本国へ帰国
タナトスと別れたマヤは即、エスパレスに帰国した。
「失礼します。マヤ・ルクレールです。オットー・ヘリコム元帥は
いらっしゃいますか」
「入りたまえ、マヤ海軍大将」
マヤはオットー元帥に日露の驚異的な軍事力の増強とアラスト星人における
地球侵略について報告を行った。それを聞いたオットーは
「そうは言っても、両国の力はまだまだ幼稚なのだろ。」
「はい、我々と比べ稚拙ではあります。それはさておき、アラスト星人に対して
政府の反応は。」
「現時点では静観とのことだ。」
オットーの答えにマヤは怒りを露にした。
「静観だと。この星の運命がかかっているのにか。それに彼らではアラスト星人に
対抗するすべを持たないと分かっているのにか。」
「ああ、残念ながらそうだ。我々軍人は命令が出なければ出撃できない立場だ。」
くっ、思わずマヤは拳を握り締める。この国の政治が外に対して不干渉なのは
知っている。だがこの状態でも、それを通すというのは絶対に間違っている。
「マヤ将軍。」
「何でしょう、元帥。」
「ここでの話だが、私は軍を抜けようと思う。」
「それは何故でしょうか。」
マヤは聞き返す。
「国の命令に左右されない軍隊を作るためだ。そうなれば国の命令なしで
動けるからだ。俺は軍人だ。守れる力があるのに使わないなんてことは
できないからな。」
マヤは少し黙った。そして
「それはもう少し待たれたらいかがでしょうか。なぜなら、すぐに財政が
枯渇します。」
「やはりそうか。そうなるよな。まあいい、今のは忘れてくれ。少し話は変わるが
マヤ将軍。君の耳にも入れて欲しいのだが空軍将が現在拘束中だ。よって空軍は
現在、完全に機能はしないと思って欲しい。」
マヤの顔が驚きに変わる。
「なんですって。彼がいったい何をしたのですか。」
「どうやら機密費を私的に使っていたらしい。だが、私は無実だと信じている。
何よりもタイミングが悪すぎる。異星人の侵略が身近に迫っている中にこの事件だ。」
「たしかに怪しいですね。だが、元帥。ここは我慢しどきです。」
マヤはオットーに制止を促す。
「そうだな。君の意見を取り入れよう。ただし、いざとなったら処刑覚悟で私は各軍に命令を出す。ついてきてくれるか。」
「もちろんです、元帥。それと一つ、原子力潜水艦を一隻、使用許可を
いただきたいのですが。」
「ああ、分かった。そんな旧式どうするつもりかね。」
「念のためであります。」
マヤはきっぱりとそれだけ言った。




