呼び出し
「説明してもらえますか。霧島海上幕僚長。」
飛鳥が霧島に問い詰める。無理もない。
「まことに申し訳ありません飛鳥大臣。正直、想定外でした。」
「有事において想定外は禁句ですよ、霧島さん。被害が無かったから良かったものの、全滅の可能性もあったわけですし。」
「返す言葉もありません。」
霧島はひたすら頭を下げる。
「今後はどうするおつもりですか。いづれ、あのロボットと戦う可能性も
あるわけですし。」
「はい、こちらも巨大ロボットで対抗いたします。」
飛鳥ははあ、と一つ大きくため息をついた。
「ロボットで戦うですって。あのねえ霧嶋さん。漫画じゃないんですよ。」
「しかし大臣。現に相手はそれを完成させ実戦投入させて下ります。」
霧島の答えに飛鳥は怒気を強め
「ではお聞きしますが、製作にかかる費用、期間はどのくらいかかりますか。
仮に完成したとしてパイロットの安全性、そして訓練期間はどのくらいですか。」
「・・・・・・」
飛鳥の詰問に霧島は黙ってしまった。飛鳥はまた一つ大きくため息をついて
「もう結構です。霧島さん。もう少し現実的な案を出してください。」
コンコンとドアをノックする音が突如聞こえた。
「どうぞ、お入りください。」
飛鳥がいつもの口調に戻して扉の先の人に声をかけた。
「失礼します。」
と入ってきたのは防衛省統合兵器開発部リーダーの本田翔だった。
「めずらしいわね、本田さん。あなたが尋ねてくるなんて。なんの御用でしょうか」
「はい、ご報告したいことが2件、お見せしたいものが一件あります。」
「霧島さん、あなたは退席して結構ですよ。」
「いえ、霧島海上幕僚長、あなたにも見ていただきたいのです。ロシアと交戦した
あなたに。」
本田の要望に飛鳥は驚いたが
「分かりました。霧島さん。席におかけください。」
「ありがとうございます。飛鳥大臣。ではまず一つ目。ジークフリードとの
交戦記録です。」
本田は交戦記録のレポートを二人に配った。それを見た霧島が
「どうなっているんだこれは。ミサイルが目標に当たる前に爆発しているでは
ないか。」
「どこをどうしたかは現在不明ですが反物質を利用した防御兵器だと考えられます。」
「反物質ですか。それは現在、日本の技術で作ることは可能ですか。」
飛鳥の問いに
「いえ、不可能です。」
「そうですか。分かりました。それでモウ一つの報告とは。」
「これをご覧ください。」
本田は数枚の写真を取り出した。
「これは何ですか。月ですか。」
「はい、月の裏側を撮った写真です。」
その写真を見てみると無数の人工物が映し出されていた。
「一体なんですかこれは。」
どう理解してよいか苦悩している飛鳥に
「おそらく地球外生命体が建設した基地の可能性が大きいと思われます。」
本田の答えに飛鳥はすみれの報告が頭をよぎった。あれは本当だったのね。
「どうかなさいましたか大臣。」
「ちょっとね。これを見てもらえないかしら。霧島さん。あなたの娘さんからの
報告なのですが。」
そういって飛鳥はすみれから手渡されたCDを再生した。見終わった後
「どう思いますか、二人とも。私はこれを見たとき、あなたの娘さんの報告を
信じませんでした。でも、本田さん。あなたの報告を受けて少し信じてみようと
思います。」
「たしかに突然これを見せられて信じろというほうが無理だと思います。
自分なら信じません。」
と本田が答えた。霧島は
「タヌキですか。」
と答えるだけだった。飛鳥は
「あともう一つは何でしょう。お見せしたいものがあると。」
と話を戻した。
「はい、それは後日、野外実験所でお見せします。」
本田は胸を張って答えた。
2028年5月3日




