ぶつかり合い
防衛省の一室。
ロシア情報部、鉄姫妖精の各リーダーそして巨大ロボットのパイロットが一同に
集められた。
「すみれ元気? この前はごめんね、色々と。」
ソフィアは陽気に振舞う。すみれは目も合わせず席に着く。
「あっちゃあ、こりゃしばらく許してくれそうもないわ。」
ソフィアは自分の頭を軽くこづく。
「みなさん、集まっていただけましたでしょうか。内容は説明することもないかと
思いますがアラスト星人についてです。また先日の日露会談で、両国の情報部は
統合しエスペランザという新組織で運営することが決定しております。なので、
霧島すみれ、ソフィア・マイスキー両名が中心となって活動を行ってください。」
飛鳥防衛大臣がこれまでの経緯を説明する。
「待って下さい、大臣。それではカムイのパイロットはどうなるのですか。」
すみれが質問する。
「問題ありません。すでに手を打っております。お入りください、岩本宏2等空尉。」
「はっ、失礼します。」
飛鳥に呼ばれて岩本が部屋に入ってきた。
「霧島すみれに代わり岩本宏がカムイのパイロットとなることが決まりました。
必ずや任務遂行して見せます。」
岩本はそういって敬礼をした。
「そういうことですので霧島さん、エスペランザのほうをお願いします。」
「分かりました。飛鳥大臣。」
すみれはしぶしぶ了承する。
「そういえば、グリセリド。わたしの代わりってどうなるの」
ソフィアの質問に
「ソフィア君、まだまだ君は甘いな。予想外の出来事に対応する力がないな。
この天才、こんなこともあろうかと思い、すでに準備しておいたのだよ。
入りたまえ、我が愛しのオメガよ。」
「ハイハイハーイ。お呼びでしょうか教授。」
間抜けな声と裏腹にすさまじい音と共に部屋のドアを破壊して入ってくる
人間サイズのロボットらしきもの。
「紹介しようソフィア君。彼女は俺様の夢と妄想を努力によって現実化させた
ヒューマノイド、その名もオメガだ。」
「オメガとモウします。よろしくおネガイいします、ソフィア。」
とすみれのほうを見てお辞儀する。
「バカ、ソフィアはこっちよ。しかも初対面で呼び捨てとは親の顔が見てみたいわ。」
「このドジッ娘機能を持たせるのにどれだけこの天才が苦労したと思っているのだ。」
「そんな機能いるか!」
ソフィアがグリセリドの頭をはたく。
「とにかくソフィア君。彼女が君の代わりに俺様とジークフリードを操縦するから
何の心配は要らない。思う存分暴れてきてくれたまえ。」
「そうでございます。オメガと教授がいれば天下無敵であります。何の心配も
しないでイキヤガレであります。」
「分かったわよ。そのかわり負けたりしたら、そこのガラクタ分解してやるからね。」
ソフィアはグリセリドの無茶苦茶さにあきれ果てた。次にすみれの前に立ち
「すみれ、あなたが私に怒るのは理解できる。許せとは言わない。ただ今は
あのタヌキをつぶすのが最優先よ。だから・・・」
「殴らせて。」
思わぬすみれの言葉にソフィアは驚いたが
「いいわ。どこでも好きなだけ。」
ソフィアは目を閉じ、そして歯を食いしばった。すみれはこぶしを握り締め部屋中に
鳴り響くほど力強くソフィアの左頬を殴った。軽く脳震盪を起こしたソフィアは
よろめきながら近くの机につかまる。
「ちょっと、顔を殴るかフツー。しかもグーで。なんかフラフラするわ。全く女の
力じゃないわね。」
「私だって撃たれてから鍛えたんだよ。痛かった?」
「痛かったわ。次はどこにする。」
「うん、もういい。人を殴ったの人生で初めてだし気持ちのいいもんじゃないね。」
すみれの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「ごめんね」
すみれはソフィアの腫れた頬を撫でる。
「いや、私のほうこそ悪かったわ。」
ソフィアはすみれを抱擁する。
「まあ一件落着ということでお開きだな。では参るぞオメガよ。ジークフリードと
カムイを宇宙でも活動できるよう改造するのだ。」
「ハイハイハーイ、教授。ではとっとと参りましょう。」
部屋から出ようとするグリセリドの服を飛鳥が引っ張り、引き止める。
「グリセリドさん、忘れ物ですよ。」
そう言い、グリセリドに紙切れを渡す。みるみる顔色が変わるグリセリド。
「扉の修繕費です。先ほど見積もりをしてもらいました。お願いしますね。」
すでにグリセリドの姿はなかった。
「逃げたなあの野郎。国家権力なめるなよ。」
と飛鳥が普段とまるで違う口調でぼそっとつぶやいた。




