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領土奪還戦争  作者: マンチカン
第三章 揺れる世界
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謎の襲撃

「我が主よ。我々四天王は攻撃の配備を整えております。いつでも出撃の命令を。」

およそ人ではない異型の形をしたものどもが男に跪いている。

「そうだねえ。あの優秀な人形たちもこの国の権力を掌握したし、僕も自由に動ける

身分だし、アラスト星人が地球侵略を始めている今、頃合かもねえ。」

「では、いよいよ開始なされるのですか。」

牛の頭をした男が男に尋ねる。

「そうだねえバアル。我らの悲願を達成させるための聖戦の前哨戦を始めようか。

では手始めにバアル。君はソウルを落としてきてくれないか。そしてサタン。

君は竹島を占領してくれないか。あとの二人は英気を養ってくれたまえ。」

かしこまりましたと四人が頭を下げる。バアルは部下たちの下へ行き演説を始めた。

「お前たちに朗報がある。我々はついに悲願を成就するための聖戦を開始することを

決断した。そして、このたびはその前哨戦としてソウルという地を占領する。

お前たちに肝に銘じておく。我々の成果が後々に影響するのだ。心してかかれ。」

猛々しい雄たけびがあたりをこだまし、バアルの軍はソウルに向けて進軍を始めた。

「おい、なんだあれは。」

ソウル市内の人々が異変に気づく。

「空にひびが入っているぞ」

周囲に人が集まってくる。そのひびはピキピキと音を立てるかのように広がり、

割れ、割れたところは、そこだけ夜になったかのように真っ暗であった。

そしてバアル軍がそこから現れ攻撃を開始する。口から炎を吐くもの、

指先の爪を弾丸のように発射するものなど。人々は焼かれ、撃ち抜かれ、崩壊した

ビルに下敷きにされた。ソウルは一瞬にして地獄になり日が沈むまでバアル軍の

攻撃は続いた。

「パク総書記。まことに勝手だがソウルを攻め落とさせてもらったよ。さらに竹島も

今、占領中さ。」

男はうっすらと微笑んで朴に報告する。

「そんなこと私は許可した覚えはないぞ。」

「だから勝手にやったって言っているじゃないか。」

男は表情一つ変えずに言う。恐ろしい男だ。パクはそう思った。確かに奴に国防に

関しては一任したが、ここまでとは。だが私がここまで上れたのは彼のおかげだ。

「そう言えば韓国は未だにトップ不在だったね。」

「それがどうかしたのか」

「いや、南北統一するには絶好のチャンスじゃないかな。南には戦う力はほとんど

残されていはいない。統一に従わなければ他の大都市がソウルみたくなるぞって

言えば。」

男はパクにおどけたようにウィンクをする。背筋が凍りつくような感覚がパクを

襲った。パクは韓国の外交通商部長官のキム・ヘンパクに電話をかけた。

「久しぶりだなキム長官。」

「そ、その声はパク大統領。いや、今はパク総書記でしたね。ソウルの件について

説明していただけますか。あの魔獣みたいなのを送り込んだのはあなたですよね。」

「魔獣?何のことだ。さっぱり分からない。」

魔獣だと。それはファンタジーの世界の話ではないのか。

「どうかしましたか。パク総書記。」

返答が返ってこないパクに苛立ちをあらわすキム。返答に詰まっているパクに男は、

僕が代わろうといってパクから受話器を奪う。

「はじめまして。僕は北朝鮮軍の国防長官を務めているものだ。キム長官だったけ。

そうだよ。君の考えている通り、あれは僕が送ったものだ。気に入ってくれたかな。」

「ふざけているのか。あれで何十万の人間が死んだんだ。説明ぐらいするのが

筋だろう。」

キムの怒りが受話器の外からでも聞こえる。男は彼の怒りなどまるで意に介さず

「一言で説明するなら南北統一したいということだ。韓国の政権運営をすべて僕らに

渡すのであればソウルの悲劇はそこでおしまいだ。でも抵抗するのなら他の都市にも

攻撃するよ。でも抵抗できるのかな。自国の軍は壊滅状態、さらに在韓米軍は

撤退しているこの状況で。」

この男はいったい何なのだ。まさか大統領の脱走や周国家主席の行方不明も

こいつが関わっているのか。あの魔獣を使ってくるとなると、こいつは人間かすら

怪しい。キムは男に対し疑念を向けていると、それを見透かしたかのように

「あまり詮索はしないほうがいい、キム長官。」

と男は釘を刺してきた。

「それよりどうするんだい。」

男はキムに強く迫る。

「分かった。君たちの言うとおりにしよう。」

「ありがとう。これで悲願の南北統一はないし遂げられたよ。では、また今度。」

そういって男は電話を切った。

「パク総書記、おめでとう。これで南北統一ができたよ。」

「魔獣とはどういうことだ。」

パクの質問に男が答える。

「ただのキメラ生物だよ。バイオテクノロジーを駆使したね。次世代の兵器を

実践投入しただけだよ。」

「ならいいが。」

「そう、なら僕はこれで失礼するよ。」

男は部屋から出て行った。

「ただいま戻りました。我が主よ。」

「ごくろうだったねえ、バアル。派手にやってくれたかい。」

「もちろんです。もはや生き残ったものはありますまい。」

「そうか、それはすばらしいね。」

男はバアルの頭を撫でる。その頃キムは韓国軍元帥のイ・ミョンハンにメールを

起こった後、自らの頭を銃で撃ち抜いた。


一方、バアルがソウルを襲撃しているときサタンは竹島襲撃体制を整えていた。

「サタン様、あのような小島になぜ行くのでしょう。」

部下の一人が質問する。

「あそこには我々が目指す世界の鍵があると主はおっしゃっていた。どのような

鍵かまでは分からないがな。」

サタンが答える。

「今あの島の警備は手薄と聞く。攻めるには絶好の機会ではあるがな。

人間ごとき俺一人で十分だ。行ってくる。」

そういうとサタンは単身で竹島に乗り込んだ。

竹島上空が突如裂け、サタンは竹島に上陸した。サタンは近くにいた兵士の頭を

掴むと握り締めヘルメットもろとも砕いた。

「脆いな人間というものは。では次はこれだ」

サタンは翼をはためかせる。発生した暴風が人や建物すべてを吹き飛ばした。

更地になった島を見たサタンは

「仕上げと行くか。風盾!」

そう叫ぶと竹島を中心とした大気の渦が発生した。

「ふっ、他愛もない。」

サタンはそうつぶやくと男のところへ帰還した。

「主よ。ただいま戻りました。」

「おかえり、サタン。それでどうだい。」

「はっ、竹島を占領、そして風盾をかけておきました。」

「それは素晴らしいねえ。ありがとう。これでまた目的に一歩近づいたよ。」

男はサタンの頭を撫でながら言った。

「ではそろそろ僕も力を振るうかな。」

「振るうと申しますと」

アスタロテが少し興奮したような面持ちで聞く。

「なに、たいしたことないよ。この二カ国をカーテンで覆うだけだよ。

準備はまだまだあるし誰にも邪魔されたくないしね。」

「空間を切り離すのですね。ご主人様。」

アスタロテは目をキラキラさせて男に聞く。

「そんな大層なものじゃないよ。ただ相手の因果を無効化するだけだよ。

ねえ僕の可愛いアスタロテ。一つお願いを聞いてくれるかい。」

「もちろんでございます。ご主人様。なんでございましょう。」

男はアスタロテの髪を撫でながら話し始めた。

「この結界を張るとね、外部との連絡が取れなくなってしまうんだ。だから君に

世界の様子を調べて僕に報告してくれないかな。人型である君にしか頼めない

仕事なんだよ。できるかい、可愛いアスタロテ。」

「もちろんでございます。ご主人様。このアスタロテ、ご主人様のためなら、

たとえ火の中水の中どこまでもお供いたします。」

「ありがとう、アスタロテ。では君にこのネックレスを渡しておくよ。

話しかけるときはこの十字架に話しかけるといい。これだけが外と中を繋げる

唯一の手段だからね」

男はアスタロテにネックレスをかけてあげ、唇にそっと口づけをする。

アスタロテの頬は赤く染まり恍惚の表情を浮かべる。

その頃日本では

「飛鳥大臣。大変です。」

血相を変えて飛鳥の下に秘書が入ってくる。

「どういたしました。」

「竹島が突如、謎の突風に取り囲まれました。中との連絡も取れません。また風も

非常に強く付近に近づくこともできません。あと、朝鮮半島が黒いカーテンの

ようなものに突如包まれました。」

「なんですって。」

飛鳥が素っ頓狂な声を上げる。

「これが現在の様子です。」

秘書が映像を見せる。

「巨大な竜巻と黒いカーテンね。分かりました。これについては日中露合同協議に

おいて氷室首相に提案していただきます。」


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