってお前、俺の性奴隷じゃん」

「百歩譲って奴隷だとしても、性奴隷じゃないよっ!」


 嫌がるフランの手を引っ張って、ひとまず湯船から出る。

 壁際にボディーソープとタオルがあった。これで体を洗おうか。


「えっ? そこから石鹸が出てくるのかい? 凄い泡立っているじゃないか」

「ん?」


 元の世界と同じようにノズルを押してボディーソープの液体をタオルに付け、泡立たせているとフランが目を見開いて驚いていた。


「この世界ではボディーソープは一般的じゃないのか?」

「ぼでぃーそーぷ?」


 フランが首をかしげる。

 ふむ、差し詰めボディーソープは一部のお金持ちしか使えないということなのか。


「まあ取りえず、これで背中を洗ってくれよ」

「くっ……仕方ないね。このお風呂を使わせてくれた恩返しだと思って洗ってあげるよ」


 泡だったタオルをフランに手渡す。

 ごしごし……。

 フランがタオルを背中に擦りつけているような感覚。


「もっと力を強くしてくれないか?」

「こうかい?」


 背中を洗うフランの力が強くなる。

 その際、体重を乗せるためかフランが密着してきて、豊かな胸の感触が伝わってきた。


「むほっ!」

「強すぎたかい?」

「いや、丁度良い。この調子でやってくれ」


 凄い柔らかい。むにむにだ。

 先ほどは思わず声を出してしまったが、口を閉じてフランの胸を堪能する。

 これぞ極楽。


「はあっ、はあっ。も、もういいかい? いい加減疲れてきたんだけど」

「まだだ」


 フランは休まず背中にタオルを擦りつけているためか、息づかいが荒くなっている。

 それがまた俺を興奮させる。


「はあっ、はあっ」


 むにむにとした胸の感触に、女の子の荒い息づかい。

 こんなことをしていると変な気持ちが湧いてくる。

 でもこのままずっと身を任せていたい。

 そう考えていると、



「フランさんずるいですっ! 私もマコトさんの背中洗いたいです」

「この中だったらマリーズが一番力が強いはず」



 お、お前等っ?


「おいおい、ちょっと——」


 きっとエコーとマリーズだろう。

 後ろを振り返ると、二人が近くの余ったタオルを持って同じようにして俺の背中を洗い出した。


「押したらダメだよ。それだったら——」 


 三人が一つの背中を洗おうとしたらどうなるか?


 言わなくても分かるだろう。

 極度の密着状態となり、三人の体が俺に擦りつけられるのだ。


「——こんなんだったら毎日お風呂に入ってもいいな」


 ぼそっと零してしまった言葉。


「良いですね! 毎日洗いましょう!」


 とエコーが賛同してくれる。


「こんな風にまた背中を洗ってくれよ」

「はい! 何度でも!」


 まるで俺の背中を取り合うようにして、三人が密着してくる。


 むにむにむにむにむに……。


 くーっ! 

 領主になってよかった!

 声には出さなかったが、心の内でそう思うのであった。

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