激しくなる攻撃
夜空が赤く染まる。赤く、赤く、血のように。瓦礫の山となった建造物から
噴出する炎によって。戦闘に巻き込まれた自動車から吹き出る炎によって。
賑やかだったワシントンの街は今はここにない。撃ち落された戦闘機が血のように
オイルを染み出し、無残に転がっている。黒焦げになった戦車が仁王立ちしている。
象徴である自由の女神像も円盤の攻撃にさらされ砕け散り、そこには何もない。
「大統領、ロサンゼルスを始めニューヨーク、デトロイトなど大都市が攻撃され
わが国の被害は甚大です。また救援に向かっている各艦隊からの連絡もすべて
途絶えている状態です。」
アレックス・ワシントン国防省長官がジョージ・ルーズベルト大統領に現状を
報告する。
「映画のようにはいかないものだな。ワシントン長官、あといくつ手が
残されている。」
「核のみかと。もしくは他国に援軍を要請するかです。」
「そうか、だが支援要請は断る。」
「なぜですか大統領。武器弾薬が不足している以上、他国からの援助は不可欠です。」
ルーズベルト大統領はゆっくりと席を立ち赤く染まる空を見る。
「ワシントン長官、援助を受けたとしても結果は同じことだよ。わが国の艦隊と
同じく海に沈むだけだ。」
「そうかもしれません、ではせめて核の許可を。」
プルルルルル、電話の音が鳴り響く。
「失礼します」
といってワシントンは電話に出る。
「・・・なんだと。本当か。分かった。」
そういって電話を終える。
「大統領、全米にあるすべての核関連施設が破壊されたということです。
残念ですが我々は核攻撃の手段を失いました。」
「ははは、我々の切り札などお見通しだったというわけだな。」
大統領が自嘲的に笑う。
「私は最低の大統領だ。誰一人守れない最低のな。」
「そんなことありません。自信をお持ちください大統領。全体の士気に
かかわります。」
「そうだったね長官。私は最後まで立ち向かわなければならなかったね。」
再び窓の外を見る大統領。どこかが攻撃を受けたのであろう。爆撃音とサイレンが
鳴り響いている。そしてまた空が赤く輝いている。
「くっくっく、どうだね大統領。我がアラスト星人の力は。
気に入っていただけたかね。」
突如、アラスト星人が連絡をよこす。
「ああ、最悪な気分だよ。だが、神は貴様らを決して許さないだろう。」
「神か、ああ神か。これは愉快だ。虫けららしい発想だ。そう言えば前も似た
ようなことがあったな。神を信じていてな。『俺らが倒れても神が貴様らを
葬るだろう』とかいっていた星があってな。まあ結局、その星の虫けらも
一匹残らず葬ってやったがな。」
アラスト星人は下品な笑いをし大統領を見下す。
「まあ、あれだ大統領。虫けらは虫けららしくしろということだ。長い間、
楽しかったよ。でも、もう飽きた。さよならだ。」
プツッと回線が途切れる。その直後、ホワイトハウスは攻撃を受け、
燃え盛る炎の中で大統領は命を落とした。




