グリセリドの挑発
防衛省のとある管制室にそいつは勝手にTV電話をかけてきた。
「ハロー日本の諸君。元気かい?俺様の頭脳は今日も絶好調だぜい。」
ロシアのマッドサイエンティスト、グリセリドである。管制室内の一人が
「何者ですか、こいつは。」
と上司らしき人に問いかける。
「分からん。とりあえず続けろ。」
命令を受けたオペレーターがグリセリドと会話を試みる。
「君はいったい何者だ。そして何のようだ」
「この俺様を知らないだと。防衛省の情報力は情けない。ああ本当に情けない。
シェイクスピアが喜劇に見えるくらいだ。」
まるでコミュニケーションが成り立たない。オペレーターがグリセリドに対し再度
「で、君は誰なんだ」
と問いかける。
「俺様は神に選ばれし天才、グリセリドだ。この天才とこうして会話できるということが君たちの人生でどれだけ有意義であったかとういう事が大往生する三秒前くらいに
気が付くであろう。」
オペレーターはいらつきを抑えながら会話を続ける。
「で、用件は何だ。」
「そうであったな。この天才とあろうものが失念するとは俺様も人の子か。
まあいい、これを見よ。」
グリセリドがカメラの位置を変える。そこには巨大な人型ロボットが現れた。
「驚いたか。絶望したか。これこそ俺様が開発した究極兵器、その名も
ジークフリードだ。こいつを近日中に国後島に配備する。君たち凡人が作った
兵器がどれほど無駄なことか思い知らせてあげよう。それではチャオ。」
プツン・・・。電話が一方的に切れた。
「何なんだあいつは。頭イカれているのか。」
一人が怒った口調で声を上げる。
「ほっとけ。どうせただのガラクタだろ。上に報告することもないさ。」
結局、グリセリドの挑発は不発に終わった。
2028年4月25日




