続編
これで、1人目編は御仕舞い♪
何故だか分からないけれど、直感的に、
意識が薄れる・・・そう感じ、そして、味わったことの無い浮遊感に襲われた。
決して、奏が俺を持ち上げたわけではない。
いつの間にか閉じていた目を開こうとしたら、
「まだまだ、閉じてて!」
そう、言われ…
「目、開けていいよ…ただし!ゆっくりとね」
次に声をかけられたのは、目を閉じていても感じる、日の光にウトウトしていたとき。
ずっと視界を闇に覆われていた俺を気遣ってか、さり気なく注意してくれた。
「…ここに何があるの?さっきの場所から、そんなに離れてないみたいだけど」
「此処はね僕の、故郷の近くの森だよ。
ちなみに、さっきまで居た場所からは随分と遠くに来たんだよ?」
まるで、ちょっとコンビニに寄ったんだ、と言う位の軽さで、
彼は意味の不明な言葉を吐いた。
そもそも、まだ知り合ってから、あまり経っていないような仲だったのに。
そんな赤の他人な俺を、何で自分の故郷なんか…
この、悶々とした疑問も、奏の
「ここが、僕の故郷!」
という明るい声で、掻き消された
何故か、凄く、楽しそうだったものだから、難しく考えることを放棄することにした。
「着いて来て!」
奏は、心底楽しいというのを全身で表現するように、すぐさま走り出す。軽やかに。
近くに大河が通っているらしく、ドウドウと流れる水の音が心地よく身体に響いた。
ぽつぽつと木造の家が見え始めるけれど、奏は何処にも立ち寄る気はないようだ。
結局、案内されたのは、集落の中でも一際目立つ大きな木造建築。
大きいな、しか言えない程に大きい。
こうなると大抵のファンタジーでは、主人公が王家の人々に気に入られて、
娘を貰って、ハッピーエンドみたいなオチが付いているのだが…
‐僕の場合はどうなんだろ?
「我ながら、随分とベタな空想だよなー・・・・て、奏!?」
躊躇無く、純和風なその建物に入っていく奏に思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
‐やっぱりあれか?ベタパターンなのかああぁぁぁぁぁぁ!?
「………」
‐どうしてこうなった。
俺は、戸惑っていた。
奏に着いて、建物に入って行くとまず目に入ったのは、広々とした玄関だった。
そこから長い、長い廊下を渡り、恐らく最奥と思われる部屋に辿り着いた。
ここまで、時間にして、およそ20分。
これまた大きな襖を背にして立つ奏に、
「この奥には、僕の父が居る。ちょっとした理由でこの中から出られないんだ」
そんなことを言われたような気がした。
俺はというと、襖の奥から漂うオーラに怯んで、足が竦んでしまっていた。
最初、奏に会ったときのように、警戒心を纏った捨て猫になる。
そして、襖が開く。
奏での父である、という如何にも偉そうな人と向き合う。
厳つい顔をした彼に、ビクビクしていると
「そんなに緊張するな、少年よ」
とても、とても優しい笑顔を向けてくれた。
幼かった俺には、何よりも効く、いわば特効薬のようなものだった。
「さて、少年よ。来て早々で悪いのだが…
これから儂の言うことを、儂の代わりに実行してはくれないだろうか。」
そこには、先程の滲み出るような優しさを湛えた彼は居らず、
まだガキだった俺にも分かる程、大事なことを頼もうとする顔をした彼が代わりに居た。
「実は………・・・・・・・」