沖縄奪還戦開始
キャンプシュワブを占領した日本軍に次々と補給物質が届く。戦車、戦闘機、
爆撃機はもちろんのこと輸送機や空挺戦車などなどである。その様子は世界の
10年いや20年は先に行くであろうとされている最新兵器の展示場のようでも
あった。さらに陸・空軍合わせて2000人もの兵や燃料や食料などである。
準備が整ったと同時に日本軍は奪還作戦を開始した。まず宜野座にある
元米軍演習場に雷電ⅡそしてA―10を改良した『流星』の混成部隊が基地上空の
制圧に向かって動き出した。人民解放軍のJ21が即時応戦しにきたが雷電Ⅱの
敵ではない。雷電Ⅱが新武装したIRSTが複数のJ21を捕捉、ただちに
マルチロックオンされレーザー攻撃を浴びせる。そのため人民解放軍の戦闘機は
離陸後すぐに撃墜された。続いて流星からJDAMが元演習場に襲い掛かる。
空爆後に地上からは20式戦車が突入を始めた。生き残った99式戦車が
125ミリ滑空砲を発射。20式がすぐさま迎撃レールガンを発射しこれを打ち払う。その情報を受けた別の20式が先ほど滑空砲を発射した99式に
80ミリレールガンを叩き込む。超音速の弾丸が一瞬にして99式を貫通する。
そして爆発。敵戦車は完全に沈黙した。その後も圧倒的な攻撃力を駆使し
元米軍演習場を一日で制圧した。戦闘らしい戦闘すら起きずに敗走する人民解放軍。
日本軍の進撃は止まることを知らない。続いて元北部米軍練習場に数十機の流星が
じゅうたん爆撃を行う。爆撃後すぐさま空挺部隊が輸送機MV―23から急襲。
地域制圧を開始。瞬く間にキャンプシュワブを含めた北部全域を制圧した。
この情報は中南海にもすぐに知らされた。
「周国家主席。我が人民解放軍はまるで歯が立ちません。戦力差がありすぎます。」
張国防部部長の報告に周は唖然として
「冗談をよしてくれないか張部長。まだ数日しか経っていないではないか。」
周の言葉に
「冗談ではありません。沖縄はもってあと一週間です。現在、日本に対抗できる陸、
空軍戦力はほとんどありません。一時撤退するのが懸命です。これ以上、
兵士の犠牲を増やすわけにいきません。」
「そうか、では核を使え。」
「いえ、それはできません。核を使用したら国際社会から孤立することは
間違いありません。それに日本のミサイル迎撃システムに迎撃されるのが落ちです。
それは主席もお分かりのはずです。」
張の説得に周は
「おい、そこの警備兵、この者をひっとらえろ。」
突然名指しされた警備兵は
「国家部長をですか。」
きょとんとした声で周に聞き返した。
「他に誰がいる。私の命令が聞けないのか。」
「は、はい分かりました。それでは張部長、こちらへどうぞ。」
「周主席。お待ちください。話はまだおわっておりません。」
張は必死に語りかけるが、周は
「私は終わっているのだよ。張元部長。それても君の人生をここで終わりにするか。」
おもむろに銃を張に向ける周。
「分かりました。周主席。」
張は警備兵に連れて行かれ、周の目の前から姿を消した。何が撤退だ。
我が人民解放軍が敗れてたまるものか。だが張はうそを言う男ではないのも事実だ。
これ以上、兵の犠牲を増やしたら私に対する求心力は落ちることは明らかだ。
張には敗戦の責任をとってもらうことにするか。
「これがお望みなのかな。ええと・・・」
「名など気にしなくていいよ。そうだね、敵に華を持たせるのも大国の役目だよ。
小国に一時の夢を見せてあげようよ。その後、絶望を与えればいい。
いやというほどね。」
「残酷な奴だな君は。」
中南海で不穏な動きがある頃、韓国の牢屋でも不穏な動きが起きていた。
「どうだい。牢屋の気分は。元大統領」
「いいわけがないだろう。日本が無ければ私がこんな目にあうはずが無かったのだ。」
パク元大統領に彼が話しかける。
「日本を消し去りたいかい。元大統領。」
「当たり前だ。存在自体が憎たらしい。」
「そうかそうか。そこまで憎いか。素晴らしいことだよ憎しみは。人の力を際限なく
高めてくれる素晴らしい感情だよ。パク元大統領、君はこの国の大統領で収まる
器ではないよ。もっと大きくなれるよ。でもねそれにはまずここから出なくちゃ
ならない。もうしばらくしたらここから出られるよ。僕に任しといて。」
彼の言葉に
「本当だな、信じていいんだなその言葉。」
「もちろんだよ。僕はうそなんかつかないよ」
そういうと彼は牢屋から姿を消した。あくる日、中国政府は突如、沖縄から
撤退すると宣言をした。それと同時に沖縄にいた人民解放軍の兵士が次々と
沖縄をあとにした。
2028年3月1日のことである。




