ある晴れた日の森の中で、2人目
よし、2人目突入!
とある街の郊外の一角で、
「うわわわわ、遅刻するー!!」
何とも賑やかな…
‐ドタドタドタッ
「ああああああああ!!忘れ物っ…」
賑やかな…
‐ガッシャーンッ
「きゃああああっ!」
音が響き渡る。
いつもと何一つ変わらぬ日常が過ぎて行く。
「おととっ…自転車の鍵はー…あった!」
「気を付けてよ、姉ちゃん…」
「分かってる! 行ってきまーす」
自転車のペダルを漕ぐ度に聞こえる、カラカラという音を聞き、
‐そろそろこいつも寿命かな…
なんてことを考える。
今日は昨晩の徹夜が祟って、寝坊した。
今日からテストだというのに、ついていない事この上ない。
頭の片隅でそんなことを考えている間も、足はペダルを漕ぎ続ける。
この角を曲がれば学校、と勢い良くハンドルを切る。
が、しかし、曲がった先に広がるのは一面の緑、緑、緑…
「あ、れ…?道間違えたかなー」
そうならば早めに来た道を戻らなければ。
思い立ったらすぐ行動がモットーなので、すぐさま自転車の進行方向転換をするために、
後ろを振り返れば、そこに広がるのも緑。
毎日見ている、アスファルトの影は一切見えない。
それどころか、乗っていた自転車が消えていた。
‐いつの間に!?っていうか、あれ…私、ちゃんと道路走って来たよ、ね…?
「ど、ど、どうしよう!」
とりあえず落ち着け、と自分に声をかけても焦る気持ちが増していくだけ。
それは、無駄な抵抗だった。
しかもそれは、自分の精神状態を余計に悪化させるもので…。
「と、と、ととととり、あえず…おち、おおちつっ…!」
息を吸うと、ヒュッと喉が鳴った。
これはまずい、そう思ったときには、過呼吸状態に陥っていた。
そのまま意識が薄れてゆく。
こんな森の中、誰が助けに来てくれると言えようか。
虚ろな意識の中で最後に目にしたものは…
自分を上から覗き込む人影。
「全く、女がこんな所で…無防備すぎるだろうに…」
‐もう、朝かな…?
包丁を使う音、鍋の中の物が煮える音。
‐私はこれで、起きて…急いで階段を駆け下りて…お母さんとお父さんにおはよう、って
笑顔で挨拶するんだ、それで、朝ごはんを皆で…・・・・・・あれ?
こんなこと、人生で一度もなかった筈だ。
バチッと音がしそうなほど勢いよく開いた目に映るのは、木の天井。
何だか、出鼻をくじかれた気分だ。
もう少しパンチのあるものが、視界に飛び込んでくるかと思っていたのに…。
寝惚け眼を擦りながら、ぼうっとした脳がどんどん覚醒していくにつれて、
自分が今、おかれている状況を実感する。