プールでの秘密
誰もいないプールの端で、被っていた水泳帽を脱ぐと、無理矢理中に詰められていた私の髪の毛が落ち、顔にぺったりと貼りついた。
時計を見ると、19時を回っていた。
そろそろ出なければいけない。
プールから上がろうとすると、水泳部の顧問の平木先生がこちらへと歩いてきた。
「あれ?里中。どうしたんだ、お前」
「後輩に頼んで、今日の練習に混ぜてもらっちゃいました」
「まったく……引退してまだ2週間も経ってないのに、お前はほんとに泳ぐのが好きなんだな」
「……」
「どうした、里中」
「好きなのは……泳ぐのだけじゃなくて、夕実ちゃんが……」
「はいはい、わかってるわかってる」
「だってさ『里中』なんて呼ぶんだもん」
「悪い悪い。で、恵子はもう上がるのか?」
「うん、もう上がろうかなって」
「そっか、それは残念だな」
「えっ、なんで?」
「実は今日、私はこのジャージの下に新品の水着を着てきたんだなあ」
「ほんと!?見せて見せて!」
「じゃあ、お披露目しますか」
夕実ちゃんがジャージの前のチャックを下ろす。
そこには、私達が着ているのと同じ形のスクール水着があった。
「なんで、スクール水着なの?」
「え、なんで冷めてるの!?」
「いや、てっきり競泳水着だと思ってたし」
「だって、私のこういう姿、恵子は見たことないでしょう?だからさ、見せてあげようと思って」
ジャージを脱ぎ捨て、夕実ちゃんは縁に座ってプールに足をつけた。
私とは違い、出ている所は出て、締まっているところは締まっている彼女の体に、そのスクール水着はアンバランスな気がした。しかし、彼女のすらりと伸びた白い手足を紺色が際立たせる。
大きな胸は圧迫され、肩紐の付け根の部分にはみ出た胸の波が出ていた。
「こうすれば私も高校生みたい?」
夕実ちゃんが微笑む。
「そんなえっちな格好した女子高生はいませんたらいません!」
「ほうほう」
彼女はプールの中に入り、後ろから私を捕まえる。
「では……恵子ちゃんみたいに、顧問の先生のスクール水着姿見てドキドキしてる女の子は他にいるのかな?」
私のまな板のような胸の真ん中に手を当て、耳を舐めてくる。
ずるい、と思いながら、息が荒くなっていく。
「いません……」
「正解〜」
体を前のめりにして、夕実ちゃん唇を近づける。少し首を捻りながら、私はその唇を迎え入れた。
触れ合う唇の中に、少し塩素の匂いが混ざっている気がした。