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領土奪還戦争  作者: マンチカン
第三章 揺れる世界
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里帰り

日本とロシアの巨大ロボットによる戦闘が行われているのはマヤは注目していた。

理解できない。両国とも兵器の進歩スピードが異常に速い。日本はエスパレスが

裏で技術提供しているが、ロシアにはそれはないはず。どちらにしろ、

いったん本国に帰って報告せねばならない。マヤはいつになく焦っていた。

「マヤさん。どうかしましたか」

「いや何でもない。ところでタナトス、たまには天界に里帰りする気はないか。」

思わぬ質問にびっくりするタナトス。

「里帰りですか。う~ん。今のところないですね。」

「私はこれから本国に帰って、現状を国に報告しなければならないのだ。だが、

お前は本国には入れない。前科があるからな。そうするとお前とはしばらく

別行動になる。だからその期間だけでも、と思ったのだが。」

マヤがじろっとタナトスを見る。見られたタナトスはびくっと体を震わせ、

うつむいてしまった。だが観念したように

「分かりました。そういうことでしたらしばらくの間、里帰りさせていただきます。」

「すまないな。無理を言って。」

「いえ、慣れていますから。またお会いしましょう。」

タナトスはそう言うと自分の足元に魔方陣を描く。魔方陣から光があふれ出し

光がタナトスを包み込んだ。そして光とともにタナトスも消えた。跳躍の最中、

タナトスの目の前には海や森など色々な景色が混じり合う。酔いそうになった

タナトスは目をつぶり、跳躍が終わるのを待った。もう終わっただろうか。

うっすらと目を開けると、そこには巨大な脊柱に支えられたコロシアムがあった。

無事に着いたんだ、とりあえず一安心と。コロシアムかあ。懐かしいな。

まだ獣と囚人を戦わせているのかな。ちょっと覗いてみよう。不思議だなあ。

あの時は、あまりのひどさに目を背けていたのに。あれ、音楽が聞こえる。

昔は歓声と断末魔の悲鳴だったのに。時代も変わったのね。恐る恐るコロシアムに

入るタナトス。音はどんどん大きくなる。入場料は昔と変わらず無料だ。

入り口の扉を開けるとタナトスは目の前を疑った。そこには色とりどりの光る棒を

調べに乗って振る観客、彼らの視線はセンターホールに集中していた。

視線の先には白い翼を持つ美少女が歌っていた。センターホールの上から照らす光が

彼女の可憐さをより際立たせていた。

セリア!セリア!

観客が彼女の名前を呼んでいる。タナトスが記憶していた血なまぐさい格闘場は

アイドル歌手が歌うコンサートホールと化していた。あまりの変化に思わずその場を

離れるタナトス。いったいどうなっちゃったの天界は。血を見るよりはましだけど。

あの雰囲気はちょっとついていけないよ。

「そこの可愛いお嬢さん、ちょっとお話いいかな。」

死神とて女の子、可愛いといわれて悪い気はしない。思わず振り向くと、

そこには一人の男が立っていた。

「可愛いなんてとんでもないです。私なんてただの田舎娘ですから。もっと他に

可愛い子はいますよ。」

タナトスは謙遜する。

「いや、私の目には狂いはないね。私のイメージぴったりだよ君は。特にこの

漆黒の翼。これだけ美しい黒を見るのは君が初めてだ。」

「そんなに褒められても、何かくすぐったいです。」

「いや、そんなことはない。もっと自信を持ちたまえ。君にこれを渡そう。

気が向いたら連絡してくれ。」

そういうと男はタナトスに名刺を渡した。

エンジェルファクトリー芸能事務所、ビブリオ・フレミング。連絡先は・・・・。

ぽかんとタナトスはしばらく立ち尽くした。


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