表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
領土奪還戦争  作者: マンチカン
第二章 アジアの両雄激突
32/105

脱獄の後

「また捕まっちゃいましたね、兄貴。」

「まったくだ。ついてないぜ相棒。」

話は少し遡る。どさくさにまぎれて刑務所を脱獄したやくざの二人組みは途中で

出会った元竹島警備隊の男とともに黄海までたどり着いた。そこには男が所有する

船があった。

「お前ら、これで日本に行け。」

「ちょっと待て。こんなぼろいので大丈夫なのか」

兄貴と呼ばれる男がその男に詰め寄る。

「大丈夫だ。俺は昔これで太平洋を一蹴したことがある。意外に頑丈だぞ。

それに今、日本海側から行くと戦争に巻き込まれるぞ。黄海側から韓国をぐるっと

回って行ったほうが安全だ。」

「結局日本海渡るじゃないか」

今度は相棒と呼ばれる側の男が詰め寄ってきた。

「時間稼ぎだ。周っている間に戦争も終わるだろうってことさ。」

「兄貴、どうします。さすがにやばそうな気が」

「相棒。やばいのはいつものことだ。だから乗るぞ。俺を信じろ」

兄貴の信じろという言葉に相棒も覚悟を決め

「行きましょう。兄貴。そして日本へ帰りましょう。」

こうして二人は黄海から日本に向けて旅立った。が現実はそうは甘くなかったのだ。

二人は海に関する知識など全くなく、さらに台風シーズンで海が荒れているのもあり

見当違いの方向に船は行ってしまったのである。その結果、彼らはどこかの国の

領海に進入してしまい逮捕されてしまったのである。それが今までのいきさつである。

「兄貴、ここはなんて国ですかね」

「俺に聞くな、んなこと。巡回に来る看守の女にでも聞け。」

「そうっすね。聞く相手間違えました。」

ゴツン。兄貴の鉄拳が相棒に直撃した。

「何するんですか兄貴。だいたい兄貴が安受けあいしたのがそもそもの間違い

じゃないですか。」

「はあ。何言ってんだ相棒。あんときはああするしか道がなかっただろうが。」

二人の怒号が部屋全体に響き渡り取っ組み合いが始まろうとしたその時

「うるさい!静かにしろ。この侵入者ども」

騒ぎを聞きつけた看守らしき女が飛んできて二人を怒鳴りつけた。

「騒ぐなと何回言われれば分かるのだ。お前達は。そもそもお前達はどうやって

この国に入ってこられたのだ。」

女の質問に

「船に決まってるだろ。日本に帰る途中に嵐に巻き込まれただけだっつーの。」

兄貴がもったいぶって答えると今度は相棒のほうが

「そもそもどこだよここ。中国か」

と聞くと

「お前たちに教える筋合いはない。」

と女は冷たく言い放つ。

「てめえ、その言い草はないだろ。俺らだって好きで来た訳じゃねえ。

だいたいあんたはどうやってこの国へ来たとかわけの分からんこと聞くけど船で来る

以外どうやってくんだよ。逆にこっちが聞きたいわ。」

女はしばらく黙った後

「そうか。お前たち本当に知らないのだな。この国に来れた理由が。」

「あったりまえだろうが。俺らは日本に帰りたいだけなの。」

兄貴がふんぞり返って答えると女が

「分かった、分かった。日本という国に帰れるかどうか知り合いに聞いてみるから。」

「分かればいいんだ分かれば。」

兄貴の偉そうな返答に

「次騒いだらこの話は無かった事にするわ」

その言葉を聞いた途端、憎まれ口をたたいていた二人はころっと態度を変え

「お、お願いします。姉さん。姉さんだけが頼りです。」

と土下座をした。あ、あねさん。なんと節操のない奴らなの。女は呆れながら

「とにかく。大人しくしていなさいよ」

といいながらその場を後にした。

     2027年9月のある日


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ