ベールを脱ぐ最新鋭戦闘機
ブルルルル。携帯のバイブ音を聞いた。長澤は画面を見ると、今中主任からのメールだった。メールを開いてみると、
(見せたいものがある。1400時に例の実験施設に来てもらいたい。)
とあった。彼女は
(1400時ですね、了解しました。)
と素っ気無く返信した。予定の時刻に長澤は
例の場所、すなわち試験室007の扉の前に着いた。表向きには試験室は006までしかない。すなわちここはブラックファクトなのだ。扉をノックすると扉の奥から
「どうそ」
という声がしたので失礼しますと一言延べ、部屋に入室した。そこには一台の戦闘機がおいてあった。F―15Jだ。軍事関係者なら誰でも知っている傑作機だ。
「今中主任、見せたいものっていうのはこれですか?」いくら傑作機といえでも、
これを見せるためにわざわざここに呼ぶわけはない。彼女の疑問を見透かしたかのように彼は
「見た目はただのF―15Jに過ぎない。
コックピットを見てごらん。」
言われるまま長澤は機体にかかっている梯子を上りコックピットを覗いた。
しかし、彼女はパイロットではない。コックピットを見て議論できるほどの知識はない。さっぱり分からないので
「主任。私にはなんだかさっぱり分かりません。どういうことなんでしょう」
「これはね、T―7のコクピット同型なんだよ。」
長澤は驚いた。いくらなんでもジェット戦闘機とレシプロ機が同じわけがない。しかも練習機と同じなんて・・・いったい何がしたいのかさっぱり分からない。長澤が混乱気味にしていると
「一人前のパイロットになるには一般に3、4年かかる。それを短縮するためのアイディアがこれだ。」
「つまり練習機と実践機のコックピットを同じにしてしまえば実践機に慣れるのが早くなるわけですね。」
そんな単純なものなのかしらと思いながら梯子を降りていると今中主任は、
これだけではないといい今度は翼をコンコンと叩いた。
「長澤君、君はこの国の宝だ。この機体は見た目こそF―15だが似て非なるものだ。
まずは君の開発した電波吸収剤によるステルス性。これはF―22のおよそ10倍だ。
次にアフターバーナー無しでマッハ2・5まで可能なエンジン。
次に35ミリ機関砲の装備、そして30ミリレーザー砲。何もかも君の働き無きでは
成しえなかったことだ。素晴らしい。」
その言葉を聞いて長澤は非常にうれしくなった。自分の研究成果が国のためになっていると思うと胸がいっぱいになってしまっていた。と同時に私だけがこんなに評価されていいのだろうかという気持ちにもなった。研究は一人で進むものではない。かかる費用は税金だ。また多くの仲間のおかげでここまでこられたからだ。そして彼女にアイディア
を授けてくれるハンドルネーム<亡国の救世主>。メールの主が誰かは彼女は知らないが非常に強力な存在であることは確かだ。色々な方の力を借りてこの子が完成したのだと過去を振り返っていると今中主任が
「これからもたのむよ」
と、言いながら彼女の肩をぽんとたたいた。その後しばし二人は今後の予定について話したのち別れた。 2026年11月