日露激突
国後島に向けてカムイが出撃する。しばらくすると巨大な建造物が見えてくる。
「あれが、ロシアの巨大ロボットですね。レーザー、ミサイルすべてを無効化した。」
すみれの質問に坂井は
「ああ、何一つ効果なかったってさ。」
と答える。一方グリセリドは
「ポンコツがやってきたか。しかし天才の真似事をしても所詮は凡人。
真似事すらできないことを肌身に染み渡らせてくれるわ。」
と自信ありげである。グリセリドの目の前にカムイが立つ。ロシアの
ジークフリード、日本のカムイ。両者が睨み合う。そして前進。戦闘が開始される。がっぷり四つでぶつかり合う。どちらも譲らない。パワーは互角だ。
ジークフリードの拳がカムイの顔面にクリーンヒットした。
「うわっっっあ」
「きゃゃゃゃあ」
すさまじい衝撃が二人に襲い掛かる。次に蹴り、パンチが絶え間なく降り注ぐ。
「この程度か凡人。ほれほれ」
「すみれ、あんたたちってこの程度なの」
ジークフリードがカムイを持ち上げそのまま投げ飛ばす。コックピット内に
凄まじい衝撃が走る。
「あうっ、げほ、げほ。」
たまらずすみれが咳き込む。
「ちくしょう。なんて強さだ。こいつをぶん投げるなんて。
インチキもほどがあるぜ。」
横たわるカムイにジークフリードは容赦なく踏みつける。二度、三度。
さらにカムイの腹を蹴り飛ばす。はるかかなたまでカムイは吹き飛ばされる。
その衝撃ですみれの意識は吹き飛んだ。
「おい、すみれ、起きろ。目を覚ませ」
坂井がすみれの体をゆすりながら声をかける。
「う、う~ん。」
坂井の必死の呼びかけですみれが目を覚ます。
「大丈夫か」
「た、たぶん大丈夫です。」
口の中を切ったのであろう。血を吐きながらもかろうじてすみれは意識を保つ。
それと同時に死の恐怖が彼女を襲う。今度こそ死んじゃうのかな。いやよ。
まだ死にたくない。死にたくない。死にたくない。私はまだ何も成し遂げてない。
「もう動けないのか。情けない。さらば凡人」
「ごめんね。すみれ。これが戦争なの。わが祖国ロシアのために死んでくれない。」
巨大な砲門がカムイに向けられる。
「この野郎。ここで死んでたまるか。食らえフラッシュグレネード。」
強烈な閃光があたりを照らす。
「うぎゃぁぁあ、まぶしい。目が、目があああ。くそっ、やるな筋肉バカ。」
カムイがその間に体勢を立て直しジークフリードに飛び込み首元に噛み付く。
「この凡人筋肉バカが。俺様が作ったロボを傷をつけるとは許さん。」
すぐさまジークフリードが蹴りを入れる。カムイが後ろに飛びこれを交わす。
そして回転。ジークフリードに尻尾アタックを入れる。
「きゃゃゃぁあ。」
ソフィアの悲鳴がジークフリードのコックピットの中に響き渡る。
「よし、チャンスだ。フィンガーミサイル発射。」
カムイの指先から複数のミサイルが発射される。
「反物質シールド出力130%上昇。」
ソフィアが瞬時にシールドの出力を上げる。
ミサイルはシールドにぶつかり次々と爆発する。
「この程度の攻撃が効かんということが学べないのが凡人の哀れなところよ。
この超天才の俺様とこうして時間を共有できたことだけでも幸福だったと思いながら
朽ちるが良い。さらばだチャオ!」
「さよなら380ミリ荷電粒子砲発射。」
強力なビームがカムイに直撃し装甲の一部を溶かす。
「胸部装甲20%破損。各種攻撃システムダウンです。坂井さん。」
「て、ことは80%あるんだな。じゃあまだ大丈夫だな。」
外からグリセリドの余裕たっぷりの笑い声が聞こえる。
「はっはっは。どうだ思い知ったか。これが天才が作った破壊ロボと凡人が作った
ポンコツとの違いよ。そうかそうか骨身にしみたか。」
「ふざけやがって、ちくしょうが。あのマッドサイエンティスト。お返しだ。
すみれ、コロナプラズマ砲を」
「了解です。コロナプラズマ砲発射!」
100万度を超えるプラズマがジークフリードのシールドを突き破る。
「なにいぃぃい。信じられん。アンビリーバボ。シールドを突き破るとは。
この天才を驚かせる存在があるとは。」
「やるわね、すみれ。久々に燃えてきたわ。」
ソフィアのテンションが上昇していく。一方すみれの方も変化が起きていた。
「はあ、はあ、はあ。」
息が荒れるすみれ。心配した坂井が
「息が荒いぞ。すみれ。顔も真っ赤だし。大丈夫か。」
「大丈夫です。私は。何だろ。先ほどから熱いんです。そう、熱い・・・熱いです。
心も身体も。」
すみれの心の中に今まで体験したことの無いような熱さがこみ上げてきた。
「それが、燃えるっていうことだぜ。すみれ」
「燃える・・・これが。ソフィアちゃん。いえ、ソフィア。私はあなたに
負けたくない。負けない。勝負よソフィア。」
すみれの闘争心も今まで以上に上がる。戦いは激しさを増し、二つの巨大ロボが
同時に拳を繰り出し互いの顔面に叩き込む。衝撃が両者を吹き飛ばす。
すぐさま立ち上がりビーム砲を打ち合う。ビーム砲は途中でぶつかりすさまじい
火花を散らして爆散。世界初の巨大ロボット同士の戦い。日本がロシアが世界が
この世紀の決戦を固唾を呑んでみている。そして戦いは次のステージに進む。
「凡人め。この天才に恥をかかすとは許さん。あのポンコツのどてっぱらを
貫いてくれる。射出、ロンギヌス。」
ジークフリードから巨大な青く光り輝く槍が出てくる。
「なんじゃありゃ。」
坂井が素っ頓狂な声を上げる。
「大丈夫です。坂井さん。こちらも相応の武器があります。射出、天叢雲」
カムイから巨大な白く光り輝く剣が現れる。
「なによあれ。あんなの隠し持っていたのあいつら。」
度肝を抜かれたソフィアが動揺する。
「うろたえるなソフィア君。所詮奴らは凡人。この天才が開発した武器の
パクリ物だ。だから心配することはない。」
「あんたが言うと余計に不安になるのよね。でも偽者はオリジナルにはかなわない
ところを見せつける必要があるわね。ふふっ、すみれ。串刺しにしてあげるわ。」
グリセリドの言葉にソフィアは落ち着きを取り戻す。巨大な槍と剣が常識を超えた
エネルギーを放ちながら衝突する。
「しびれるぜ。剣を通して身体がしびれるぜ」
「とんでもないパワーです。」
両者も一歩も譲らない。ジークフリードがカムイを貫こうと乱れ突きをする。
それを華麗に交わしながらカムイはジークフリードを両断しようと巨大な剣を
超音速で斬りかかる。
「よし、もらった。」
坂井の勝ち誇った顔も次の瞬間、驚きに変わる。
「なんじゃそりゃああ。」
ジークフリードが白羽取りでカムイの攻撃を止める。
「甘いわ凡人。命乞いしたって許してあげない。この天才が月に代わって
素晴らしきサディスティックなおしおきしてあげるからおとなしくお縄につけい。
そして自らの無能さを嘆き悲しみそしてこの天才を崇拝しながら三途の川の
向こう岸の三角州まで行くが良い。」
ジークフリードの巨大な槍がカムイの胸板めがけて突進してくる。
「これぐらいの速さじゃ蜂の巣にはならないな変態電波さんよ。」
ジークフリードの攻撃をひょいひょいかわしながら坂井がグリセリドを挑発する。
「ぬわにぃぃ。この世は真に秩序的な摩訶不思議である。神に選ばれし天才の
この攻撃をかわすとは。どうやら火のないところに火をつけてしまったようだな
貴様は。仕方があるまい。最終兵器起動キー解除だソフィア君。」
「準備はいつでもオッケーよ。」
ジークフリード主砲にエネルギーがチャージされる。
「すみれ。こちらもそろそろ決めるぞ。」
「任せてください。量子エネルギー充填開始。充填率50、60・・・100%突破。さらに上昇。臨界点到達。いつでも発射できます。」
カムイのほうも負けてはいない。
「ポンコツよこれでさらばだ。貴様との思い出は俺様が心の隅っこにちょこっとだけ
残しておいてやろう。さっさと光となって果てるが良い。反物質砲発射。」
「能書きばっかりうるさい変態電波野郎め。ブラックホール砲発射。」
すべてを光にするエネルギーととすべてを吸い込む超重力がぶつかり合う。
二つの対称的なエネルギーがせめぎあい、ついに大爆発を起こす。
すさまじい爆風と熱が二体の巨大ロボをはるかかなたに吹き飛ばした。
2028年5月のとある金曜日




